ルーキーの実力は?
翌日の放課後、部室で姉から貰ったベルマークを麗奈先輩に渡す。
「あら、こんなにいいの?今回の新入部員は優秀ね」
「今回のとはどうゆー意味ですカナ!?」
「てか、普通の活動もしてるんですね」
正直、渡した瞬間、ゴミ箱ダンクされることも想像していたが、そこまで堕ちている部活ではないようだ
「当たり前じゃない、なんだと思ってたのよ」
「女の子を食い物にする変態部活動だと」
「良い度胸じゃない…」
麗奈先輩は青筋を浮かべながら立ち上がった
しまった調子に乗り過ぎたか、殴られんのこれ?
「そ、それにしても奈妓ちゃんよくこんなにベルマーク集めたね」
長い足でハイキックされ窓を突き破って転落する所まで想像した私だが、陽咲先輩が話題を変えてくれた
流石、元お姉さま!天使!!
この好機を逃すまいと全力で話題に乗る
「姉がくれたんです。そういえば麗奈先輩と知り合いだって言ってましたよ」
「知り合い?」
「ナギっちのお姉ちゃんは奈癒って名前だよね」
「ブー!」
私と幼馴染で姉とも面識がある小鳥遊の説明に麗奈先輩は心を落ち着かせようと口に含んだ紅茶を盛大に噴き出した。
なんなのこの人?これが持ちネタならやめて欲しい
「遠山奈癒!?生徒会長じゃない!!」
驚く麗奈先輩、陽咲先輩も驚いたようで眼を丸くしている
「生徒会に入った瞬間、オーラに触れた前会長が泣きながら会長の腕章を差し出したって聞いたよ」
「そ、それは色々脚色されてると思いますけど」
なんか久しぶりだなこの感じ、姉のことを話すとみんな驚くんだ
きっと心の中では、姉は優秀なのに妹は凡人なんだなって思ってるんだろうな
幼い時から散々姉と比べられてきた私は外で姉と歩くことが出来なくなった
姉が嫌だからとかじゃなくて、姉についていけない自分が嫌なんだ
「ふーん、奈癒さんって生徒会長になってたんだーそうすると話が変わってきませんカナ?」
小鳥遊の言葉に我に返る
なんだその眼は、なんか言いたそうだな
「姉が生徒会長ってかなりマズいと思うのですよ。今の内に危険分子はクビにしとくべきでは?」
「うっ」
たかなしぃぃぃ!
お前どんだけ私のこと嫌いなんだよ!
小さい時にあんだけ世話焼いてやったのに
「いや…逆にアリね。こちらから生徒会の動きを伺えるわ」
麗奈先輩は小鳥遊の諫言を否定してくれた
部長!さっきはナマ言ってすみませんでしたぁぁっ!一生付いていきます!
「と、言うことでスパイ頼んだわよ『諜報部員』」
入部二日目で役職が付いた私の肩を叩く麗奈先輩
あれ?もしかして大変な目に遭ってる?
姉をスパイするなんて出来ないと言おうとしたが、それは一人の訪問者によってかき消された
「おっすぅー!やってる?」
部員の視線が突然の訪問者に集まる。麗奈先輩が居酒屋か!とツッコむ
赤のリボン…『お姉さま』と同じ二年生か
ノリが軽い先輩は慣れた手つきで名簿に名前を書き、缶に100円を入れた
まだ会っていないもう一人の部員かと一瞬思ったが、お金を入れてることから『お嬢様』のようだ
ん?お嬢様ってことは私と今から抱き合う可能性があるんだよね。やばい、緊張してきた
「おっ?初めて見る子が二人もいるねー」
私と小鳥遊を見初めた先輩が声をかけてきた
美人だ、美人だけど親しみやすさも兼ね備えている
「初めましてお姉ちゃん!小鳥遊結衣って言います♡」
小鳥遊が一歩前に出てあざとく自己紹介をした。こいつ抜け駆けする気か!?
『お嬢様』のことお姉ちゃんって呼ぶの?きも
「は、初めまして遠山奈妓と言います」
私も負けじと自己紹介する。赤リボンは『お姉さま』探しの為、積極的に抱いていかないといけない
ちょっと噛んじゃったけど…
「うんうん!キミ初々しくて良いなー」
先輩が私の方に近寄ってくる
小鳥遊より私が選ばれたようだ。嬉しさより不安の方が勝る
昨日少しレクチャーを受けたけど、まさか初体験の機会がこんな早く巡ってくるなんて
「お目が高いわね。その子は『初めて』よ」
「へぇー私が『初めて』かぁ」
『初めて』ってそんなに連呼しないで欲しい
なんか恥ずかしい…
「奈妓ちゃんはまだ早いんじゃないかな。それにこの人って…」
「いや、ルーキーの力を測るチャンスだわ、行ってきなさい」
陽咲先輩の声を麗奈先輩が途中で遮る
なんだよ。気になるじゃんか
ますます不安が濃くなるが、勇気を出して『お嬢様』の先輩を誘う
私の初仕事の始まるんだ