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★そういうお店じゃないですから!

小鳥遊と卍解バトルをしていたらすっかり遅くなってしまった。

小走りで部室に向かい、扉を開ける


「遅れまし…」


あれ?麗奈先輩と陽咲先輩の姿が無い

代わりに知らない子供が座っている


「おーお主が例の新入部員か?」


知らない子供がにへらと笑って話しかけてきた

誰かの妹か?部員の誰にも似てない気がするけど

もしかして…


「私の妹!?」


そうだった。三年前にハバロフスクで生き別れた私の妹だった。

うん、間違いない。きっとそうだ。家に持って帰って一緒にお風呂に入ろう

そう決めた私は彼女を素早く抱きあげた。


「な、なにをする!?」


「お姉ちゃんだよー」


「我に姉は居らぬ!下ろせ!我は先輩ぞ!!」


なんか芝居がかった話し方も可愛い。アニメに影響されたのかな?

…って先輩?


部室に置いてある姿見越しに彼女の胸元を見る

そこには緑色のリボンが付いていた。


「さ、さ、さ、三年生!?」


「そうだ!無礼だぞ!早く降ろさんか!!」


「す、すみません。小っちゃかったんで幼女かと」


「幼女ではないわ!」


どう見ても幼女にしか見えない先輩

ここに居るってことは…


「もしかして鹿島先輩ですか?」


「うむ、我が真名は『鹿島眞帆(かしままほ)』だ」


名前だけは聞いていたボランティア部の幽霊部員…

私も簡単に自己紹介してから座る。


「お主、超新星ルーキーだと聞いたぞ?女を千切っては投げ散らかしているようだな」


「どこからそんな噂が…」


慌てて否定しようとするが、眞帆先輩は自分が話したいことが終わると興味が移ったようで、スマホを取り出す。

マイペースな人なんだな…


「よっ!ほっ!」


眞帆先輩は可愛い掛け声をあげながらスマホを上下左右に振る

こ、この動きは!?


「魔女スト!?」


「ほほぅ…お主も魔の道を極める者か?」


魔女スト、正式名称は魔女☆ストライク

スマホのモーションキャプチャーを利用して魔法を放つソシャゲだ

リリース初期は物珍しさから大盛況だったが、次第に飽きられてユーザーは離れていった

今はランクマが開催されても1000人集まるかどうかの過疎ゲーになっている

私は初めて触れたソシャゲということもあってか、まだ離れられないでいる。


「私もやってます!!」


自然と明るい声が出た

魔女ストのユーザーに出会うなんて初めてだから嬉しい


「では、契りを交わそうではないか」


眞帆先輩がサムストのフレンドコードを見せてくれる


「『ダムダムゾンゲルゼ』さん!?」


驚いて椅子から転げ落ちそうになった

だって『ダムダムゾンゲルゼ』さんといったら魔女ストユーザーの中では超有名ランカーだからだ

ごっつい名前だから、まさかこんなに可愛い女の子だなんて思ってもみなかった。

私は急いで眞帆先輩とフレンドになってから想いを伝える


「ファンなんです!ずっと見てました!サイン下さい!!」


想いを受けとった先輩は、特別だぞと呟いて私にゆっくりと近づき


首筋を吸った


挿絵(By みてみん)


!?!?!?


「な、な、なぁーーー///」


仰天する私に眞帆先輩が微笑みかける


「サインしたぞ。先程の仕返しだ。」


サインが首筋にキスマークってどこの世界の話だ!

欧米でもありえんわ!!てかこれって『禁忌』に当たらない?大丈夫?

文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、眞帆先輩はどこ吹く風で席に戻り、机に突っ伏して寝始めた。気まぐれで猫みたいだなこの人


