【番外編】たまにはこういう日もある。
続きが出ていると思ったか?
残念、違うよ!今回はエイプリルフールにちなんだ番外編です!
4月1日を超えたらタイトルに番外編ってつけます。
エイプリルフール。
年に一度、嘘を付いても許される日。
日本語に直訳すると四月馬鹿。
外国では嘘を付いても良いのは午前までで、正午以降はネタバラシをする風習があるらしい。
エイプリルフールの話をしている漫画のページをイグニとマリアに見せられ、エイプリルフールとは何かを聞かれた私は二人にそんな説明をした。
嘘を付いても良い日というのは遊び好きな彼らの感性にハマったらしく、魔物たちの中でエイプリルフールが広まった。
そして今日、彼らは嘘をつきあって遊んでいるらしい。
『らしい』というのは、言葉の分からない私は彼らが何を楽しそうに話しているのか分からず、近くにいたフォレスから又聞きで聞いた話だからだ。
まさか、ダンジョン内全体で行われる程流行るとは思わなかった。
ブームというのは一度発生すると瞬く間に広まってしまうようだ。
「エイプリルフールかぁ…」
「アイネス**、マエ、イタ、バショ、エイプリルフール、ヨク、アソブ?」
「元の世界でエイプリルフールを楽しんでいたか、ですか?」
「ハイ。」
どうやらフォレスもエイプリルフールブームを楽しんでいる一人らしく、嘘を付き合い和気あいあいとしている魔物達の様子を温かく見守りながらそう尋ねてきた。
エイプリルフール…。
私の親も数年に一度はこの日は遊んでたなぁ。
私の父(40代後半、仕事はITエンジニア兼黒魔道士)なんて、「会社辞めてきた」なーんて嘘を付いて母を慌てさせて、ネタバラシ後に嘘が嫌いな母に怒られてたっけ。
また変な嘘付いて母に怒られてないと良いなぁ。
昔の思い出を思い出しつつ、私はベリアルの入れてくれたお茶を飲む。
そして私は、フォレスに言った。
「そうですねー、あまりそういった行事には積極的には参加はしてませんでしたね。基本、皆が嘘を付いているのを見ている感じです」
エイプリルフールなんて、大っっきらいだ。
***** *****
私は昔から、エイプリルフールが数ある変わった日の中でも一番嫌いだ。
エイプリルフールなんて風習はこの全世界から存在が消えれば良いと思っている。
出来る事なら、エイプリルフールを流行らせた奴を半殺しにして磔にしてやりたい。
…って、エイプリルフール考えた人はもう死んでるか。
何故私がエイプリルフールをそこまで嫌悪しているか?
別に嘘が嫌いだとか、そういう訳じゃない。
私は、エイプリルフール自体が嫌いなのだ。
騙されやすいからこの日に良く絡まれ安くなるから?
嘘をついてもすぐ見破られてしまうから?
違う、私の場合はまったく正反対の理由なのだ。
騙されにくすぎて、嘘を付いても見破られにくいから、嫌いなのだ。
『大変だ大変だ!木村先生が体育の山口先生と結婚するんだってー!』
『えー、本当?』
『木村先生、結婚したら先生辞めちゃうんだってさ!』
『やだー!先生好きだったのにー!』
『小森、お前木村先生好きだっただろ?残念だよなー、先生が居なくなっちゃう事になって』
『嘘でしょ?』
『え?』
『木村先生と山口先生の結婚話、渡辺くんの嘘でしょ?エイプリルフールの。』
子供の頃から、私は嘘に騙されにくかった。
『ちぇっ、なんだよ、もうバレちまったのか!つまんねーの!』
『小森さんすごーい!どうして嘘だって分かったの?』
『渡辺くん、さっきから瞬きの数が凄いから嘘かなーって。それに今朝山口先生が「早く結婚してー!」って職員室で叫んでるの聞こえたし』
生まれつき人の仕草や言動に敏感な私は、クラスメイトの嘘をすぐに見破ることが出来た。
他人の嘘を鵜呑みにする前に、過去に自分が見聞きした事実から矛盾点を探って、そこから嘘か本当か見破る。
その結果、私は同い年の子の中でもかなり嘘に騙されにくい子供だった。
それは、大人相手でも同じだった。
『お前ら、今日はビッグニュースがある!今日は2時間目に、あの有名なアイドル、リンリンがお前らの授業を見学に来てくれるぞ!』
『えっ、リンリンが?』
『やったー!私、ファンなの!』
『…先生、エイプリルフールとはいえ生徒たちをぬか喜びさせる嘘は止めてください。』
『えっ、嘘?』
『な、何言ってるんだ小森―?先生は嘘なんて付いてないぞー?』
『先生が見学に来ると言ったリンリン、今日から香港で映画撮影するらしいですよ。父が言ってました。』
『先生嘘ついてたのー?』
『最低ー!』
『ははは、小森は嘘を見破るのが上手いなー。もっと他の皆みたいに子供らしく騙されてくれ~?』
