お、大人びてるな~~!!
「はい、スケルトンさん達、一緒に工事頑張りましょう。」
「「「「「カタカタカタ…!」」」」」
タケル青年とのダンジョン戦争で得たDPはかなりの額だった。
流石は魔物を百体以上も抱え込むだけあったのか、彼から回収したDPは8割でも私が所持していたDPの何倍もあった。
ミルフィーさんから支給された準備用のDPも最初にかなりの量を渡されていたから半分くらい残っている。
つまり何が言いたいのか?
ダンジョンの大型アップデートを行う事が出来ると言いたいのだ。
私のダンジョンは物語型アトラクションのダンジョン。
定期的にダンジョンのアップデートをしないと冒険者たちに飽きられてしまう。
こういう風に大量のDPがある時にアップデートをしてしまうのだ。
ぶっちゃけタケル青年が魔物達をこき使って稼いだDPなんてそのままにしたくない。
動物虐待…じゃなくてコボルト虐待していた人が稼いだDPなんてさっさと使ってしまうに限る。
ダンジョン戦争で使用した3つの扉のルートが一緒になっているのはそのまま冒険者向けに使ってしまうとして、また新しいルートを作成してしまおうか。
紫の扉が鏡の迷宮だったから、今度は単独でも出来るアスレチックにしよう。
黃の扉の舞台が崖だったから、新しいのでは舞台を水辺にするのは良いかもしれない。
新しいルートの物語や辻褄合わせはいつも通りケルトに頼もう。
別にアップデートするのは冒険者たちが挑戦する扉だけではない。
居住スペースもだ。
倍以上の魔物達がこのダンジョンに来たから、今まで出来なかった営業時間内での交代や、一日休みを与える事も可能だ。
ベリアル達は今までのカツカツのダンジョン経営に関して特に文句を言って来なかったけど、毎日労働なんていつか文句が出るだろうと思っていたから本当に良かった。
非番の魔物がいるのなら、もっと居住スペースの施設を増やした方が良いだろう。
レジェンドウルブスが演奏の練習するためのスタジオは勿論、タンザさんが本を読むのであれば図書室もあってもいいだろう。
人数も増えたから食堂も拡張しなくては行けないし、新入り達の部屋も用意しなくては行けない。
そういえば、シルキーズから夜中のつまみ食いが酷いって相談された事があったな。
夜食用の食べ物が入った冷蔵庫か何かを用意した方が良いかもしれない。
そういえばイグニやアーシラが食堂とは別にお酒を飲めるスペースが欲しいと言っていた。
いっそのことバーを作ってしまう方が良いのかもしれない。
「スケさん、ケールさん、この本棚は図書館スペースに設置してください。ルートンさんとスルトさんはスタジオの防音性のチェックと楽器の運び出しをお願いします。私はクッションと机を運んじゃいますので。」
「カタカタ…」
そういう訳で、スケルトン数名と私で工事の真っ只中です。
面接中にスケルトン達が魔物達の寝る場所とかは殆どしてくれたのだが、私が居住スペースの新設備について話すと、新しい設備に興味を示したスケルトン達が早めに完成させようとすぐに施設作りに動いてくれたのだ。
今日だけでも結構働いたというのにこれ以上仕事をしたがるなんて、社畜にも程がある。
私は流石に今日これ以上仕事をさせるのは…と後日に遅らせようとしたのだけど、スケルトン達が冷静に筆談でこう伝えてきたのだ
『ふだん の しごと と けんしゅう で あいねす じかん なくなる。しせつ つくる とりかかる かなり おくれる』
「全くもってその通りです。」
図書館に置くための家具や本、楽器は全部私の<ネットショッピング>で注文しなきゃいけないし、そもそも空間作れるのは<カスタム>を使える私だけだから私がいないと施設づくりに取りかかれない。
私の時間が空いている時にやらないと施設づくりがかなり後のばしになるからね。
そこら辺をよく分かっていらっしゃる。
そういう訳で新入り達の<契約>を終わらせた私は、スケルトンと一緒に新しい施設作りに取り掛かっていた。
ベリアル達も手伝ってくれようとしたのだが、それは断った。
ベリアル達には新入り魔物達の方を見ておいて欲しかったし、研修を行う前に仲を深めてほしかったからだ。
彼らは今、運動場でバドミントンやバレーをしながら交流会をしている。
さっきチラっと運動場の様子を見に行ったら、レジェンドウルブスが必死の表情でベリアルとイグニ相手にバスケしてた。何があった。
スケルトン達が頑張ってくれたお蔭で食堂の拡張、スタジオとバーと図書室の新設が無事に完了した。
本当スケルトン達の仕事ぶりには助かってばかりだ。
そうして、あとは新設した施設にお酒や小物、そして本を置いていくだけとなった。
「後は細かな物を置いていくだけですね。私は図書室で本棚に本を並べるんで、スケルトンさん達はバーにお酒を置いていってください。それが終わったら運動場に行ってもらって構いません。」
