抱かせて下さい
残りの『ボランティア部』の部員は見知った顔だった。
「小鳥遊?」
「あーナギっちじゃん!?もしかして『お嬢様』?」
小鳥遊結衣は同郷の幼馴染、小学生からずっと一緒で高校でもクラスメイトになっていた。
昔は泣き虫で私がよく抱きしめてあげたけど、今は生意気な性格になっている
『お嬢様』が何かは分からないけど、とりあえず否定する。
「違う、先輩に用があって…」
そこまで言って『お姉さま』の名前を知らないことに気付いた
『お姉さま』はそんな私の様子に気付いてか優しく微笑んで自己紹介してくれた。
「私は光宗陽咲だよ」
そんなキラキラ笑顔を向けられたら改めて惚れ直してしまう
私はドギマギしながら『お姉さま』の陽咲先輩に名乗った
「と、遠山奈妓です。ふつつつつかものですが」
「お見合いかしら?」
ツッコんだ背の高い先輩は倉園麗奈と名乗ってくれた。
麗奈先輩は小鳥遊の方を見ると「鹿島先輩は?」と聞いた
「今日は休みだそーですね」
「そう…今日は気分が乗らない日なのね」
どうやらもう一人部員がいるらしいが、今日は休みらしい
『ボランティア部』の全員が揃い、私はようやく本題に入った。
ゆっくり丁寧に駅で陽咲先輩に抱きしめて貰ったことを説明する
試合で負けたことを説明している時は少し苦しい気持ちになったが、陽咲先輩が私の手を握ってくれた
ああ…やっぱり『お姉さま』は陽咲先輩なんだ
今も私を助けてくれてるんですね…
「ぷっははは」
私が話を終えると、笑い声が聞こえてきた
私は笑い声の主の小鳥遊を睨む
「おい、小鳥遊…私は漫談をした覚えはないぞ」
小鳥遊は爆笑しながら私を指さして答える
「だって!ナギっち!チョロ過ぎるヨー!顔も知らない相手にちょっと抱きしめられただけでそんなに惚れちゃうノー?」
「くぅぅぅ」
ちょっと図星の私が反論出来ずにいると麗奈先輩が助け舟を出してくれた
「小鳥遊さん、人の気持ちをそんなに笑っては失礼よ。陽咲は駅で女性を抱きしめた覚えがあるかしら?」
全員が陽咲先輩を注目する。彼女は頭を抱えて考え始める
「んー?あったっけかなー?あの時?いや、あれは違うか…」
その様子を麗奈先輩が説明してくれた
「陽咲はね。困っている人を見ると放っておけない性分なのよ。だから心当たりが沢山あるのでしょうね」
「そんな!陽咲お姉さまが私以外の女にも!?」
「いつから貴女の女になったのよ」
「どさくさに紛れてお姉さまって呼んでるー」
小鳥遊と麗奈先輩のダブルツッコミを無視して私は宣言する
「陽咲お姉さま、そんなに悩まなくても確かめる方法がありますよ」
お姉さまは抑えていた頭を上げて私を見る
「えっ?」
「抱かせて下さい」