『よう、帰ってきたぞー!』
『あらおかえり。今日は機嫌が良いわね。どうしたの?』
『実はさっき、宝くじを買ってなー。それが見事、一等が当たったんだよ!』
『それは良かったわね。いくら当たったの?』
『聞いて驚け、なんと3億だ!凄いだろう!』
『へぇ、そうなの。』
『いや、リアクションが薄くないか?瞳子、嬉しいだろ?』
『別に。エイプリルフールの嘘でしょう、それ。宝くじを当てたと言っても精々3千円とか3万じゃないですか?』
『今年も瞳子に嘘を見破られたー!しかも額まで!ちょっと可愛げがないぞ、瞳子。もっとこう、子供っぽく騙されてくれよ。エイプリルフールぐらいさ。』
『………。』
『あ、おい!』
先生の嘘も、親の嘘も、すぐに分かってしまう。
最初は周囲の反応は良いかもしれない。
一種の特技として見られて、皆凄い凄いと言う。
けれど、翌年、更に翌年となると、周囲の反応は徐々に変わっていく。
『嘘を付いても反応が薄くてつまらない。』
『子供らしくない。』
『可愛げがない。』
そう、周囲の人間から勝手に肩を竦められ、失望されるのだ。
正直言って、ふざけんなって話である。
勝手に自分から私に対して嘘をついて、それを見破られたからってなんだその反応は。
嘘だって察してしまうんだから反応も悪くなるのは仕方ないだろう。
反応がつまらないなら私をターゲットにするな。他を当たれ。
あと、親が実の子供に対して可愛げがないって言うのは本当どうかと思う。
反応が薄かったからって理不尽に失望され、最悪キレられる。
普通の日だったら嘘をついた者以外の人間は嘘をついた人間を怒る。
しかし、エイプリルフールの日だけは何故か嘘を見破った私の方が怒られるのだ。
理不尽過ぎる。
小学校低学年にしてそのような理不尽に見舞われた私は、こう考えた。
「じゃあ、今度は私が嘘をつく側に回ってみるのはどうだろうか?」
嘘をつかれて反応が薄いと言われたのなら、嘘を付く側に回ればそれは起きない。
そのことに気が付いた子供の私は、翌年それを実行した。
ところがどっこい、私は翌年説教されることになった。
何故か?
『小森、お前…いくらエイプリルフールとはいえ此処まで大事にするなんて、流石に駄目だぞ?』
『小森さん、あれ嘘だったの…?酷いよ…。』
『解せぬ。』
私の嘘を真に受けた人たちが続出し、学校全体を巻き込む大事になってしまったからだ。
私は元々無愛想で、嘘が表情に出る事がない。
その上で、嘘が真実であるかのように見せかけるため、ちょっと真実を混ぜてみたりした。
その結果、私が正午にネタバラシをするまで誰も私の嘘を見破る事はなかったのだ。
それどころか、私の嘘を聞いた人からどんどん私の嘘が他の生徒に広まり、学校全体を巻き込んでしまったのだ。
因みに私がついた嘘というのは、
『校長先生が日頃のストレスでハゲてしまったらしい。今はヅラでそれを隠している』
というものだった。
前半の校長先生がストレスでハゲてしまったというのが嘘で、後半の「校長先生がヅラを付けている」というのは本当である。
元々校長先生はヅラを付けていて、偶々校長先生がヅラを脱いでいるのを私は目撃して知ったのだ。
この嘘が学校中に広まった結果、先生も生徒もその日は校長先生に対して哀れみの視線を送り、校長先生にストレスを与えないように気を遣って動いた。
生徒達は頭に関する話題を出来るだけ避け、先生たちは率先して校長先生の手伝いを行ったらしい。
校長先生はしきりに頭の話題を避けようとする生徒達の様子に首を傾げながらも、親切な先生の様子に喜ばしげだった。
そして、正午になって私がネタバラシをすれば、先生も生徒たちも私に対して猛烈に怒ってきたのだ。
『お前の嘘は分かりにくいから本当止めてくれ』
『無駄に気を使ってしまった。』
『言っていい嘘と悪い嘘があるだろ』
いや、理不尽にも程がある。
嘘を付くのは良くないから止めてくれならまだ分かるけど、分かりにくいから止めろってどういう説教だ。
私はエイプリルフール一週間前に校長先生に悪戯をする問題児がいたから親切にするよう彼らにだけ嘘をついたのだ。
それを横で聞いて勝手に広めたのは先生だろうが。
少なくとも周囲を悲しませる嘘やぬか喜びさせる嘘よりは十分良い嘘だわ。
嘘をつかれて反応しても不満を言われ、嘘をついても不満を言われる。
嘘をつかれるのも、嘘を付くのも駄目。
もうどうすれば良いんだ。
エイプリルフールの楽しみ要素が両方とも消えたぞ。
理不尽過ぎる。理不尽にも程がある。
中には「もっと子供らしい、可愛げのある嘘をつきなさい」という大人もいたけれど、可愛げのある嘘って何?子供らしい嘘って何?
