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サジタリアスの円盤  作者: 飛知和美里
5/21

第一部

 間もなく扉が開いた。その人物を一目見るや、モーフィが慌てふためく。

「#$%&~!」

 スタンとニスも動揺を隠しきれず、うろたえた。

「ド、ドラゴンネオだと?」

「もっと離れろ、スタン! やつは危険だ!」

 半人半竜の怪物、ドラゴンネオが真っ赤な目を光らせる。

「……………」

 トカゲ人間のスタンや狼人間のニスと同類ではあるが、ドラゴンに限っては意味が違った。百年前の災厄において、このドラゴンネオだけは『人間の心』を失っている。

 もはや理知のないモンスターも同じなのだ。

 ドラゴンネオはほかの種族を敵視し、手当たり次第に襲い掛かってくる。スタンたちもこの城に辿り着くまでに、ドラゴンネオと二回ほど交戦した。

 ニスが棍棒を握り締め、スタンは剣を構える。

「敵はひとりだ。いくぞ、スタン!」

「おうっ!」

「ま――待ってください!」

 そのつもりが、相手はおたおたとあとずさった。

「僕に戦う意志はありません。とりあえず話を聞いてくれませんか?」

 肩透かしを食らい、スタンたちは唖然とする。

「お、お前……ドラゴンネオだろ?」

「そうです。けど、僕は少し『違う』みたいで……」

 その証拠にと、彼は自ら槍を捨てた。

 敵意はないらしい。スタンとニスは目配せして、武器を納める。

「突っ立っててもなんだし、まあ座れよ。ニス、お前も別に構わないだろ?」

「ここで彼を拒んでは、神のご意志に逆らうことになりそうだ」

 ドラゴンネオがキャンプに加わったことで、三人前の夕食を四等分に。 

「おれはスタンだ。で、こいつがニスで……」

「僕はエルロイです。初めまして」

 自己紹介がてらエルロイはジャガイモを提供してくる。

「驚かせてしまったお詫びに、どうぞ。スタンさん、ニスさん、それから……」

「#$%&」

 恐る恐るモーフィがそれを受け取った。

「ブライアンの爺さんのほかには、もう誰もいないものと思ってたんだ」

「こっちから声が聞こえまして……もしかしたら、と」

 話すうち、ニスもエルロイと打ち解けていく。

「まさかドラゴンネオと食事ができるとは……いや、気を悪くしたなら、すまない」

「いいえ。僕もこういう場は初めてなもので、緊張してしまって」

 ドラゴンネオが凶暴な種族であることは、エルロイも素直に認めた。一説によれば、かつてのガリウス王国軍の兵士がドラゴンネオになったという。

 侵略戦争の勝利に乗じて、略奪と虐殺に走った兵隊ども――彼らはすでに人間ではない正真正銘の怪物だったのだろう。その後もドラゴンネオは繁殖を続け、今や最悪のモンスターに位置づけられている。

「でも、あんたは正気みたいじゃないか」

「ドラゴンネオも全員が全員、理性を失ってるわけではありません。僕は物心がついた時から、こうだったんです」

 しかしエルロイは決して凶暴な魔物ではなかった。理性を持ち、スタンやニスと言葉を交わすこともできる。

「エルロイ、おぬしはなぜこの城へ?」

「……もちろん、サジタリアスの円盤を探しに来たんです」

 エルロイの声がトーンをさげた。

「というより……知りたいんですよ。真実を」

 百年前に何があったのか。ブライアンも語ってくれたとはいえ、それは『おとぎ話』の域を出ず、今となっては信じる者も少ない。

「百年前の災厄が本当であれ、嘘であれ、僕は納得できる答えが欲しい。そう思って、試練とやらに挑みに来たんです」

「なるほど。ってことは、おれたちと似たようなもんか」

 スタンとて、すべてを鵜呑みにしているわけではなかった。

 ただ、百年前には『何か』があったはずで、そのヒントはこの城に隠されている。それだけでスタンの冒険心は触発され、胸が躍った。

 ニスが聖書を開く。

「汝、友を迎え入れよ……どうだ? スタン。彼を仲間に入れては」

「そいつはおれも考えてたとこだよ」

「#$%&」

 モーフィも反対しなかった。

「お前もひとりじゃ大変だろ? おれたちと一緒に来ないか」

 スタンが誘いを掛けると、エルロイもはにかむ。

「実を言うと、どうやってそれを切り出したものか、迷ってたんですよ。ぜひ僕もご一緒させてください、みなさん」

「こちらこそ。改めてよろしく、エルロイ殿……いや、エルロイ」

 かくして一行はエルロイを加えることに。

「サジタリアスの円盤はおれたちで見つけてやろうぜ!」

「#$%&」

 リザードマン(トカゲ人間)のスタン、ワーウルフ(狼人間)のニス、ムォーク(正体不明)のモーフィ、ドラゴンネオ(ドラゴン人間)のエルロイ。

 サジタリアスの円盤を求め、探求が始まった。

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