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カウントダウンゼロ

翌朝、結衣に抱きしめられて起きる


「うーん、奈妓ぃおはヨー」


「おはよう結衣」


まだ眠いのかカーテンの隙間から見える結衣の眼は半開きだ

私は彼女の髪を優しく撫でる


「昨日は凄かったね」


「うん、きっと今日はもっと凄いよ」


「ええ!今日も?」


今日はチュウチュウ名物の大観覧車に乗るし、今日は昨日よりもっと凄いハズだ


「奈妓さん、おはようございます」


「お、おはよう詩織さん」


私達の声で起きたのか、詩織さんも目を覚ましたらしい

彼女にも抱きつかれる。いやいやいやお前はマズいって


「どわぁッ!なんで詩織さんが居んの!?」


「それはこっちの台詞ですが」


「なんでだし!」


私を抱き合いながら睨み合う二人

昨日お風呂入ってないからそんなにガッツリ抱きつかんでくれ


「てか、今更アンタが私と奈妓の間に入る余地ないから!ねー奈妓?」


「?」


なんだ今のウインク

お風呂一緒に入らなくて怒られるかと少し心配してたけど、なんで好感度上がってんだ?昨日の廊下での会話でかな?


「フフッそれもこちらの台詞ですよ。ですよね奈妓さん?」


「?」


詩織さんに至っては全く覚えがないんだけど

むしろ眞帆先輩の方にちょっと気持ちが向かってたような


「なに?昨日アトラクションに一緒に乗ったくらいでイキってんのカナー?」


「違いますけど」


「…お前さ、いい加減にしろよ?人の女にちょっかいかけて」


「ちょっかいどころじゃありませんけどね」


朝の清々しい空気に反して場の雰囲気はどんどん険悪になっていく

抱きつかれてる身体が痛くなってきた


「はぁ、なにそれ?全然面白くないし、なにしたって言うの?」




「えっちしました」




「してないよ!!」


ととと、突然なにを言いだすんよ詩織さん!!

マジで記憶にないし!「彼女には秘密にしておきたかったんですねフフフ」って顔してますけどホントに覚えがない




「はいダウト!昨夜、奈妓はずっと私と居たから!えっちしたのは私でーす!」




「してないよ!」


え?結衣までなに言ってんの?

もしかして昨日お酒飲んだりした?そんな娘に育てた覚えはないんだけど


「一旦整理しよ!昨日どんな状況でそうなったの?」


名探偵ナギ―まさかの二度目の出演

ナギ―の提案に結衣は少し恥ずかしそうにはにかんで答えた


「奈妓の部屋に行ったらいきなり真っ暗になって奈妓に襲われたの。ちょっと強引だったけど良かったよ///」


「…詩織さんは?」


「奈妓さんの部屋にお邪魔していきなり電気を消して襲いました」




「「「……………」」」




「あ、もうこんな時間じゃん。早く下行ってご飯食べよ」

「そうですね。確かバイキングでしたよね」

「うん、いっぱい食べるぞー」

「私バイキング初めてなので少し楽しみです」

「うそー?初めて!?ガチでお嬢様じゃん」




急に私から離れて出て行こうとする二人

私は今日イチ、いや人生イチの大声を出した




「お前らでえっちしてんじゃん!!」




「「おぇぇぇぇッ!!」」


残酷な真実を突きつけられた二人は仲良く洗面所に走って行って吐いた




「ぜぇぜぇぜぇ…さ、最悪の最悪なんだけど…う、うぇ」


「そ、それ…おっぷ…それはこっちの…うっぷ…せ、台詞です…よ」


「お前今日それ…ばっかだな…ぜぇはぁ」


力無くつっこんだ結衣を掴んで容赦なくこっちに向かせる


「浮気じゃん!完璧に浮気じゃん!手握ったとかそういうレベルじゃないよ!!」


「だって奈妓だと思ってたんだもん」


「普通抱き合ったときに気付くでしょ!」


「分からないよ!普通の人間は奈妓みたいに抱きしめた感触で誰だか当てれないから!」


「そうなの!?じゃあ【自主規制】は?」


「ちょ、なに言ってんの!?」


「結衣は付き合った日に私の【自主規制】見たじゃん!昨日詩織さんの【自主規制】見て「あ、この【自主規制】は違う【自主規制】だ。奈妓の【自主規制】じゃない」って思わなかったの?」


