★遠山奈妓の『【甘口】☆ファッションチェック☆』
チュウチュウランドで遊び散らかしてから私達はホテルに入った
本当は系列の可愛いホテルに泊まりたかったのだが、この学割プランだと流石にそのレベルには泊まれない
フロントで説明を受けてから部屋の鍵を渡される
その鍵を見た私は叫んだ
「六っつ!?」
ウソだ、信じられない
格安団体プランで一人一部屋だと?
結衣と一緒でドキドキな展開を期待してたのに!?私の気持ちはどうすれば良いの!?
「企画者なのに知らなかったの?」
「奈妓さん…約束通りあとでお部屋に行きますからね」
「おい、なんだその約束って」
「我は一人の方が良いぞ」
「奈妓ちゃん、あとで麗奈の部屋に集合ね」
「は!?」
口々に呟きながら私の手の平から鍵を取っていくみんな
最後の陽咲先輩の言葉で異世界から帰ってくることが出来た。
そうだ、夜はみんなでパジャマパーティをする約束をしてたんだ
チュウチュウが楽し過ぎて忘れてた
自分の部屋に入り、荷物を乱雑にひっくり返す
良かった、パジャマパーティがあるのは忘れてたが、パジャマは忘れてなかった。
お、そういやこれも持ってきてたなフフフ
私はパジャマに着替え、洗面所で軽く前髪を整えてから持ってきていた謎の袋を持って部屋をあとにした
相部屋じゃないのは残念だったが、これから起こることを考えるとその気持ちは消えた。
麗奈先輩の部屋、一人部屋に六人入ると流石に華奢な女の子だけでも狭い
しっかしなんで良い匂いがするんかな?もしかして私以外全員天使だったりするんだろうか?
私は嗅覚だけでなく、視覚でも楽しもうともう一度天使たちを見回した。
「あ゛あ゛あ゛かわう゛いょぉ、みん゛なぁ今日は私の為にあづま゛ってぐれてありがとう゛」
「貴女の為に集まってはいないのだけど…てゆうかなんで泣いてるのよ…」
「だってみんな可愛い゛ん゛ですもん!泣くでしょフツー」
ここから遠山奈妓の『【甘口】☆ファッションチェック☆』が始まる
まず目についたのは隣にちょこんと座っていた眞帆先輩だ
「うわっ!なにをする!?我を闇の支配者と知っての非礼か!?」
抱きあげた眞帆先輩を膝の上に乗せてぎゅっと抱きしめる
「見て下さいこのパジャマ!パンダの着ぐるみですよ!あざと過ぎませんか?萌え死ぬかと思いましたよ!!」
「やめろと言っておるのに!ええい放せっ!」
なおも抵抗する私の妹、脚をジタバタさせてる所がたまらなく可愛い
初キスがクソエグいディープキスだったのなんとか無かったことにならんかな
次に目を付けたのは詩織さんと陽咲先輩だ
二人はフリルをふんだんに使ったワンピース型のパジャマを着ていた
「二人ともめっちゃ可愛いです!童話の世界の人かと思っちゃいましたよ!」
裾がシースルーになっていて可愛さとエロさが両立している姿に私は眞帆先輩の腕をバンザイさせて喜びを表現した。
「私はもっと大胆なものが良かったのですが、お姉さまが…」
「それだと私が似合わないよー」
「別に合わせなくても良かったのに」
「だって詩織ちゃんと姉妹ごっこしたかったんだもん」
一緒に買いに行ったんかい!?
やばい、雲行きが怪しくなってきたぞ
眞帆先輩と麗奈先輩のテンションが明らかに下がってる
楽しいパジャマパーティが地獄のデスゲームになる前に私は対象を本命に変えた。
「そしてー!満を持して登場するのは小鳥遊結衣選手だぁぁぁッ!ご覧ください、上はもこもこのパーカーで下はショートパンツ、自慢の脚線美を惜しげもなく晒しちゃってまーす!!」
「奈妓やめて、ちょっとキモい」
好かれてる人にキモいと言われがちの奈妓実況だが、勢いはまだまだ止まらない
「そしてそしてー!なんとこの美少女!私の彼女なんすよーーー!あ゛あ゛あ゛彼女が可愛くて幸せ過ぎるぅぅぅッ!!」
「…彼女が壊れた」
まだ握っていた眞帆先輩の腕を借りて頭の上で拍手する。ああ…余は満足じゃ
このまま幸せな気分を享受し続けたかったがそれは駄目だ。私には言っておかないといけないことがある。
「…で?なんのつもりですか?それ」
「声怖っ!」
本日最後の紹介になった麗奈先輩
彼女を最後にしたのはワケがある。
「なんで体操着着てんすか!?」
「なんでって、これが私の寝巻だからよ」
金髪、碧眼、巻き髪なのに思いっきり胸に名字が書いてある体操着で寝てんのかよ
ガウンとかネグリジェで寝ててくれよ。
「てかそれウチの学校の体操着じゃないですよね。ドンキで売ってるそういうプレイ用のですか?」
「違うわよ!これは中学の時の!」
「中学の時の!?」
よく見たら色々な所がピチピチになっている
これはこれで良いのでは…
眞帆先輩を膝の上から解放し、麗奈先輩の接触審査をしようと立ち上がって彼女に近づく
「「「「あ」」」」
その瞬間、私と麗奈先輩以外の四人が声を挙げた
なんだろうと思って振り向く
「あ」
麗奈先輩も声を挙げた
「なんすか?オバケとかやめて下さいよ」
「…鏡越しに背中を見てみなさい」
「なんだこれぇぇぇッ!!!」
入り口の姿見の前で叫ぶ
私のパジャマの背中には【遠山奈癒専用 手出したら●す】と書かれたゼッケンみたいな布が縫い付けてあった。
「うわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
パジャマに火がついた人みたいに急いで脱ぐ
ブラがまる見えになってしまったが、前におっぱいを見られているのでそれよりはマシだ
とゆうかこのパジャマ着てるくらいなら全裸の方がマシまである
「ギッチギチに縫われてやがるッ!」
ゼッケンを引き千切ろうとするがそれは叶わない
家庭科の成績まで5なのかよあの変態は!ステ振りをもう少しモラルにも振ってくれ!
