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“くっころ”から始まる夢の島  作者: “くっころ”を愛する者
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協力体制

――くっころ喫茶――


 ネルは宣言後、バイオレットに向き直る。


「バイオレット、お願いだからこの事は――」

「そうねぇ……。ネル、一つ提案があるんだけど、その返答次第でこのことは黙っていてあげるわ」

「なんだい? ――あ、アリシア達はあげないよ?」

「今はそれはいいわ。私をこの島に住まわせなさい。住居はあなた達がつくってね」

「は? ――イヤイヤ、なんで!?」


 しれっと移住宣言をかましてくるバイオレットにネルがうろたえる。先程夜伽を求められていたアリシアは両腕でおさえながら身体をぶるりと震わせた。


「面白そうだからに決まってるじゃない。――そうだ、あの子達も呼ぼうかしら。三人、私の愛しい子達を呼ぶわ。部屋は一つでも構わないけど、ベッドは特大サイズでね。それと、天蓋付きで」

「まだいいって言ってないんだけど!?」

「ならいいわ。この島のこと、バラしちゃうから。――じゃあ、帰ろうかしらね」

「待った待った待った! ――ったく、わかったよ。ただ、絶対にうちの子達に手は出さないでくれよ?」

「ふふ♪ ものわかりがいい子は好きよ」


 話がまとまってしまった。


――そして、この場には重要人物がもう一人いた。



「さて……と。それじゃ俺はそろそろお暇するかな。ネル、またな!」

「ホセ、逃がすわけないだろ? それに、君はシルヴィアに手を出した。僕としていた約束、忘れたわけではないだろ?」

「さ、酒が入ってたからつい、な! 嬢ちゃん悪かった! このとーり!」


 ホセは両手を合わせシルヴィアに謝り倒すも、ネルが許すはずもない。それに――


「君は侯爵家にここの情報を流しそうだしね……さて、どうしたものか」

「な、流さねぇって! いたいけな商人相手になんてこと言うんだ!!」


 皆がしらけた視線をホセに向ける。誰も信じちゃいない。


「監禁するにしても、いつまでもしてられるはずもない、が。さてさて……」

「穏やかじゃないぜ、ネル! おいバイオレット、お前からもネルに言ってやってくれ!」

「そうねぇ……ホセ。私が面白そうなことに目が無いのは知ってるわよね? ――もしバラしたら酷いわよ?」

「やめろ! お前が言うとシャレにならん!!」


 バイオレットが口だけで笑う。目はまったく笑っていないのがおそろしい。


 ホセの顔色が悪い。いくら金があろうと権力があろうと、暴力の権化――それもバイオレットが相手だとどうしようもない。


 バイオレットを敵にまわすおそろしさをよく知るホセからしたら夜逃げしたいくらいだ。


「なら……ホセ、あなたも手を貸しなさい」

「イヤイヤ! さすがに侯爵家を敵にまわす気はない! それに三大貴族のエーゼルハイムなんて、いくらなんでもヤバい!!」


 先程までのオーラまとう豪商っぷりが嘘のようにホセがうろたえる。


「なにも全面協力までは求めないわ。人質として、あなたの家族を一人、それと商売全般に通じてる人間をこの島に住まわせなさい。その使用人も数人程度。――ネル、家の準備をお願い」

「合点承知!!」

「おぃい!? もう言ってることがカタギのもんじゃ――あ、こいつら違うか……。そんなことして俺に何の得があるってんだ!」

「まぁまぁ。ホセ、君だって商売に使えないか興味があって今日ここに来たんでしょ? これからこの島は発展するよ? 僕達がさせる。商売の取引は君のところ優先で話を持っていくよ。それでどうだい?」


 ホセはアゴに手を当てしばし考え込む。やがて、ため息をつき両手を上げた。


「降参だ降参! ――一つだけ。お前達が捕まっても、俺のとこのもんは――」

「そこは僕らが無理矢理従わせてたってことにするよ。――君が裏切りさえしなければね」

「わ、わかった! ――ったく! とんだ厄日だぜ……」


 力なく肩を落とすホセの背中をネルがご機嫌にバシバシたたく。


 何はともあれ、こうしてくっころ島に新たな仲間が加わるのだった。

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