13 神託(前半)
一日三回、朝7時、昼12時、夕方18時に更新しておりますわ~!
読み飛ばしにご注意くださいませ~!!
「料理は無駄かぁ。耳が痛いですなぁ」
パーティーの翌日、わたくしはお屋敷の厨房におりました。
料理長ドニに、あるお願いをするためでございます。
「しかし、『美味しい』がわからないブリジット嬢のため、"天上"の料理を再現したいというお嬢様の気持ちはわかりました」
「できそうですの? ラーメン作り」
そう、ラーメンがないなら、作れる人を探せばよいのです。幸い、ラシュレー家には腕利きのシェフがおりますもの。ラーメンの概要を説明すれば、きっと近いものを出してくれるはずです!
……と、思ったのですけれど。
「ま、無理ですな」
恰幅の良い料理長は、あっさりと否定してしまいました。
「な、なぜですの!?」
「なぜって、そりゃあ、あまりにも複雑すぎるからですよ」
ドニおじさんはスツールに腰を下ろして、帽子をテーブルに置きました。
「鶏や豚の骨、乾燥させた魚や海藻、野菜やキノコ等から取った出汁に塩やショーユ? のソースと香味油をあわせ、小麦のロングパスタを浮かべ、豚の煮物や煮卵やら、具材もいろいろ載せるんでしょう?」
「ええ。具材は特に種類が多いですけれど、定番はメンマでしょうか」
「メンマ? なんです、それは」
これでも五千杯以上のラーメンを食べて死んだ女。知識は人並み以上にございます。メンマは、たしかタケノコを蒸して、塩漬けにして、発酵させて、細く裂いて乾燥させる……、みたいな作り方だったはずですの。
そう伝えると、ドニおじさんは苦笑しました。
「えらく複雑ですなぁ。出汁、タレ、香味油、パスタ、そして具材……。その全てに、"天上"の技術と豊かさが注がれておるのです。わしが話を聞いただけで作れるような生易しいものではないでしょう」
「試しに一度作ってみてくれませんか? 試行錯誤すれば、本物に近づいていくと思うのです」
ドニおじさんは首を横に振りました。
「試行錯誤するにしても、具材が高すぎます。わしらに許された予算の中では、とてもとても。一回出汁を取るだけでも、ちょっとした宮廷料理ほどの金がかかるでしょうな」
「そ、そんなに……?」
前世では気軽に食べていたラーメンですけれど、あれは現代だからこそ可能な料理だったのですね……。
わたくしはブリジットにラーメンを食べてもらいたいだけなのですけれど、この世界では難しいようです。わたくしはドニおじさんにお礼を言って、自分のお部屋に戻りました。
午後のお勉強と訓練まで、厨房から頂いて来たおやつ――バスケットに山盛りのパンを、ベッドに寝転がって、もそもそとかじります。
どうしたらラーメンを食べられるかしら。お金があればいいのですわよね?
でも、お金なんてありませんし……と悩んでいると、ふいに、頭に声が響きました。
『お世話になっております。女神です』
「ヒョわァ!?」
『……相変わらず、独特な驚き方ですね』
なんの用です? いきなり、脳内に語り掛けてくるなんて……。
あ! さては、ついに聖女のお勤めとやらの時間ですのね!?
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