出張サービス始めました
一ヶ月後、私はまだ問題を解決出来ないでいた。
毎日部室を訪れていた時久と詩織さんは、流石に麗奈先輩に注意されて来る頻度を落したが、それでも三日に一度のペースで来ている。
「夏の大会、先輩とダブルスを組むことになった」
「一年で大会出るなんて凄いじゃん」
今日も来ていた時久と部室のソファーで会話する
私が褒めると彼女は嬉しそうな顔をしたが、すぐに表情を曇らせた
「ありがとう…でも不安なんだ。私のミスで先輩に迷惑かけないか…」
「時久なら大丈夫だって、居残り練習もしてるんでしょ」
「お前がペアなら良かったのに…」
おっと、時久さん?なかなか味なことを覚えましたね
私を遠回しに勧誘してるだろ。そうはいかないぜ
「あ、勧誘はお断りでーす」
「す、すまない…勧誘のつもりはなかったのだが…」
冗談っぽく言ったのに時久は目に見えてシュンとしている。
てか勧誘のつもりがなかったらなんで来てるんだ?
「勧誘は…もういいんだ。ただ…話を聞いて欲しくて」
「えっ?」
顔を真っ赤にしている時久の様子を見る
なんとなく分かった。彼女は私との会話を心の支えにしているのだろう
時久は美人だが、硬く、融通が利かない。侍のような容姿も相まって近寄りづらい雰囲気がある。
クラスや部活で心を許して話し合える友達が居ないのかもしれない。最初は勧誘するという目的だったが、いつしか私との会話が目的になっていたのではないか
「んっ…」
時間になったので時久と抱き合う。エロい声出すな
「時久が話したいなら、外でもいいよ」
「えっ?」
今度は時久が聞き返す。私の提案に彼女は驚いて顔を上げた。
話がしたいだけなら部活じゃなくても良い、むしろそっちの方が好都合だ。
時久や詩織さんに抱かれてる間に、赤リボンの二年生が訪れて、他の部員の予約を取ったというケースが多々あった。『お姉さま』探しの為にこういった事態はなるべく避けたい。時久に抱かれる時間を昼休みとかに当てれば、その分『お姉さま』を見つけるチャンスが増えると思う。
「い、いいのか?」
「うん」
「よ、宜しく頼む」
これで時久の問題も解決した。
案外私は要領がいいのかもしれない
「関心しないわね」
仕事を終えた私に麗奈先輩から労いの言葉はなかった
「『禁忌』に当たりませんよね?」
「『今』はね…いずれ『禁忌』に触れると思うわ」
「まさか!?時久はただ話がしたいだけですよ。規則だから渋々抱き合ってただけです」
「奈妓ちゃん取られちゃうけど良いの?小鳥遊ちゃん」
陽咲先輩が心配そうに小鳥遊に尋ねた。
彼女には結構前から私と小鳥遊がデキてると誤解されてると思う
「ぜんっぜん大丈夫!正妻の余裕ってやつですよ!」
「ふむ、流石『寝た』仲だな」
小鳥遊の冗談に眞帆先輩が乗る
幼女の見た目の癖に中々エグいイジり方してくるなぁ
「『寝た』は止めて下さいよ」
「『正妻』はいいのカナ?」
「そ、それもダメ!」
「フフッ奈妓っちゃん照れてる」
「照れてないですって!」
心配そうな麗奈先輩を尻目に私達は笑い合う
この時私は彼女の忠告が現実になるとは思ってもいなかった




