顔に出なくても感情が分かる時はある。
チャラいけど天才級の才能を持つグレーターワーウルフのレジェンドウルブス、知識の豹なブラックデーモンパンサーのタンザ、イケおじエルダードワーフのマサムネ、腐海の住民ウィッチのライアン、レイラ、ルーナ、ロゼッタ。
此処まで4つの種族の魔物(1名亜人?)と<契約>を結んだけど、皆キャラが全員濃い。
しかもほぼ全員会話が可能な上に、顔面偏差値が高い。
この世界、顔面偏差値の平均高すぎやしないだろうか?
ネットとか映画に出てくる外人は皆顔が良いけど、ベリアルといいイグニといいフォレスといい、皆揃いも揃って美男美女じゃん。
レジェンドウルブスとかブラックデーモンパンサーとかは顔が獣だから正確には顔がいいのか分からないけど、多分かなりのイケメンさんだと思う。
しかも全員何かしら秀でている分野がある天才という。
あれか?私をこの世界に捨てた創造神の力でこの世界の住民皆顔面偏差値カンストの天才になるように設定でもされているのか?
もしそうなら私はあのクソ女神に蹴りを入れなければいけない。
今はゴブ郎がついててくれててベリアル達の目があるから大丈夫だけど、そろそろ奇声を上げたいです。
思いっきり『チェンジ!』って叫びたいです。
特にテンプレって訳じゃないけどさ、ここまで美男美女が目の前に現れると誰でもそういう気持ちにならないだろうか?
美男美女が放ってる目が潰れる勢いの眩しい光やチャラ男とか陽キャの放つ周囲一帯浄化させるオーラはもう本当にキツい。
いい加減、もっと目に優しい方が来て欲しいです。
なんというかこう、会話は出来ても良いからせめて人型取ってなくてスライムとかウルフみたいに愛らしい感じのフォルムの魔物の新入りさんが一人くらいは来て欲しいです。
そんな事を考えていると、ゴブ郎がまた次の面接者を連れてきてくれた。
開いた扉の先に立っていた魔物に、私は目を大きく見開いて驚愕した。
『次の面接者さん、種族名をどうぞ。』
『みゃー達はケット・アドマー。ちみゃたじゃ魔猫と呼ばれる魔物だにゃ。』
『ケット・アドマーとは、これは随分と珍しい魔物がやって来ましたね。』
『イグニレウスってにゃ前のドラゴンに、此処のご飯はとっても美味いって聞いたから此方にやって来たにゃ。』
『確かに此処のダンジョンの食事は王宮料理にも勝りますからね。』
ピコピコと動く耳にくねくねと揺れる尻尾。
触り心地の良さそうな体毛に全体的に丸みを帯びたフォルム。
宝石のように輝く瞳に何をされてもつい許してしまいそうな愛らしい顔。
そう、地球でお馴染みの猫の姿そのものだった。
それも、アメショ、シャム、チンチラ、マンチカンなどなど…様々な種類の猫が8匹もいる。
私の知っている猫よりも少し大きめの彼らは4つ足で上品に歩くと、軽やかに椅子の上に着地して私達と対面し、ベリアル達と会話をしている。
好きに喋る彼らの声は愛らしい姿とは裏腹に、とても美声だ。
アニメ声にイケボ、ハスキーにバリトンなど、彼らだけで一本のアニメの声優が出来てしまいそうだ。
『ケット・アドマーは獣型の魔物の中でも知性が高く、魔法に長けた魔物です。戦闘能力も高いですし、此方のダンジョンに迎え入れるのは申し分ないでしょう』
『アイネスさん、如何なさいましょ……ってうわっ!』
フォレスとベリアルが私に話を振ろうと此方を向いたその瞬間、彼らは驚愕の表情で私を見た。
『アイネス様がこの上ないぐらい喜びに満ちあふれている?!』
『此処まで喜んでいるアイネスさんは初めてみました……!』
「ぎゃうー…!」
『あの顔でにゃ?!全然表情が全く動いてないのににゃ!?』
「アメショ…マンチカン…猫…!」
私はコミュ障だ。それに嘘はない。
しかし、それは人型の会話可能な生物限定である。
ゴブ郎と、猫とか犬とか動物に関してはコミュ障の発動範囲内ではない。
むしろ私は、母の動物好きに遺伝してか動物は大体好きなのだ。
犬とか猫とか、そんなのは関係ない。動物は全てウェルカムなのである。
ダンジョン経営ではそういった私情で獣型魔物を大量召喚するのは良くないと考え、召喚した獣型魔物はウルフだけだった。
勿論ウルフ達も可愛い。
あのフカフカとした毛並みに手を置いたりすると本当日頃の疲れが癒やされる。
スライムもスライムで、あのツルッとした触り心地は気持ちいい。
けど、突然中型犬くらいの大きさの猫達が目の前に沢山現れたらケモナーの皆さんはどう感じるだろうか?