「カタカタ…」
「えっと…私の方を手伝わなくて良いのか?ですね。大丈夫ですよ、それに本のジャンル分けとかは字が分かる私の方が適任ですので。じゃあ、お願いします。」
「「「「カタカタ…!」」」」
私がそう指示を出せば、スケルトン達はすぐに私が出したお酒の山と小物類を持って持ち場へ向かっていった。
私は<ネットショッピング>で注文する本の選別を行う。
「子供のコボルトがいるから絵本は全部購入して、ラノベとか漫画本も購入。『武器図鑑』…はパス、テオドールさんとか外から来訪者が来た時に見られたら危ない。同人誌は………保留で。少なくとも図書室に置くのは却下。」
外に公開しても問題なさそうな本を選んでいき、注文ボタンを押して大量購入する。
すると、私の目の前に大量のダンボールが積まれた。
中を開けてみると、そこには何十冊もの本が入っている。
「これは一苦労掛かりそうだなぁ…。」
大きなため息をついて、私は本のジャンル分けに掛かる。
絵本のような子供向けの本は低めの段に積まなければいけなくて、並び順もあいうえお順で置かなければ探しづらいだろう。
これはスケルトン達に手伝ってもらった方が良かっただろうか…?
だけどスケルトン達はまだ平仮名しか読む事は出来ないから本の整頓は難しいだろう。
いっそ、マリアかイグニを呼んで手伝って貰おうか…。
そう思っていたその時、箱の山の向こうから誰かの話し声が聞こえてきた。
「*****、*******!」
「*******~!」
「***、************。」
私が手に持っていた本を置いて、声の聞こえる方へと近づいて覗き込んだ。
すると、そこにいたのは3人の子供コボルト達だった。
犬種はそれぞれ柴犬、コリー、パピヨンで、名前は『ウーノ』、『ツヴァイ』、『トリー』だ。
彼らは一つの箱から仕掛け絵本を取り出し、絵本の仕掛けを楽しんでいる。
「ウーノくん、ツヴァイくん、トリーちゃん?どうしたんです、こんな所で」
「*、アイネス*****!」
「***、*******!」
「*******…。」
三人に声を掛けると、子供コボルト三人組は悪戯が見つかったかのような表情で此方を見てびっくりしていた。
私はホワイトボードを手に取り、彼らとの会話を試みる。
「三人とも、運動場にいたのでは?何かありました?」
「*********?」
「**、********************。」
「*****、**************。」
「えっと、これは…お出かけ…いや探検ですかね?バレーやバドミントンは飽きてしまったんですか?」
「バレー*バドミントン*******!」
「**、*************…」
「****************。*、ウーノ*******************。」
「大人たちがコートを全部使ってしまっていて、待つのに飽きたウーノくんが探検しようと言い出した…って訳ですか。ベリアルさんとイグニさんは?」
「***バドミントン***!」
「あ、察しました」
どうやら大人達が彼ら以上にスポーツにハマってしまい、全部のコートを使ってしまったようだ。
その中にはベリアルとイグニもいるらしい。
きっと、またいつもの喧嘩が始まってスポーツ対決を始めたのだろう。
大人達が子供より楽しんでどうするんだ。
「アイネス*************?」
「私が何をしているか、ですか?図書室を使えるようにするための作業をしていたんですよ。本のジャンル分けをして、あそこの本棚に並べていくんです。」
「****、************。」
「***~」
「流石子供…、絵から情報を得るのが大人より早い。」
私が少しイラストを描いて指差しするだけで子供コボルト三人組は理解したのか、各々の反応を見せる。
もう今日は<オペレーター>の通訳を頼れないから、察しが良くて助かる。
「そうだ、丁度いいのでこの画面から三人が気になる本を教えてくれませんか?参考までに此方の小さい子達がどんな本を読みたがるか知りたいので。」
「****?」
「これで本を出すんですよ。こんな感じに。」
私が実際に本を選んで注文すると私と子供コボルト三人組の目の前に箱が現れた。
驚く三人の目の前で箱を開け、注文した本を取り出して彼らに見せる。
子供コボルト三人組は興味津々に私のスキルで出された本を見ている。
「これで気になった表紙の本を選んでみてください。一人一冊プレゼントしますよ。」
「*************!」
「****~。」
「ここを押せば、気になった本をカートに入れられます。一応、私の国の言語で書かれた本なので、そこは気をつけてください。決まったら声掛けてくださいね。」
