後編
お読み頂きありがとうございます!
これにて完結です!
よく考えると1話が長いですねー笑
使用人たちが教えてくれたあまのがわ、はこの世界でも見れるんだろうかと窓に近付いた時。
窓が突然開いて、目の前にローブを被った中性的な顔立ちの人間が現れた。
窓が開く音に気づいた使用人たちが
部屋に駆けてくる足音が聞こえてきたけれど、
瞬時に口を塞がれ、強い力で抱き寄せられて、空を飛んだ。
そう、有り得ない。
空を飛んだの。
小さくなっていく私の部屋中では沢山の使用人と警備にあたっていた人たちが
騒いでいるようだった。
空からの侵入者など滅多に現れないし、
対抗手段も無い。
彼のローブはふわふわと揺れながら、魔法にでもかかったみたいに安定して私たちを空に運んだ。
私はその内、気を失うように眠っていた。
目が覚めると、見知らぬ小屋のベッドで寝かされていた。
ベッドの傍らには、美少年が眠っていた。
音を立てないようにベッドから抜け出し、逃げようと思ったのに、扉が開かなくて焦っていると後ろから声がした。
「おはよう」
「っ!?」
警戒しながら振り向くと、美少年が微笑みかけてきた。
「ねえ、あんな男やめて、俺と結婚しよ?」
黙ること数秒。
私は扉を突き破ってでも脱出しようと思った。
「ちょ、何してんの、怪我するでしょ、」
「放して!家に帰してよ!意味わかんない!」
「待って話聞いて!
あなたは、王妃にはなれず、断罪されて処刑される。
あなたを救いたい。
だから、攫ってきた」
ああ、まただ、またこの話!
「だから何なのよ!?げえむって!何なのよ、一体……!
知らないしそんなの!
何で私がこんな目に合わなければいけないの?!
ずっと見知らぬ女に怯えて!
解決したと思ったのに何でこんなことになるの?!
ひろいんは遠くの国に行ったの!
だからもう大丈夫なの、私は安全なの!
いい加減にしてよ!」
「……ちっ。
大人しく頷いていればよかったものを。
君、知らなかったんだね。
彼女は殺されたんだよ」
私は腐っても貴族だ、人が死んでも悲しみなんて感じない。
驚きはしたけれど、それ以上の気持ちは湧かない。
それに、この少年の言葉が嘘の可能性も高い。
少年は悔しそうな顔をした。
「姉さんは。
俺の前で殺されたんだ。
だから許さないよ。
お前を一生ここに監禁するよ。
ゲームの強制力を舐めるな。
どうせお前は何らかの罪で問われ処刑される。
が、お前は綺麗な顔だし他の者に手を下されるくらいなら俺が囲ってあげようと思って。
一生かけてお前が何をしたのか思い知ってくれればいい」
でも、監禁生活は1週間程で終わりを告げた。
突然小屋の扉が壊されて、よく知った声が聞こえて。
少年は馬に踏まれて気絶した。
「イネス!!……よかった、無事で……!」
アデン様が、来てくれた。
抱きしめられて、涙が出た。
切り傷だらけで、ぼろぼろだったのに、アデン様は今までで一番かっこいいと思った。
城で話を聞かれてから、家に帰った。
唯一良かったことは、純潔が守られたこと。
少年は私を監禁している間、ずっと警戒していたからそんなことをしている場合ではなかったのだと思う。
ああ、そうだもう一ついいことがあった。
やっぱり両親はひろいんを殺してなんて、無かった。
アデン様は両親とともに、自ら何日も休まず私を探し回ってくれたらしい。
それが本当にうれしかった、アデン様はちゃんと私の事を大切にしてくれる。
まだ私にあるのは愛でも恋でもないけれど、ただアデン様を次期王として見るのではなくて、夫になる人として見ようと思った。
イネスが部屋で眠りについた頃、アデンは、椅子に巻き付けられた少年を睨んでいた。
「お前、今の話は確かか。」
「ああ……もう話すことはない。
さっさと刑を決めてくれよ」
「……お前、反省しているのか?
お前に攫われている間、イネスがどれだけ怖い思いをしたと思う!
……って言っても反省しないんだろうな。
もういい。
早くイネスを安心させてやりたい。
こいつを地下牢へ」
部屋で構えていた騎士にそう声を掛けると、
アデンはイネスに手紙を書き、遅くにすまないと言いながら早馬に手紙を渡した。
『遅くにすまない。
もう寝てしまったかな。
早く知らせたくて、遅い時間に手紙を送る無礼を許してほしい。
私は君に恐怖を与えていたんだね。
異世界の話を先程聞いてね。
ふざけた作り話で君を不安にさせていたと分かって、気付けなかった自分の不甲斐なさを責めた。
私は君としか、結婚しないよ。
君がいなくなった時には、不安と悲しみで胸が張り裂けそうだった。
君は私にとっては唯一無二の存在なんだ。
どうか、わかってほしい。
さて、君が御両親に聞かされた通り、ヒロインは死んでいないよ。
ただ……彼女も犠牲者だ。
君を攫った少年は、ヒロインなんだ。
だから、殺された、というのも間違いではないのかもしれないけれど……それでも彼女があんな事していい理由にはならない。
彼女は君の家の使用人に騙されて、体の性別を転換する薬を飲まされたんだ。
しかし……彼女は異世界では男だったらしい。
彼はその世界で、ゲームの製作会社で働いていたから、すべて知っていたんだ。
だから、むしろそれが好都合だと思い、君を攫い、君を……。
言わなくてもわかるね。
安心して、もうあの少年が君の前に現れることはないから。
怖い思いをしたのだし、暫くは休養することになるだろう。
しっかり休んでね。
また、君と会える日を楽しみにしているよ』
翌朝起きると手紙が届いていた。
アデン様が手紙にこんな甘いことを書いてくれるなんて。
私は決意した。
もう、難は去った。
私はアデン様と共に、この国を守る。
ここが異世界の人間曰くげえむだとしても、私は確かにここに存在している。
この騒動ではたくさんの人が協力してくれた。
私が次期王妃にふさわしい人間になることが、彼等への一番の恩返しとなるはず。
げえむは終わった。
これから私たちが紡ぐ日々は、物語にするにはつまらないかもしれないけれど、どんな物語よりも価値のあるものになるだろう。
そう言えば、魔法がある世界の設定です。
ひろいんは、魔法でローブを動かしていました。
勿論アデン様はイネスの事が大好きで、
裏で手を回していたのでこれまでイネスを
妬む声は出なかったというありがち裏設定でございます。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
悪役令嬢転生もの大好きで、逆に周りだけ転生者だったらどうなるのか?という想像を元に書きました。
もし気に入って頂けましたら、ブクマ・評価して頂ければ幸いです。
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悪役令嬢転生ではないのですが、聖女が出てくる連載始めました!
もしよろしければお読みください♪
「聖女が狂わせた歯車」
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☆☆