全員が全員ではないだろうけれど、十中八九喜びで発狂する。
中には黄色い悲鳴を上げて抱きつく方もいるんじゃないだろうか?
私も目が合った瞬間抱きつきに掛かる程ではないにしろ、それはもう感激した。
最近は忙しさでウルフ達と戯れる事がなかったし、ダンジョン戦争でグロ映像を見てしまった時の心労とか今までの新入りメンツが大体人型でキャラが濃かった事で溜まっていたツッコミが一瞬で浄化されるくらいには喜んだ。
他の新入りの皆さんを歓迎していない訳ではないが、それ(歓迎の意志)とこれ(猫に会えた事の喜び)とは別物なんです。
取り敢えず、彼らを引き抜いたイグニにはお礼としてデザートのプリンにフルーツを多めに盛り付けよう。
グッジョブ、イグニ。
そしてようこそ、お猫様。
十分に喜びに浸った後、私は困惑する彼らに私が猫や犬が好きである事を説明。
私が動物好きな事を聞いたケット・アドマーのリーダー格らしいアメリカンショートヘアの子が、「良かったら撫でるにゃ?」と提案をしてくれた為、気の済むままに撫でさせてもらった。
そしてその後は二つ返事で<契約>を結んだのだった。
***** *****
『まさかアイネス様が獣型の魔物が好きだったとは知りませんでした。』
『良かったですね、アイネスさん。』
「とっても満足しました。」
ケット・アドマー達が会議室を出ていって次の面接者を待つ間、私はベリアル達と雑談をしていた。
フォレスの孫娘でも見るような温かい視線がすごい気になる。
いや、猫カフェ並にあんなに猫さんがいたら喜びもしますよ。
事前に聞いていた話だと、今回新入りとして迎え入れる魔物の種族の数は6種族。
5種族がこの面接を受けたから、残すはベリアルが引き抜いた1種族のみになる。
私は面接直前までイグニ達に後処理の役割分担を伝えていた為、本当にチラっとしか新入り達を見ていない。
ただ、ちらっと沢山の耳と尻尾が見えたので、何か獣の属性が入った魔物である事は間違いない。
そう考えていると、ベリアルはクスリと笑って私に言った。
『しかし良かった。アイネス様が獣をお好みなのでしたらきっと彼らは大変気にいる事でしょう。』
「え?」
「ぎゃうぎゃうー!」
ベリアルの言葉が気になって尋ねようとしたその時、ゴブ郎が最後の面接者を連れてきた。
ゴブ郎の後ろから現れたのは、服を身に纏ったセントバーナードとチワワとドーベルマンだった。
2足歩行で歩く3匹の犬達は会議室に入ると、此方にお辞儀をした。
『ダンジョンマスター殿、初めまして。我々はコボルト族の者でございます。この度はベリアル殿からのお誘いを受けました。何分我らは数が多いため、代表者として我々3匹がやってまいりました。』
『お待ちしておりました。どうぞお掛けになってください。』
『あ、ありがとうございます!では、お言葉に甘えて。』
平身低頭の状態で腰を掛け、此方の様子を伺う犬…もといコボルトの代表者達。
彼らは2足歩行であるものの、ケット・アドマー達のように見た目は元の世界にいた犬と殆ど変わりない。
私は彼らをじっと見た後、一つため息をこぼした。
なるほど、コボルトか。
確かにRPGゲームやファンタジーゲームでは良くある魔物だ。
見た所会話も成り立っているし、最低限のマナーが出来ている所を見ると知性がそこそこ高いようだ。
考えるに、グレーターワーウルフとウルフ達の中間で派生種族と言った所だろうか?
二本足で歩いているけれど、元いた世界の犬とまるで一緒だ。
背中に弓矢を背負っている者がいるけど、あの肉球で一体どうやって矢を打つのだろうか?
ベリアルは私が動物を見たらさっきのように無愛想な顔からは隠しきれないぐらい喜びを溢れさせると思っているのだろうけど、それは大きな間違いだ。
さっきはモフモフに飢えていた状態で疲れ切っていたためつい喜びが出てきてしまったけれど、今の私は先程思う存分ケット・アドマーを撫でさせてもらったお蔭でモフモフへの欲求は満たされている状態。
さっきとは状況が全然違うのだ。
犬?うんうん、可愛いよ?