三人がくっついて<ネットショッピング>の画面に表示された本を吟味する。
一応、R指定のものは除外設定にしたし、変な物は選ばないだろう。
そうして数分後、子供コボルト三人組から声を掛けられたので振り返り、彼らが選んだ本を注文した。
彼らはすぐに箱を開けて、各々の本を手にとった。
私は手にとった本のタイトルを確認してみた。
「ウーノくんは某仮面戦隊のテレビ絵本にトリーちゃんはファッション誌…もうファッションに興味のある年頃かぁ…。ツヴァイくんは……えっ」
私はツヴァイが手にとっている本を見て、ギョッとする。
ツヴァイが選んだ本は実用書…しかも軍事学の事が纏められた本だったのだ。
まさかの選択に、私は思わず幻影魔法を疑った。
しかし、いくら目を凝らしてもそれは本物である。
「…本当にそれが気になったんですか?」
「**。」
「な、なら別に良いですけど…、外の人に見せちゃ駄目ですよ?」
「****。」
私がツヴァイにそう告げると、ツヴァイはクールに頷いた。
お、大人びている…。
普通文字が一杯書かれた本だったら表紙の文字が気になったんだろうと分かるけど、彼の持っている軍事学の本はタイトルが一つ書かれたシンプルな表紙だ。
元からダンジョンにいる仲間達の中で読み書きが得意なイグニやマリアだってまだ漫画やラノベの粋だというのに、このコボルト、凄い大人びている。
これでもし、中身が何であるか分かった上で選んだのだったらこの子は将来大物になる。
滅茶苦茶大人びている。
「****************?」
「え、手伝ってくれるんですか?いやでも、本棚に並べるのは背が届かないでしょうし、そもそも言葉が…。」
「*****************。******、********?」
「ひょ、表紙のイラストだけで的確に本のジャンル分けをしている…だと…?!」
なんてこった。まさか彼らのイラスト理解力がこれほどまで高いとは思わなかった。
しかもジャンル分けの速度が早い。
将来が期待できそうだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて手伝って貰いましょうか。」
「***!」
「****!」
「トリー***********。ウーノ****。******アイネス**********。」
「し、仕事はやい…」
私が彼らに手伝いを頼むと、彼らはそれぞれ別の場所から箱を開けて、本をジャンル分けしていく。
文字だけのシンプルな表紙のものは、私の前に置いていくという徹底ぶりだ。
彼ら三人の手伝いのお陰で、本のジャンル分けはたったの20分で終わってしまった。
それぞれのジャンルに分かれて積まれた本の山に、驚きを隠せない。
あとはあいうえお順に並べた状態で本棚に置いていけば終了である。
流石にこれは文字が分からなければいけないので、彼らにはひらがな表を渡して絵本だけ手伝ってもらう。
最初の文字と同じ形のものをひらがな表で確認してもらい、本をあいうえお順に並べた後、本の下部分に番号の書かれたシールを張って絵本の棚に入れてもらうのだ。
これで次に誰かがしまう時、どの棚にどう並べれば良いか分かる。
彼らはすぐにこのやり方を理解したようで、着々と絵本にシールを張って本棚に並べていく。
絵本を除いても本は結構な量がある。
別に今日中に施設が開放出来る状態にしなくてはならない訳じゃないし、最悪明日に持ち越ししても全く問題ない。
せめて、誰かシールを張って本に並べるのを手伝ってくれる人がいれば此方もやりやすいんだけどね…。
ガサゴソ…
「ん?」
その時、またも本の山から物音が聞こえてきた。
私は子供コボルト三人組と顔を見合わせた後、恐る恐る物音の聞こえた方を確認する。
すると、そこには黙々と本の整理整頓をしているレジェンドウルブスのファインがいた。
彼の横に積まれた本は、一ミリのズレもなく、綺麗に積まれている。
…並び方は本の丈順だけど。
「…ファインさん、お疲れさまです。」
「!!!」
「とっても几帳面なんですね。」
私が声を掛ければ、ファインは物凄い驚いた様子で此方を見る。
ファインは慌てて手に持っていた本を近くの本の山に置き、ぴしっと背筋を伸ばして目の前に立つ。
「もうバスケは良いんですか?」
「*、**。」
「ファイン*************?」
「********…。*****************、**…。」
「えっと…。お手洗いから帰る途中でここを見つけたんですね。」
「ファイン******************!」
トリーが何かを言うと、ファインは何かバツが悪そうな顔で顔を俯いている。
表情筋は殆ど動いていないが、へにょりと力なく降りた耳と尻尾で丸わかりだ。
もしかして、几帳面な性格をあまり人に知られたくないのだろうか?
