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“くっころ”から始まる夢の島  作者: “くっころ”を愛する者
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エーゼルハイム侯爵家

 都市ハウゼンに無事たどり着いたリーンとテッドはそのまま目的地であるエーゼルハイム侯爵の屋敷に直行した。


 思っていたよりも時間がかかってしまったためだ。今は昼過ぎで飯抜きはつらいところだが、侯爵の依頼説明を聞き終えた後に出店をまわればいいだろう。


 リーンは活気づく商店街の出店を片っ端から頭のメモ帳に書き込んでいく。リーンは健啖家(けんたんか)だった。大剣を振るうこともありお腹が空きやすい。逆に神官であるテッドの方が少食だった。


 街中を抜け、二人はやがてエーゼルハイム侯爵屋敷の敷地にたどり着く。



「でっか……!」

「よく考えたら三大貴族の屋敷なんて来るの初めてだね。さすがに違うな~」


 屋敷に至るまでの庭だけで何軒の家が建てられるだろうか。そんな考えても仕方のないことを考えながら、田舎出身のリーンとテッドは屋敷までの道を進んだ。やがて、屋敷前にたどり着く。屋敷の入り口前には二人の男の騎士がいた。扉をはさむように左右に立っている。


「侯爵の依頼を聞きにきた冒険者の者です」

「どうぞお入りください。突き当たりの大広間です」

「どうも」


 テッドが先に屋敷に入り、リーンがその後に続く。


「感じイイ人達だったね」

「これくらい普通でしょ?」

「イヤイヤ。貴族お抱えの騎士は偉そうなのが多いよ?」

「それはそいつらがおかしい」

「そりゃそうだけど……まぁいいや。見えてきたね。おお、結構いるなぁ」


 テッドの視線の先、大広間の入り口の扉は開け放たれていた。よって、中が見える。大広間はたくさんの人でごった返していた。


「まさか戦争に駆り出されるんじゃないでしょうね……?」

「いや、まさか……って言いたいけど、この規模はさすがになんかありそうだね。――やっぱり引き返す?」

「まさか。無駄足はごめんよ。ここが危ないならすぐ離れるだけ。向こうはこちらを強制的には組み込めないんだから」


 冒険者はあくまで依頼を受けるだけの者達で、戦は王国軍や貴族の有する私兵が行う。住み分けているのだ。


 冒険者組合は国をまたいで存在する。この国に滞在する冒険者の中には、祖国を別にする者だっているのだ。万が一その国と戦争にでもなれば、その者は祖国に無事に返さなければならない。これは国家間で取り決められた条約でもある。


 もし条約を守らなければ、周辺諸国からの非難、信用失墜は避けられず、蛮族の国として扱われることになるだろう。


 冒険者は国から要請が入れば戦に参加することはできる。また、国の存亡に関わる程追い詰められている場合は国から戦に強制動員される事態も起こり得るが、それは冒険者のみならず国民全てが対象の話だ。


 リーンとテッドは大広間へと入った。


 人だらけで奥は見通せない。それに、来たのが遅い方で最後列に近かった。


 やがて、定刻となる。ザワザワと騒がしかった声が鳴りやむ気配がしリーンが前の方を注視すると、壇上に騎士達を伴い一人の身なりのいい壮年男性が入ってきた。


 男が中央にしつらえられている椅子に座ると、脇に立つ騎士の一人が槍の柄を床に強く当てた。音を響かせ皆の注意を集める。


「これより、エーゼルハイム侯爵による依頼説明を行う! ――侯爵閣下」

「うむ」


 先程までの騒がしさが嘘のように静まり返った大広間で、エーゼルハイム侯が声を張り上げる。


「冒険者の諸君! 急がしい中、よくぞ集まってくれた! 単刀直入に言おう! 諸君には、行方不明となった愛娘――シルヴィアを見つけ出し連れ戻してもらいたい!!」

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