1、オーブガール(怖さレベル:極低)
身バレ防止の為、一部フェイクやぼかしを入れてるものの、ほぼ実話である。
二十年以上付き合いのある友人の話だ。
彼女は中学生の頃、かなりの写真嫌いであった。
本人曰く、必ずと言って良い程の確率でオーブ(白い光)が写るというのだ。
それも学校行事の写真ですら、例外ではないのだという。
怖い話が好きな私は当然のように興味津々。
しかし彼女とは中学校が違った為に確認する事は出来ない。
どうしても見たいとお願いし、どうにか比較的最近に撮ったという鼠王国でのプライベート写真を見せて貰う事に成功した。
「わ、マジだ」
結論から言うと、期待以上だった。
私としては心霊番組等でありがちな「ゴミだか虫だか分からないような光」や、「丸や矢印のガイドがないと分からないような程度の何か」を想像していたのだが、思いの外ガッツリ系オーブだったのだ。
彼女は他の友人と楽しげに写っており、その全ての写真に薄ぼんやりとした小さな白い光の玉や細い線が被さっていた。
それも明らかに彼女の周りだけ。
もちろん光が少ない物もある。
しかしよくよく探すと必ず彼女の近くに小さな丸が見えるのだ。
この時の感動は今でもはっきりと覚えている。
「すげぇねぇ。何で?」
「知っかよ」
それもそうである。
そもそも理由が分かれば顔立ちの良い彼女が写真嫌いになんてならなかっただろう。
だが私は全てを鵜呑みにするような素直な性格ではなかった。
彼女を疑いたくはなかったが、心の何処かでまだ合成の可能性を疑っていたのだ。
とはいえそれを指摘する気は毛頭なく、時は流れ──
およそ半年後、私は彼女が真実を述べていた事を知る。
「わ、これもか」
彼女や他の友人とお泊まり会をした際、私は今では珍しい使い捨てカメラで写真を取りまくっていた。
心霊写真目当てではなく、純粋な記念写真目的である。
その写真の、彼女が写る殆んどに薄ぼんやりとした光が写っていたのだ。
「だから言ったべ」
私が半信半疑だった事に気付いていたのか、彼女は少しどや顔で笑っていた。
もはや慣れっこなので恐怖心はゼロらしい。
ここで私はある事に気が付いた。
「でもさ、何か前より光り方が地味でね? 何で?」
「知んね。でもそれは自分でも思った」
原因は分からないが、普通っぽい写真が撮れるのは良い事である。
その変化があったからかは不明だが、これ以降彼女はどんどん写真慣れしていった。
その後、卒業写真を一人だけ三回も取り直したという笑い話があったものの、我々はなんやかんやで同じ高校に進んだ。
彼女は少し不真面目な所があり、学校行事をサボりまくっていたので卒業アルバムに彼女の写真は殆んど無かった。
大勢の中に小さく紛れた一、二枚と証明写真のような個人写真(これも取り直したらしい)位のものである。
「卒業式だけは出るように」と何日もかけて説得したので、どうにか卒業式の集合写真を残す事ができた。
私の努力の賜物である。
ちなみにその写真は見事なまでの晴天のおかげで全体的に眩しく、オーブの類いを見つける事は出来なかった。
以上がオーブが撮れていた友人の話である。
ちなみにそれから数年間、彼女は都内の小さなイベントのモデルバイトをしたりして写真慣れに拍車をかけていった。
もの凄い覚醒ぶりである。
成人する頃には全くオーブが映らなくなったようで、当然のように原因は不明のままだ。
少し勿体無いような気もするが、彼女に関する不思議エピソードは他にもあるので、許可が下りたら書こうと思う。