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第8話 毒花

今回と次回は女同士の駆け引きを書きたいと思います。(ちょっと、楽しんで書いてますw)


読書を嗜んでいると、扉からのノック音が響いた。合図を出すと、そこには見慣れた侍女が立っていた。


「ラキさま」

「リサ」


侍女のリサは私の専用侍女と護衛も兼ねている。彼女は元々隠密村という隠密を生業をしたもの達が集う村の出身でそういう面でも特化している。幼い頃から傍に居てくれており、何か特別な用事など重要なことは基本的に彼女に任せている。


「少し()()()に参ってました」

「気にしないで、それよりちゃんと()()()?」

「はい」


リサの言葉を聞きながら、天井に顔を向ける。花摘みの隠語は間者。つまり、この屋敷内に間者が入ってきたという訳だ。まだロキ殿下の婚約者としての発表はない筈たが……何処から漏れたかは大体予想はつく。

ここ最近は特に多い。私を狙っているのか父を狙っているのかはわからないが、時期を見ると私であることは大方間違いでは無い筈だ。救いとしては父や母などに被害が出ていないことだろうか。ロキ殿下に発言した通りに私だって簡単にくたばる気はないが、これから家族の被害だって考えなくては。…まぁ、私の家族がそこならの間者に殺されるとは思えないけど。


「ラキさま、ロキ殿下からこちらが届きましたよ」

「あら、素敵ね」


リサが抱えているのは小さな花束であった。ロキ殿下の茶会以来、彼からはこうして花束と一言のメッセージが添えられたカードを渡させる。最初は驚いたものの毎日送られてくると慣れというとのもあり、今では日常の一つだ。メッセージカードは彼の几帳面な性格の現れたような悠長で綺麗な文字が陳列されていた。


「返事を書かなくてはね」

「そうですね…あとこれです」

「まぁ…こちらはこちらで」


リサは少し迷惑そうに私の手前のテーブルに小さな箱には小さな可愛らしいケーキが一つ置いた。これはつい最近できたというマルシャというスイーツ店のものだろう、見た目だけなら。味は不味いはすだ。このココナッツとボンドを混ぜたような微妙な香りからは…スラあたりの毒だろう。致命的ではないが、食べれば身体の痺れは免れない。場合によっては、後遺症として震えや痺れが残る場合もある。ここ最近、このような「箱」が届けられる。多分これを私が食べようが食べなかろうが相手にとっては問題はない。それよりも「箱」を受け取ることによって私の精神的なダメージを狙っているのだろう。全く陰湿にもほどがある。一般的なご令嬢だったら常に命が狙われているなんてなったら、怖いだろう。しかし私は…()は暗殺者だった者である。命やり取りなんて日常茶飯事だったし、今は衣食住が充実しているし護衛兵もいる。…それよりも素晴らしいケーキに毒を入れていたりする方が問題だ。この前もクッキーだったし、その前は花だったらまだ飾れたけど…食べ物に対する冒涜だ。


「本当勿体ない…毒がないならまだ食べられるのに」

「そんなことを仰る侯爵令嬢はラキさまだけかと」

「そうかしら?」

「そうですよ…あとこちらです」


リサはまた懐から一通の手紙を出す。リサから手紙を受け取り、読んでいく内に口角を上がっていくのが己自身もわかる。…宣誓布告という訳ですね。


「ふふ、これは面白くなってきたわね」

「…そんなことを仰る令嬢もラキさまだけですね」


どんな事柄にも例外というものは存在する。ラキがロキの婚約者になるというのは身内以外には明かされない。それは他国の介入などを防ぐためなど複雑な要素が含まれるので説明は割愛する。つまり、王族の婚約者情報は明かされるまで最高機密情報(トップシークレット)ということである。ここで重要なのは、「身内」の定義である。そう…例えば、血の繋がっていない義理の親とか。今ロキ殿下の母君であるシャンデリア元王妃は亡き者の為、ロキの書類上の母親はチェリー王妃になっている。義理の親設定である。…彼女なら私が婚約者になることを知っていても可笑しくはない。彼女が手に入れた己の情報を誰かに流すのは彼女自身の良心の呵責に任せられるのだ。情報が漏れるならそこだろう。貴族というのはそれなりに面倒臭い一つの組織ようなものだ。私の家に反発心を抱いているもの、王家との関係を取り持ちたいた思ってものあたりの家に何気なく話を言う…噂とかそこら辺から話を切り出したのだろう。そんな家がそんな話を聞いて、「はいそうですか」と終わる筈がない。嫌がらせなどやり取りが行われることは安易に想像がつく。

嫌がらせで私がロックダウンしたら儲け物。ロックダウンしなくても、精神的に負荷が掛かっていることには変わりない。そうやって、相手が嫌がるような嫌がらせを少しずつすることで、相手が甘受していた心地良さを奪っていく。人間にとっても動物にとってもそうだが"不快"は一時的ななら問題ないがずっと続くとそれは大きな"負荷"に変わっていく。一気に壊すことが出来なくとも確実に仕留めていく戦法。


ね、そうですよね。チェリー王妃?


先程から己の手にある手紙の主に問い掛ける。無論返事が返って来ない。…己の手を汚さずにだけど確実に相手を仕留めようとしている。彼女は自分の価値やポテンシャルをよくわかっており、それを上手く活用する術を知っている者だろう。己ではなく、己を上手く魅せて相手を引き摺り込んでいく…正しく毒花。


「貴方だけの専売特許ではないですよ」


ラキは手紙に妖艶に微笑む。何も知らない者が見れば好いている相手からの愛瀬の手紙かもしれんと思われるかもしれないと思ったことだろう。


「まるで小説のラスボスみたいですね」


妖艶な笑みのラキを一刀両断したのは侍女のリサである。ラキは妖艶な笑みを引っ込め、先程と打って変わった笑みを浮かべてリサの方を見て言った。


「そんなことはないでしょ。ほら?」

「…見た目だけしたら、ヒロインかもしれませんね」

「ひ、ひどい~」


ひどいと言いながらラキは年相応の笑みをリサに浮かべた。この笑みは信頼している者しか見せない親愛の印のようなものである。リサの毒舌は今に始まったことではないし、彼女が自分を主として認めてくれていることは十分にわかっている。長年の信頼関係もあるし、彼女が己の傍を離れないのが何よりの証拠だ。そんな彼女だからこそ、彼女の主として恥じない者でありたいと思い続けることができるのだ。


「リサ、数日後出掛けるわよ」


信頼出来る侍女にラキは挑戦的な笑みを浮かべた。

次回は王妃と直接対決!

来週も読んでくれると嬉しいですଘ(੭ˊ꒳ˋ)੭✧

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