「あぐぐぐぐぅ!」
悔し紛れにゼッケンに噛みつく
『【甘口】☆ファッションチェック☆』は体操着の麗奈先輩を抑えて遠山奈妓選手が堂々の最下位で終わった。
「どうしてこんなことに…」
数分後、私はメイド服に着替えていた。前に麗奈先輩に無理矢理着せたヤツだ
実はファッションチェック最下位の人に着せようと思って持ってきていたのだが、まさか自分が着るとは思ってもみなかった。
「中々良いではないか、我のことはご主人様と呼べよ」
「うう…眞帆ご主人様ぁ」
さっきの仕返しとばかりに眞帆先輩にイジられる
「奈妓ちゃん可愛いポーズして」
「奈妓フォルダが潤うナー」
「こ、こうですか?」
陽咲先輩と結衣の命令にも答える
今の私はご主人様たちに仕えるメイドだ
顔から火が出そうなくらい恥ずかしいが頑張ってポーズをとった。
「奈妓さん、もしかしてぱんつにも何か書かれているのでは?」
「た、確かに」
詩織さんの疑問は普通ならありえないことだが、我が姉は常に予想の遥か上を行く存在
最後の砦としてぱんつにも書いているかもしれない
「スカートを捲ってみて下さい、見てあげますから」
「分かった」
スカートの裾を持ってたくし上げようとする
「ちょちょちょ!人の女になにさせてんの!?」
「チッ」
「舌打ちした!?」
スカートがニーソの上まで持ち上げられたところで結衣が抱き着いて止めてくれた
あ、あぶねー!完全に洗脳されてた!ご主人様の命令は絶対って思ってた!
「…詩織ちゃん、ちょっと今のは悪い子だったね」
「お、お姉さま、ちょっとした戯れですよ」
「お仕置きした方が良いのかなぁ?どう思う?」
「お、お仕置きだけはご勘弁を」
詩織さんに後ろから抱き着いて耳元で囁く陽咲先輩
お仕置きってなんだ?あの詩織さんが固まってるってことはそうとうヤバいのか?
気にはなったが、洗面所から水が流れる音がしてきてそっちに意識がいった。
「あれ?麗奈先輩、なんでお風呂にお湯貯めてるんですか?」
「そろそろお開きでしょ。今の内に準備してるのよ。貴女も夜更かししないで今日は早めに寝なさい」
「いやそうじゃなくて大浴場でみんなで入りましょうよ」
「大浴場なんてないけど?」
「な゛あ゛ん゛でだよぉぉぉッ!?」
今日イチの叫び声が風呂場に轟いた
女六人で泊ってお風呂イベント無し!?
なにこのクソ百合ゲー!部屋ばっかり作ってないで大浴場も作れよクソホテルぅ!
帰り道の廊下
奈妓メイドはトボトボと歩く
自分の部屋は同じ階ですぐそこなのに果てしなく遠く感じる
「ねぇ奈妓」
「んー?」
隣を歩いていた結衣に力無い返事をした
もう声を出す気力さえ無くなっている
「さっきはみんなの前だから恥ずかしかったけどさ、私のパジャマ褒めてくれて嬉しかったよ」
「結衣…」
「奈妓のメイド服も可愛い、けど可愛いからって誰にでもぱんつ見せないでよね」
「いや、あれは洗脳されてたんだって」
「洗脳でもなんでもダメです!もちろん裸もダメ!奈妓はショックだったみたいだけど私は大浴場が無くて正直ほっとしてる。だって部のみんなにも奈妓の裸は見せたくないもん」
私は浮かれすぎていたのかもしれない
こんなに大切に想ってくれている彼女が居るのに他の娘にうつつを抜かしていた
「結衣、ごめん。もう他の娘とお風呂に入りたいなんて言わないよ。」
「よろしい、じゃあ特別に私が一緒にお風呂入ってしんぜよう」
「え?」
「じゃあ準備してくるからお湯入れといて」
「う、うん」
呆然とする私を置いて結衣は自分の部屋に向かいかけたが、くるっと反転して戻って来ると、私の耳元で囁いた。
「――――――」
自分の部屋に戻り、浴槽にお湯を張る
さっき結衣が耳元で囁いた言葉が頭から離れない
―――お姉さんにはナイショだよ―――
初夜だ
―――遠山奈妓と藤詩織がキスするまであと【10時間】―――