呆れて彼女の癖っ毛を眺めていると、入り口の扉がガラっと音を立てて開かれた。

麗奈先輩か陽咲先輩が来たのかと思い、振り向くと

全然知らない人が立っていた。もうこれ以上部員はいないハズ、ということは『お嬢様』か


「出迎えもないの?」


訪問者は不機嫌そうにしながら私に話しかけてきた

緑リボン、三年生。かなり明るい金髪からピアスだらけの耳が見える。いくらウチの学校が緩い校則だからって、これは派手すぎなんじゃなかろうか…


「す、すみません」


金髪の先輩をこれ以上怒らせないように、ぎこちない笑顔を作って対応する

チラっと横目で眞帆先輩を見て助けを求めるが、彼女は深い眠りの中のようだ


「もういいから、相手してよ」


ぶっきらぼうにそう言うと、金髪の先輩は缶に100円を投げてから勝手にカーテンを開けてソファにドサっと座った。

こえーよ…

もう一度眞帆先輩を見るが、起きる気配はない

頼れるのはソシャゲだけかよこの人


「し、失礼します」


意を決して金髪の先輩の隣に座る

いつもとは違う種類の汗が全身を覆う

紅茶を淹れてる間、先輩はずっと足を組みながらスマホを弄っていた。

なにかお話ししなきゃ、こんな態度悪い人でも『お嬢様』だ


「あのー趣味とかってありますか?」


この一ヵ月で天気デッキから進歩した趣味デッキだ

天気より会話が弾みやすいので重宝してる

しかし、先輩の反応は最悪だった。彼女はスマホから私の顔に眼を移して言い捨てた


「貴女、つまらない」


面と向かって自分を否定されたことなんて初めてだ

ショックで何も考えられなくなる

3秒くらい固まった後に私は絞り出すような声をようやく出せた


「で、ですよね…私なんてつまらないですし、他の部員を呼んできます」


そうだ、眞帆先輩を起こして相手して貰おう

そもそも緑リボンに抱かれる必要はないし、赤リボンだったとしてもコイツが『お姉さま』のハズがない

今日は活動しなくて良いって小鳥遊も言ってたし、良く頑張ったよ私は…


ソファから立ち上がる私、でも腕を掴まれて引き戻される

弾みで先輩に抱き着いてしまった。


「つまらないなら、こっちで楽しませてよ」


一瞬遅れて全身に悪寒が走る

最初はそれがなんなのか理解出来なかった、理解したくなかった。

胸を弄られている


「や、やめ!」


抵抗するが先輩は手早く首のリボンを外して私の手首を縛った

こ、これは洒落にならない


「やめて下さい!『禁忌』ですよ!もっと大きい声出しますよ!!」


大声で叫べば、流石に眞帆先輩も起きてくるだろうし、廊下を歩いている人の耳にも届くかもしれない

そう思ったが、先輩は意に介さないようだった。


「いいよ。部活がどうなってもいいならね」


陽咲先輩の「私の居場所を取らないで」という言葉が脳裏に蘇る。私の『お姉さま』探しも出来なくなってしまう

ずるい、こんなの卑怯だよ

大人しくなった私の様子を察してか金髪の先輩の声が少し優しくなった


「こんなことしてるくらいだし、こういうの望んでたんでしょ?そのまま大人しくしてれば痛くしないから」


そう言いながら、先輩は私のスカートの中に手を伸ばしてくる

下!?冗談じゃない!!こんな奴に私は…くやしい

眼を閉じて唇を噛み締めた


「何をしているの!」


最後の一線を越えようとする直前に部屋に緊迫した声が響き渡り、麗奈先輩と陽咲先輩が部屋に踏み込んで来てくれた。


「ぐっ」


麗奈先輩が金髪の先輩の腕を反対方向に曲げて取り押さえる

合気道でもやってたのか鮮やかなお手並みだ。

虚ろな眼でその光景を眺めていたが、陽咲先輩に抱きしめられて、ようやく自分が助かったのだと理解出来た。

安心すると、一気に今まで我慢していた涙が溢れてくる

襲われていた時に泣かなかったのは私なりの精一杯の抵抗だったのだ


「首に跡が出来てる…ひどい」


優しく陽咲先輩が頭を撫でてくれる。首をやったのは眞帆先輩です。


「眞帆先輩!寝てるんですか!?」


金髪の先輩を蹴り出した後に麗奈先輩が眞帆先輩を詰問する声がカーテン越しに聞こえてきた


「ふにゃ?我が眠りを妨げるのは誰ぞ?」


場にそぐわない眞帆先輩のまったりした声

あれだけ騒いでたのにまだ寝てたんかよ…


「今日はもう帰りなさい、遅れて悪かったわ」


眞帆先輩を叱りつけた麗奈先輩がカーテンを開いて戻ってくる

私の泣き腫らした眼を見ると、そっとハンカチを差し出してくれた

受け取った彼女のハンカチで涙を拭う。その時…


懐かしい香りがした


「『お姉さま』の香りだ…」

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