16 薄幸メイドの望み(後半)
一日三回、朝7時、昼12時、夕方18時に更新しておりますわ~!
読み飛ばしにご注意くださいませ~!!
ブリジットはうなずきました。
「十歳の弟と、五歳の妹が一人ずつ。二人とも、ラシュレー辺境伯のお計らいで、街の孤児院で暮らしています」
「あら! 初耳ですの! 会ってみたいですわ! ……それじゃ、お父様が呼びなさいと言っていたのは、避難目的かしら」
「そうだと思います」
「ていうか、どうして一緒に住んでおりませんの? お屋敷に住めばいいですのに」
ブリジットは住み込みのメイドです。同じように、弟さんたちも住めばいいのに……、と思ったのですけれど、彼女は首を横に振りました。
「私が住み込みで働かせていただいているだけでも、ありがたいことですから。それに、あの子たちには、その――」
言い淀んでから、ブリジットは顔を少しうつむけました。
「――面倒なしがらみを持たずに、生きてほしくて」
……なるほど。ブリジットもまた、元は貴族。思うところがあるのでしょう。思えば以前、わたくしが"指先"でお部屋を吹き飛ばしたとき、特別給与が支払われていたはず。あれはきっと、その孤児院への仕送りに充てられていたのでしょう。
ああ、ブリジット……。十三歳の少女。前世のわたくしの半分も生きていない女の子。
こんなにも誇り高く生きているなんて。
なんというか、自分が恥ずかしくなってしまいます。
「……ねえ、ブリジット。弟さんと妹さんは、どんな方なの?」
干渉は望まれていないでしょう。けれど、話を聞くくらいは、いいですわよね?
「ええと、弟はやんちゃで、生意気です。将来は冒険者になりたいと言っています。妹は……、そうですね、少しだけレオお嬢様に似ています」
「わたくしに?」
「ええ。食べることが大好きで、院長先生曰く、いつも弟と同じだけ食べるとか。弟はそろそろ食べ盛りですから、同じ量となると、相当な食いしん坊ですね」
「まあ! 気が合いそうですわ!」
ブリジットはくすりと微笑みました。
「……昨夜言ったとおり、私には『美味しい』がわかりませんけれど、弟と妹は違います。あの子たちには、美味しいものをたくさん食べて、大きくなってほしいです。……それが、私の夢なんです」
「素敵な夢ね。わたくしにできることがあれば、なんでも言ってくださいな。しがらみが出来ない程度に、応援いたしますから」
ありがとうございます、とブリジットは頭を下げて、「ところで」とわざとらしく話題を変えました。夢を語るのは、ちょっと照れ臭いですものね。
「……美味しいものといえば、なのですが。その、レオお嬢様は、どうしてラーメンなる食べ物が、そんなにお好きなのですか?」
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