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サジタリアスの円盤  作者: 飛知和美里
1/21

第一部

 かつて大陸の中北部にガリウスという王国があった。

ガリウスはいたずらに侵略戦争を繰り広げ、暴虐の限りを尽くしたという。次第にガリウスの民も人心を忘れ、飽くことなしに国家の勝利を求めるようになった。

それを裁く神はいなかった。

 だが、彼らの所業はある大魔導士の逆鱗に触れたのだ。

 魔導士は神に代わってガリウスに天罰をくだした。

 その日からである。ガリウスの民が人間の姿でなくなったのは。

 彼らは皆、醜いモンスターと化した。リザードマン、ワーウルフ、ゴブリン……。

人間の姿を奪われ、民は怒り狂った。そして自分たちの城へと攻め入り、次々と王侯貴族の首を取って、魔導士のもとに捧げた。

 しかし魔導士は決して彼らを許さなかった。

「そなたらは暴力でしか物事を解決できんようじゃな」

 魔導士を打ち倒そうとした者は、ことごとく返り討ちに遭っている。

 ただ、魔導士はひとつだけ条件をつけた。

「そなたらの中でもっとも勇敢で、もっとも聡明、そしてもっとも思いやりに溢れた者を寄越すがよい。そやつが我が試練を乗り越え、この『サジタリアスの円盤』を手にしたなら、みなも元の姿に戻れようぞ」

 ガリウスの民は勇者を求め、続々と挑戦者が名乗りをあげる。

 謎めいたサジタリアスの円盤を奪取するために。

 ある者は武勇の誉れ高い、屈強な戦士だった。ある者は王国じゅうの山を登りきった、稀代の探検家だった。だが、ひとりとして魔導士のもとから帰ってはこない。

 それから百年の時が流れた。

 未だに勇者は現れず、ガリウスの末裔たちも昔話程度にしかこの災厄を知らない。ひ孫の代となっては、もはや元の『人間』の姿を目にすることもなかった。

 リザードマンはリザードマンとして、ワーウルフはワーウルフとして、ささやかな生活を営んでいる。幸いにして、怪物だらけの土地に余所の人間が来ることもなかった。

 平穏であれば、化け物の姿でも構わない――。

 だが、あるリザードマンの青年が昔話に興味を持った。

 別に人間の姿など、どうでもよい。単に好奇心に駆られただけのこと。

「退屈だろ? おれと行かないか」

「面白そうだな。小生も付き合わせてもらうぞ」

「#$%&……」

 彼の名はスタン。ワーウルフのニス、ムォークのモーフィらとともに、今日より魔導士の試練とやらに挑む。サジタリアスの円盤を求めて。

 ガリウスの民が呪いを掛けられてから、実に百年後のことだった。

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