初キスでディープって流行ってんの!?
キスする間際、小鳥遊の顔が浮かぶ、お姉さんが小鳥遊に扮しているからだろうか?
いや、違う。部室での小鳥遊の顔が浮かんだんだ
「!!!!!」
小鳥遊は私を守る為に詩織さんの誘惑に打ち勝ってキスしなかった。
ここで私がお姉さんとキスして禁忌を犯してどうする
「ナギっち?どうしたの?キスしようよ…」
「お姉さん…キス出来ません。小鳥遊を裏切れません。」
「んー?まぁギリギリ合格ってとこかな」
ツインテールを解いて元に戻ったお姉さんの一言にドキリとする
合格?まさか…
「私を試したんですか!?」
「そりゃ試すよ!」
「なんでですか!?」
「この前テニス部の娘と抱き合ってたじゃん!そんな浮気性にウチの妹はやれないよ!」
「だからあれは誤解なんですって」
なんとか誤解を解きたいが、詳しく説明しようとするとボランティア部の活動のことを言わなくちゃいけないし、説明出来ない
「抱き合ってたのは事実じゃん。アレが禁忌に当たらないなんて今のボランティア部って緩いよね。私はディープキスしただけで禁忌になったよ」
「ディープキスはバリバリ禁忌だと思いますけど…って禁忌を知っているんですか!?」
ボランティア部の『禁忌』を知っている?私の記憶ではお姉さんが『お嬢様』として来たことはない
私が入部する前に来たのだろうか?
「あれ?聞いてなかった?」
「な、なにがですか?」
「私はボランティア部の元部員。麗奈と陽咲は元気?」
「ももも、元部員!?」
そんなこと全然知らなかった。小鳥遊も言ってなかったし
「もしかして、今の彼女さんって」
「そう。元々彼女は『お嬢様』で私は『部員』だったの」
「『禁忌』を犯したんですね」
「うん、でも後悔はしていない。今はあの時よりもずっと幸せ。ソファーで「私だけの部員になって欲しい」と言われた時、私は迷わず自分からキスした」
私に残っている微かな乙女心が反応した。素敵だと思った
そうだ、私も何れは『お姉さま』と…
「一時間はしたよ」
ん?
「麗奈と陽咲に止められなかったら最後まで行ってたね」
あ、やっぱちげーな
この人と恋愛観合わないわー初キスがディープキスかよ
違う世界に旅立ったお姉さんを咳払いで現実に引き戻させる
「あ、ごめんね。ついつい私って彼女のことになると我を忘れてしまって。ほら女同士の恋愛って誰にでも話せる内容じゃないでしょ。だからガチレズの奈妓ちゃんの前だと嬉しくなっていっぱい話しちゃった。結衣はあまりノロケ話聞いてくれないし」
「ガチレズって呼ぶのなんか生々しいのでやめてくれませんかねぇ」
「話を続けるね。それで私と彼女の初体験は今日みたいな日差しが心地よい日で…」
「レズセの話はもっと生々しいのでやめてくれませんかねぇ」
妹の前で初体験の話をしようとするな。もういい加減に帰して欲しい
その後、私の願いは叶わず。たっぷりと一時間ノロケ話(猥談)を聞かされた
死んだ魚みたいな眼をしている私とは対照的にお姉さんの眼は女児アニメみたいにキラキラしている
「ふぅ…満足した!沢山聞いてくれてありがと」
「あ、ははは…」
テニスラケットってエロいプレイにも使われるんだ…
テニスに対してまた新しいトラウマが出来ちまったよ
「そうだ、聞いてくれた奈妓ちゃんにはお礼として良いのを見せてあげよう」
「えっ?」
『お礼』と聞くとさっきの件もあって身構えてしまう。なんだ?何を見せる気だ?
まさかお姉さんと彼女さんの…
「はい!」
ドサっと置かれたモノに必要以上にドキっとする
これは…
「アルバム?」
「結衣のアルバム、見たいでしょ?」
「見たくないと言ったら嘘になりますけど、勝手に見るのはマズイんじゃないですかねぇ」
「んー?『姉』の私が許可するから問題ない」
『姉』が『妹』の私物をどうこうする権利はないと思うのだが…
私がお姉ちゃんに私物いじられたらブチ切れる自信ある
でも…ちょっとなら見ても良いかな…いざとなったらお姉さんのせいにすれば良いし
「これ、家族で旅行行った時の写真で…」
小鳥遊のアルバムをめくる。時々お姉さんが解説してくれる
はぁ~小さい時の小鳥遊可愛い、コイツどうにかして私の妹にならないものか
「あ、また奈妓ちゃん出てきた」
時々、私の写真も入っている。小鳥遊が私との想いでを大切にしてくれてるみたいで嬉しい
幼少期から始まったアルバムは、中学時代にまで来た
「あ!これ!私が高校受かって、制服が届いた時のだ」
視界に入った写真には、姉の制服を着て嬉しそうな小鳥遊の姿が写っている
…何故だろう、少し心がざわつく
「私より先に着ちゃうんだよ。ひどくない?」
「そ、そうですね」
「結衣ってちょっと背伸びする所あるでしょ?私が大人っぽい服とか買うとすぐ勝手に着ちゃうんだよね。この時だって中学生なのに勝手に私の高校の制服着るし、それだけならまだ良いんだけど、外に出たりするんだよ。」
お姉さんの制服を着て外に出る?
それ以降のページの写真は頭に入って来なかった
脳裏にはお姉さんの制服を着た小鳥遊の姿が焼き付いていたからだ
彼女の胸元には『お姉さま』と同じ赤いリボンが付いていた。