「ライン越えすぎだろ!連呼しないでよ!暗くて見てないし、明るくても分からんわ!!」


「付き合って初日に奈妓さんの【自主規制】を見たのですか?」


変な所に喰いついてきた詩織さんにも矛先を向ける

そもそもお前が夜這いしなけれゃこんなことになってないからな


「詩織さん、声とかで私じゃないって気づかなかったの?」


「アシカのような声出していたので分かりませんでした」


「ちょ、お前、それは言うな///」


赤面して詩織さんの袖を引っ張る結衣

その姿にある疑念が沸き上がった


「あのさ、本当は途中で気付いたんじゃないの?」


「…それマジで言ってんの?私が詩織さんと好き好んでするワケないじゃん」

「私も虫とする趣味はないですね」


名探偵ナギ―は腕を組みながらゆっくりと部屋を周る


「結衣は詩織さんとボランティア部で抱き合った時、もう少しでキスしそうだったよね?恋愛対象には入るんじゃないの?」


「うっ!」


「詩織さんは結衣のこと好きだった時あるよね?余裕で抱けるよね?」


「それは…」


言い淀んだ二人、チェックメイトだ

私は手のひらをひらひらさせてから部屋から去ろうとする

しかしそれは結衣に掴まれて阻まれた。


「ちょっと待ってよ」


「なに?言い訳がまだあるなら聞くけど」


「…奈妓は昨日どこ行ってたの?なんで待っててって言ったのに部屋に居なかったの?」


「あ、ああ…昨日…ね」


今度は私が言い淀む

泣きながら止められるかと思ってたのに思わぬ反撃を受けてしまった。


「昨日は麗奈先輩に呼ばれてちょっと話してただけだよ」


「麗奈先輩と?ああ…なるほどね…そういうこと」


「いやいやいや!マジでなんもないって!」


結衣の冷たい眼が痛い

形勢逆転してる?こっちは友情のハグしただけだぞ


「彼女が一緒にお風呂入ろって誘ってんのにそれ差し置いて他の女と会ってる時点でありえないって」


なんで私が責められてんだよ

そのころ結衣は詩織さんと情熱的な夜を過ごしてたくせに!


「くぅぅッ!」


頭に血が上った私は詩織さんに抱きついて




―――遠山奈妓と藤詩織がキスするまであと【1秒】―――


ちゅー


キスをした

結衣に対する当て付けのキスだ


「あああ゛!!なんでぇ゛!?」


「これでおあいこってこと」


「ぜ、全然おあいこじゃないし!私は詩織さんのこと奈妓だと勘違いしてたんだよ?目の前でキスするのとは違うじゃん!!」


「キスとえっちじゃ価値違う!これでおあいこだって!!」


「身体じゃなくて心の問題だし!!奈妓の方が重罪!!」


私の行動に納得出来ない結衣は放心していた詩織さんに近付いて抱きついた


「…もういい、詩織さんと付き合うし」


「はぁ!?詩織さんが好きなのは私なんだけど!」


詩織さんの背中に抱きつく

私と結衣の仲が拗れるのは詩織さんの思惑通りかと思いきや、流石にこれは予想外だったみたいで固まっている。


「ねぇ…奈妓なんかじゃなくて私に乗り換えてよ。もっと凄いことでも何でもしてあげるからさ」


「もっと凄いこと?光合成でもすんの?」


「お前が虫って言うなッ!キスもまともに出来ないお子ちゃまは指を咥えて見てな!」


「私のキスが下手ってこと!?そんなん思ってたの!?いやいやいや、そんなことないよね詩織さん?」


「え?あ、は、はい…」


「はっきり下手って言いナー」


「下手じゃなーい!元ボランティア部、黄金ルーキーの実力見せてやんよぉ!!」


その叫びが合図になり、二人掛かりで詩織さんをベットに押し倒した

どっちが彼女に相応しい女か勝負だ

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