★第一話で最終回!?
ジャンプのラブコメの百合版を意識して書きました。
誰とくっつくか分からないドキドキ感と徐々に過激になっていく展開を楽しんで頂ければ幸いです。
※既に書き終えているので途中で更新が止まることはありません
カーテンで仕切られた狭い部屋
小さいソファーに私は女の子と抱き合っている
彼女とは恋人なんかじゃない、なんなら面識もない
知らない女と私は抱き合っている
「んっ…」
女の子から甘い吐息が漏れる
やめてくれ、こっちも意識してしまう
高鳴る鼓動がバレないように少し体勢をずらす
「あっ」
私が離れようとしていると思ったのか、女の子は逃がすまいと更に力を込めて抱きしめてくる
「んっ」
私からも声が漏れる
自分でもびっくりするくらいの甘い声だ
その声を聴いて、女の子は少し私から離れる
安心したのも束の間、女の子は私に唇を突き出してきた
綺麗で柔らかそうな唇だ
「あ、あぅ」
声が上手く出せない
やめてくれ、それは『禁忌』だ
心は警報を鳴らしているのに私の唇は勝手に女の子の求めに応じようとする
私がキスしたいのはこの人じゃない
ここでキスしたらもう『お姉さま』を探せない
キスしたいという衝動を必死に抑える
眼を瞑っていた女の子の眼がゆっくりと開く
彼女の眼は悲しそうだ、嘆願しているようにも見える
「くっ」
なんとか押さえつけていた理性が吹っ飛ぶ
私の唇は女の子の唇に接近し…
ピピピピピ!
無機質なタイマーの音が鳴り響く
『終了』の合図だ
我を取り戻した私は、急いで女の子から離れる
離された女の子は無言で俯いている
うう…良心が…
でもこれがルールなんだ、どうか悪く思わないでくれ
名前も知らない子よ
「はい!しゅーりょー!楽しんで頂けましたカナー?」
場の雰囲気にそぐわない明るい声が部屋に響く
声の主は同じ『ボランティア部』の部員である『小鳥遊結衣』だ
「ねぇねぇ今ギリギリだったでしょ?ギリギリだったヨネー?」
『お嬢様』の女の子が帰った後、小鳥遊にイジられる
部員と客が疑似恋愛をする場所はカーテンで仕切られているが、監視カメラ替わりのスマートカメラで『禁忌』が行われないように監視されている。
うう…分かってはいたけど、一部始終を見られているのはやっぱり恥ずかしい
「はぁ!?全然ヨユーでしたけど!それとも小鳥遊みたいなお子ちゃまにはあれが本気に見えたのかなー?」
本当は余裕どころか陥落寸前だったけど、私は精一杯の虚勢を張って反論した。
私の虚勢は小鳥遊にバレバレだったようで、彼女は眼を細めて笑う
「まぁ『禁忌』に触れなければ何でもいいけどネー」
そう言いながら、彼女は私が座っているソファーの隣に腰掛け、肩に手をかけてきた
「な、なに?」
「ンー?あんな状態で終了しちゃったから欲求不満なのかなって」
「そ、そんなワケ!」
否定する私の髪を小鳥遊は優しく撫でる
小鳥遊は小柄で所謂『妹系』の女子だ。髪を二つ結びをしている容姿もそれに拍車をかけている
私と同じ一年でクラスメイト、いつも明るくて甘え上手な彼女は部活でも主に上級生から人気がある
そんな『妹系』の彼女に優しく髪を撫でられて少し興奮を覚える
興奮?バカなっ!チビでマヌケな小鳥遊なんかに興奮!?ありえない!?
「あ、あぅ」
否定する心とは裏腹に身を任せてしまう
チョロ過ぎだろ私、チョロ子じゃん
いつしか彼女は頭を撫でるのを止め、真剣に私を見つめていた
「あ、あ、あっ」
いつもニヤついている表情とのギャップが凄い、こんなのズルいよ
私も彼女を正面から見つめ、唇を近づける
「それも『禁忌』よ」
冷酷な部長の声でキスは中断された
部長は腕を組みながら氷よりも冷めた眼で私達を眺めている
あぶねー!あと3センチでクビだった
「テヘッ!残念だったネー」
小鳥遊は悪びれもせず舌を出す
その仕草が不覚にも可愛いと思ってしまったのは内緒だ
「はぁ~こんなことで探せるのかな?」
小鳥遊と部長が去った部屋で私はため息をついた
私は不特定多数の女の子とイチャイチャしたいから『ボランティア部』に入ったんじゃない
『お姉さま』を探す為に仕方なくこのいかがわしい部活に入ったんだ。
だから『お姉さま』を探し当てるまで『禁忌』を犯して部活をクビになるワケにはいかない
そう改めて決心した。決心したんだけど…脳裏に女の子と小鳥遊の唇が過る
いかんいかん!慌てて首を振り、気持ちを静めた
私…『遠山奈妓』の部活動は前途多難だ。