子供が嘘付いてるんだから十分子供らしい嘘だろうに。
嘘なんて、可愛げもなにもないだろうに。
じゃあもういっそ、エイプリルフールなんて無視して普通に一日を過ごそうとすれば、皆「つまんない」「もっと反応しろよ」とブーイングの嵐。
中学になってからは人との関わり合いを最低限にしか持たないようになったため、エイプリルフールで文句を言われる事は少なくなったが、それでも近くにいた一軍勢が私をからかおうと嘘を付いてきたりするのだ。
流石の私も腹が立つ。
こういう事が毎年毎年行われるため、私の中でエイプリルフールは最も嫌いな日に設定されてしまったのだ。
エイプリルフールの日になれば私は完全に周囲の声をシャットアウトし、学校から帰ったらさっさと夕食を食べて部屋に閉じこもる。
父の嘘やジョークも完全に無視だ。
この日はオンラインゲームだってしない。だってゲーム内でもそういった事しているだろうし。
けどまさか、ダンジョンの中でもエイプリルフールが流行ってしまうとは思わなかった。
この世界より遥か上位の人間の誰かの陰謀を感じる。
まあ、イグニ達にはエイプリルフールは年に一日だけと言ってあるし、きっと明日にはエイプリルフールのブームは収まるだろう。
マイホームに引きこもりたい。
「アイネス**。」
そっと明後日の方向を見て黄昏れていると、フォレスから声を掛けられた。
ふと彼の方を見てみると、彼は自分の手を私に差し出した。
「アイネス**、テ、ニギル。」
「手?こうですか?」
私がフォレスに差し出された手を握ると、フォレスはその手を覆いかぶせるようにもう片方の手で覆った。
すると、私とフォレスの手から光が漏れ始める。
フォレスが手を離せば、私の手から光の花が溢れ出すように現れたのだ。
光の花はとても幻想的に、私の周辺に咲き誇っている。
これには私も、目を丸くして感動してしまった。
「おおお、なんですこれ?」
「マボロシ、ハナ。ヒカリ、マホウ、オウヨウ。」
「へぇ…光魔法の応用なんですかこれ…。凄い綺麗ですね。」
「アイネス**、コトバ、ワカル、ナイ。デモ、コレ、ナラ、ワカル。」
「分かる?」
「『エイプリルフール』。」
私はフォレスの言葉の意味が分からなくて一瞬理解出来なかったが、私の周囲にヒラヒラと落ちる光の花びらを見て理解する。
幻や幻想も一種の嘘。
しかも、目に見える嘘だ。
フォレスは私の黄昏れる様子を見て、自分だけ参加できない事に落ち込んでいると勘違いしたらしい。
だから私を喜ばせようと、光魔法を応用して存在しない幻の花を生み出し、私に見せたのだ。
流石はイケメン。女性に付く嘘もとても幻想的でロマンチックだ。
「フォレス**、アイネス***、********!」
「あ、マリアさん。」
「*******!*********!」
そこで、マリアが此方に近づいてきた。
マリアは私とフォレスが二人でエイプリルフールを満喫しているのを見て不満に思ったのか、頬を膨らませプンプンと怒っている。
「ああ、すみません。フォレスさんの魔法がとっても綺麗で…」
「アイネス***、アタシ、モ、デキル!ミテテ!」
マリアはそう言うと、手のひらをギュッと握りしめた後、その手を大きく開いて<幻惑魔法>を発動した。
マリアの手のひらから光と水が現れ、私達の周辺でキラキラと幻想的な光景を創り出していく。
「光のシャワーに、水で出来た魚…。とっても綺麗ですね。」
「デショ!スゴイ、デショ?アタシ、ノ、エイプリルフール!」
「ええ、本当に。」
流石、幻惑魔法のプロであるマリア。
とても繊細で、夢のような幻想を見せてくれる。
ちょっとエイプリルフールの使い方が違うけど、とても美しくて素敵な“嘘”だ。
エイプリルフールなんて大嫌いだ。
嘘をつかれて反応が薄いと文句を言われるのも嫌だし、嘘をついて楽しくないと文句を言われるのも嫌だ。
エイプリルフールなんて、この世になかったら良いのにって思う。
だけど、
「アイネス***、モ、エイプリルフール、シヨ!」
「アイネス**、ナニ、ヤル?」
「……簡単な手品ぐらいしか出来ませんが、それでいいですか?」
「ウン!!」
「ハイ。」
こういった嘘だったら、別に嫌いじゃない。
「アイネス***、ナンデ、カード、ワカル?!ナンデ?!ナンデ?!」
「内緒です。」
「アイネス**、マホウ、ツカエル…?」
「魔法は使えませんよ。勘違いです~。」
「モウ、イッカイ!モウ、イッカイ、ミタイ!」
「そう言ってもう8回目ですよ。もうネタバラシして良いですか?」
「「ダメ!!」」
「はいはい…。」
前言撤回。こういった嘘もほどほどが良いです。




