表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サジタリアスの円盤  作者: 飛知和美里
7/21

第一部

 吹き抜けをぐるりと迂回して、ようやくスタンたちは大きな石碑を発見した。城の石材とは明らかに違って経年劣化もせず、鏡のような光沢を保っている。

 むしろ廃墟の真中にあるからこそ、神秘性が際立った。

 スタンは腕組みを深め、口を噤む。

「……………」

 ニスはやれやれと肩を竦めた。

「読めないんだろう? まったく……少しは勉強しないか」

「#$%&」

 モーフィにも呆れられたような気がする。

「う、うるせえな。文字なんか読めなくっても、生きていけらあ」

「すみません、スタン。僕にはフォローできません……」

 好奇心旺盛なリザードマンの冒険家も、これではぐうの音も出なかった。

「それよりなんて書いてあんだよ? エルロイ」

「ええと……ちょっと待ってください」

 気を取りなおして、スタンたちは石碑を見上げる。


   サジタリアスの円盤を求めし者よ。

   かつての姿に戻りたくば、汝、その資格を心で示せ。

   善き者は善き姿に。

   悪しき者は悪しき姿に。

   汝の心が汝の形を決めることであろう。


 ニスは神妙な面持ちで呟いた。

「何度も聞いたおとぎ話と同じだが……お前はどう思う? スタン」

「なんだよ? さっきはおれをアホ扱いしやがったくせに」

 スタンに限らず、この地では誰もが百年前の物語を知っている。

 ガリウス王国は飽くことなく侵略戦争を続け、その勝利に民も酔いしれた。ガリウスの民は驕り、人心を忘れ、いたずらに暴虐を好んだという。

 そんな彼らに神は天罰を降さなかった。

 だが、ひとりの魔導士が憤怒し、神に変わってそれを実行した。ガリウスの民は邪悪な心に相応しい怪物の姿となり、内乱に至っている。

 エルロイが溜息をついた。

「サジタリアスの円盤で人間に戻れる……とは言ってませんね」

「#$%&」

 モーフィは石碑の文面を手帳に書き写す。

 一方で、スタンは読めない文字を見ているうち、頭が痛くなってきた。

「お前らは考えすぎなんだよ。その……なんつったっけ、魔法使い? そいつが百年前、サジタリアスの円盤を探せって言ったんだからさ」

 石碑から宝物でも出てきやしないかと、ばんばんと叩く。

「こら、スタン! バチが当たるぞ」 

「だったら当ててみろって話だよ。魔法使いにしたって、もう生きてねえだろーし……化けて出てくれりゃあ、面白いじゃねえ……うわっ?」

 俄かに石碑が光り始めた。

「#$%&!」

「離れてください、スタン!」

 モーフィはエルロイの後ろに隠れ、エルロイはニスを盾にする。

「お、お前たち! 小生をなんだと……」

 しかし不思議な光は間もなく消えた。スタンは腰を抜かし、尻餅をつく。

「びっくりしたぁ……脅かしやがって」

「……スタン、それは?」

「へ?」

 いつの間にか、石碑の前に奇妙なものが転がっていた。ハムを分厚い輪切りにしたような形で、材質は石碑と同じらしい。

「ひょっとして……こいつがサジタリアスの円盤……?」

 形が丸くて平らなだけに、『円盤』と呼べなくもなかった。

 エルロイが驚きの声をあげる。

「見てください! 石碑のメッセージが増えてます」

「な、なんだって?」

 石碑のほうに振り向くものの、またしてもスタンには読めなかった。

 新しい一節をニスが読みあげる。

「道はコンパスが教えてくれよう……か」

「じゃあ、こいつが……」

 それはモーフィの持つ方位磁石と似ていた。

「#$%&」

「言われてみりゃ、まあ……でもよ、肝心の針がないぜ?」

 ただ、方角を示すための部品が欠けている。これでは使い物にならない。

 少し期待もあったせいか、落胆は大きかった。

「この件はブライアン殿に聞いてみてはどうだ? スタン」

「あの爺さんか……まだ色々と知ってそうだしなぁ」

 モーフィが石碑のメッセージを写し終えたところで、エルロイが提案する。

「もう少し城を調べてみませんか? ほら、北東の塔とか……地下もありますし」

「ここで考え込んでても、しょうがねえもんな。片っ端から行こうぜ」

 スタンたちは石碑のもとを離れ、探索を再開した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