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“くっころ”から始まる夢の島  作者: “くっころ”を愛する者
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黒騎士

――くっころ喫茶――


 シルヴィアの悲鳴にオーマイガ参上。ネルも事の異常さに気付いた。


(うかつだった! バイオレットとホセのことは警戒してたけど)


 凝視するわけにもいかないのでたまに目を向ける程度にとどめていたが、バイオレットとホセは上手くネルの監視をかわしながらアリシアやシルヴィアにボディタッチ――腕や手だが――をしていた。


 オーマイガが男性用控え室に隠れているのはわかっていた。クルトン達とのアイコンタクトで察していたのだ。大方、控え室にのぞき穴をもうけて、そこから店内を見ているのだろう。


 保守的なオーマイガのことだ。自分がいたら迷惑だと考えそう動くのもネルの予想の範疇だった。むしろネルはオーマイガを皆に紹介する気でいたのだが、オーマイガが表に出ないことを望むならその意思を尊重するつもりだった。


 そのオーマイガがシルヴィアの悲鳴で控え室から飛び出した。いつでも抜けるよう腰のこん棒に手をかけながらドカドカと奥のテーブルに歩いていく。


 ネルは焦った。この場にはあの女――バイオレットがいる。下手したらオーマイガが殺されてしまう。


 ネルは奥のテーブルでなくカウンター奥、壁にかけてある剣めがけて走った。



 そうこうしてる間に、アリシアの手を離したバイオレットが席を立つ。ホセもシルヴィアの手を離し、警戒して腰にはいた剣に手を当てていた。だが、その表情から余裕は失われていない。


「ふふ……♪ 何かが隠れてるのはわかってたけど、まさかオークだなんてね」


 バイオレットのまとう空気が変わる。バイオレットは外行き用に全身を黒のローブでおおっていたが、勢いよく脱ぎ捨てた。


 そこから現れるのは、黒のフルアーマーに身をつつみ腰に剣をはき、紫のマントをたなびかせる女騎士だった。


「――はっ? 騎士?」

「…………まさか!」


 アリシアが呆然とつぶやき、シルヴィアが目を見開く。


 オーマイガはバイオレットを見て、過去最大級の危険を関知した。


(あの時のメス……? いや、髪の色も顔も鎧もぜんぜん違う! だけど、こいつ――――強いっ!!)


「魔族は倒さないと……ね?」


 バイオレットは不気味に舌なめずりすると、誰も止める間も無い程の瞬発性で床を蹴った。


 それと同時に、カウンター奥からも派手な音が鳴る。


 そして――



 オーマイガに斬りかかったバイオレット。その黒剣を、オーマイガがこん棒で――そしてネルが並び立ち、店に飾ってあった剣で受け止めていた。

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