03 ペア
皆さん、ジオーネ暮らしを満喫しております。
この街の人たちはとても人懐っこいのですが、良い意味で計算高いのです。
つまり、お付き合いは必ず双方の利益になるように、みたいな感じで。
シビアな善意、とでも言うのかな。
人同士の距離感的にも、かなり居心地の良い街だよ、俺としては。
もちろん、街中美女巡りにも余念無し。
って言うか、それこそがまさにジオーネ暮らしの醍醐味。
作られたのが比較的新しい街なので、各地から集まった人たちによる雑多ながら活気のある雰囲気。
人種のるつぼって感じの異国情緒ごった煮状態。
つまりは、ぶらぶら歩くだけで様々な美女に巡り合えるという、俺にとっては極楽浄土なびっくり箱的プレイス。
ホント、ちょいと散歩するだけでも満足感がスゴいのですよ。
「ちょっとお散歩してるだけなのに、なんでこんなに疲れちゃうのでしょう、ゼッちゃん」
「フルリお姉さまは頑張りすぎなのですよ」
「アラン様の『モンスター』反応を段階的に仕分けして、反応弱の時は警戒を緩めるようにするのです」
「全ての反応に全力で対応していると、こちらの神経が保ちませんよ」
あー、なんかヒドい言われようですね。
でも、それが正解。
人生何ごとも緩急が大事。
普段はユルさとシリアスのバランスをキープしておくことこそが、
いざという時の全力『モンスター』活動の鍵、なのですよ。
「あの余裕の表情、なんだか悔しいですね」
「奥様方と御相談して何らかの対策を取らないと、こちらが負けたような気分になってしまいます」
「ゼッちゃんは真面目っ娘ちゃんすぎるのです」
「殿方には管理と放任のバランスが大事って、リノアさまもおっしゃっていたのですよ」
さすがはリノアさん、良く分かってらっしゃる。
そして、頑張れロイさん。
そんな感じの三人ぶらぶら街散歩。
なんだかんだと、フルリとゼシカさんは良いコンビなのです。
そして今の俺の野望はただひとつ、
ふたりにペアルックさせること。
ふたりともいつもメイド服なので、ある意味ペアルックではあるのですが、
出来れば私服でという、野望と言うか親心、ですかね。
「明らかに何か企んでおりますね」
「釣った獲物に餌を与える漁師さんのまなざしなのですっ」
鋭いですな、おふたりとも。
では、美女巡りモードからお父さんモードに切り替えて、
ジオーネぶらり散歩、再開ですよ。
そしてジオーネの衣料品店を散策中、
なのですが、なぜかふたりともあまり乗り気では無い様子。
「ご主人さまはメイド服は嫌いなのですか?」
いえいえ、もちろん大好物ですよ。
それはそれとしておしゃれ私服姿も見たいのです。
「無理矢理アレな衣装を着せられるより、自身で選ぶべきなのでしょうか」
「巧妙な罠のような気もしますが……」
さすがはゼシカさん、鋭い。
うーん、なかなか上手くいかんのです。
おふたりに喜んでもらえて、かつ俺のご主人さまっぷりも上がるような方法……
うひっ、閃きましたよっ、
ペアルックとまではいきませんが、三人とも楽しめそうな妙案。
レッツチャレンジ、俺。