さっきからチラチラと乱雑に置かれた本の山を見てウズウズとしている様子なのに、何かを耐えるようにしている。
きっと、物のズレや雑に置かれた物を直したくてたまらないのだろう。
推測だが、ファインは元々物の配置やズレ、並び順の完璧さが凄く気になってしまうのだろう。
一ミリのズレも許せず、ちょっとでもズレた物を見つけると思わず直してしまう癖があるのだ。
だけどそれを、タケルか誰かに注意でもされてしまったのだろう。
「そんなに細かい事は気にするな!」とか、「一々面倒だなぁ」とか…。
見た所彼はあまり口数が多い方ではないし、それに反論することも出来なかったのだ。
だから、人前ではそれを見せないように心掛けているのだろう。
私はファインが気になっているらしい本の山に近づくと、それを出来るだけ綺麗に積み直した。
綺麗に積み直す私を見て、驚いた表情を浮かべるファインに対し、私は親指を立てて言った。
「それも、一種の個性ですから。」
彼は私の言っている事など微塵も分からないだろうけど、私がその几帳面さを否定していないということを分かればそれでいい。
実際彼もそれを分かってくれたようで、少し身体の力が抜けた。
「ファイン***、***********?**アイネス**************。」
「*****、*****************!」
「ファイン************!」
子供コボルト三人組はどうやら私の仕事の手伝いに誘っているのか、ファインの手を引いて色々会話をしている。
どうやら、やり方を教えているようだ。
ファインはどうすれば良いのか分からず、思わず私の方を見て伺う。
「ファインさん、手伝ってくれませんか?」
「!…**。」
相変わらず表情は動かないけれど、その尻尾は先程と違って嬉しそうに振られている。
そうして、私は子供コボルト三人組だけでなく、ファインの手も借りる事になった。
ファインにはシールを貼って本棚に並べる仕事を任せた。
彼は子供コボルト三人組に比べてスピードは遅いものの、丁寧に、綺麗に仕事をしてくれる。
彼が手伝ってくれるおかげで、私は本をあいうえお順に並べる作業に集中することが出来た。
そうして、私達は無事に図書室の本棚に全ての本を置くことが出来た。
これで今日からでも使う事は可能だ。
「********!」
「***********。」
「*****!」
「…」
私を手伝ってくれた4人は、全員図書室の完成を喜んでいる。
今日中に準備が終えられたのは、彼らのお陰だ。
私は<ネットショッピング>を使い、ある物を探し、すぐにそれを注文する。
「ウーノくん、ツヴァイくん、トリーちゃん、ファインさん、こっちこっち。」
「「「「?」」」」
私は4人を手招きして、一つの机の前に座らせる。
彼らが椅子に座ったのを見ると、私は先程注文した物を机の上に置いた。
「**!*****!」
「****!」
「開放したら此処は飲食禁止になっちゃいますけど、今日だけは特別にね。」
私が机に置いたのは、生クリームとフルーツが沢山乗ったケーキだ。
犬でも食べる事が出来る、安心安全のペット用ケーキである。
まだコボルト達がチョコを食べられるかとか調べてないので人間用のケーキは渡せないけど、これならきっと大丈夫だろう。
4人の前にケーキとフォークを置き、私は自分用に買ったケーキを彼らの前で食べてみせる。
すると、すぐに目の前の物が食べ物であると分かったコボルト達が私と同じようにフォークを使い、ケーキを口にする。
すると、目をキラキラと輝かせ、尻尾を振ってみせる。
「*****!」
「***、******!」
「***…、***********…。」
「気に入ったようで何よりです。」
美味しそうにケーキをパクパクと食べていく子供コボルト三人組の姿を見ていると、やはり彼らも子供なんだなぁと思う。
私はジーッとケーキを眺めて食べようとしないファインに、声を掛けた。
「ファインさんも食べて大丈夫ですよ。仕事を手伝ってもらったお礼ですので」
私がそっと促せば、ファインは私とチラッと見た後、ケーキを一口食べた。
すると、その無表情な顔では抑えられない程の喜びのオーラが彼から溢れ出す。
甘い物は大好物だったようだ。
本来なら、図書室で飲食物を食べたら司書に怒られてしまうだろう。
けれど今私達がいるのは開放前の図書室で、注意をする司書もいない。
新しい魔物と新しい施設。
たまにはこうやって誰かと一緒にいるのも、悪くはない。