けど、犬系の魔物なら既に犬科であるウルフ達がいる。
彼らもキリッとした顔つきの中に愛らしさが見えるけど、やはり長いこと一緒にいるウルフ達の方が可愛く感じる。
毎日のブラッシングで毛並みがつやつやなウルフ達に対し、コボルト達は毛並みもどこか悪いし、若干ドーベルマンが此方を凄い睨んでいる気がする。
だからどちらの方が可愛いかと言われたら、私はウルフ達を答えとして上げるだろう。
まだまだ甘いね、ベリアル。
そこまで考えた後、私は静かにベリアルの方に向いて、彼に手を合わせると、彼に伝えた。
「最オブ高、最高です。ベリアルさん、グッジョブです。」
『お気に召したようで何よりです。』
『アイネスさん、とても喜んでいますね』
これはもう、手を合わせるしかないよね。
ウルフ達の方が可愛いとは思うけど、モフモフが増える事に関しては至って大歓迎だ。ワンコ万歳。
言葉が喋れるのだって異世界言語スキルがなくて会話が通じない私には関係ないし、洋服を着ているのも最早彼らの魅力上げる一部でしかない。
簡単に言ってしまえば、超大歓迎です。
『あ、あの…何があったのでしょうか?』
『なんでもありません。アイネス様は貴方方を歓迎しているとお伝えになっただけです。』
『そ、そうでございますか…。』
非常にご満悦のベリアルが戸惑うセントバーナードのコボルトにそう言うと、セントバーナードはほっと安堵の息をついた。
気を取り直してコボルト達の方を向くと、コボルト達は背筋を伸ばして私の方を向いた。
……若干一名、他2匹とは違った意味で私を見ているようだけど。
『では、スキル以外で何か出来る事を教えて下さい。』
『出来る事ですか…。我々はダンジョンの中で農作業をさせられていたので、農作業でしたらなんとか。』
『何か他とは違ったスキルを持つ者はいらっしゃいますか?』
『私の横にいる者達と、もう二人が変わったスキルを生まれつき持っております。ただ、戦闘や生産には役に立たないスキルでして…。』
『分かりました。その方達は後日、スキルの効果を実際に拝見させてもらいます。次に住処についてですが、希望であればそれぞれ個人の部屋を用意する事も、全員が寝泊まり出来る大きな部屋を用意する事も出来ます。此方のダンジョンで既にいるウルフは大部屋で寝泊まりをしていますが、どうされますか?』
『なんと、我々に部屋を用意してくれるのでございますか?!』
『スカウトの際でもお伝えしました通り、アイネス様のダンジョンでは魔物たちが皆充実して生活出来るよう、衣食住に力を入れています。内装や寝具も希望があれば此方で対応する事は可能です。』
『長さま、我々に部屋がつくそうでございますよ!それも寝具もつくそうでございます!』
『で、では、住処については他の者達から希望を聞いてすぐにご報告させていただきます。』
『分かりました。では今夜はケット・アドマー達と同じく、大部屋と全員分の寝具を用意しましょう。服も此方で新品の物を用意させていただきますので、それをお使いください。』
『な、なんとそこまで…。本当に有り難い限りです。』
全員分の部屋と服が用意される。
その事を聞いたセントバーナードとチワワは喜びで尻尾を振った。
部屋と服が支給される程度で喜ぶって、タケル青年どんな環境を強いてたんだ。
そう思っていると、フォレスがベリアルと交代してコボルト達に質問をする。
『次に食事についてお聞きしたいのですが、コボルトさん達は自身の種族の決まりなどで食事に制限はありますか?菜食主義といったものや、特性的に受け付けない食材などがあるのであれば、此方の料理係が対応します。』
『いえ、特にそういった物は全員ありません。皆、食べられる物ならなんでも食べてきたため…。』
『では食事に関しては大丈夫ですね。ウルフ達はアイネス様が用意した『どっぐふーど』という、ウルフのような魔物向けの食事を食しているのですが…、アイネスさん、彼らの食事はどうしましょうか?』
「食事に好みがないんでしたら、一度どちらも味見してもらって、自分たちでどちらを取るか選んでもらいましょうか。出来れば最初にドッグフードを試してくれる方がいらっしゃると有り難いです。」
『誰か、『どっぐふーど』という物の最初の試食をしてくれる方はいますか?』
『では自分がそれを受けたいと思うのでございます!自分、食べる事は大好きでございます故!』
「じゃあ、貴方にお願いしましょうか。」
『アイネス様が、貴方に頼むとのことです。』
『ありがとうございます!』
チワワがキラキラとつぶらな瞳で此方を見て尻尾を振る。
かなり食べる事が好きなのだろう。
こんなに食べる事が好きなら、ウルフやコボルトの食事を作るのを任せてみても良いかもしれない。
『では、<契約>をする前に何か質問はありますか?』
『いえ、これと言って特に…』
『一つ、聞きたい事がある。』
面接が終わろうとする中、今まで黙っていたドーベルマンのコボルトが声を上げた。
セントバーナードとチワワのコボルト達は驚いた様子で彼を見ている。
『何がお聞きしたいのでしょう。』
『事前にダンジョンマスターが人間だという話をこのアークデビルロードから聞いているが、それは本当か?』
「本当ですよ。私は人間です。」
ドーベルマンの質問に私は首を縦に振って肯定すると、ドーベルマンはより一層睨みを強くした。
彼は最早殺意の込もった目で私を睨みつけながら、私に告げた。
『ダンジョンマスター、俺はアンタが憎い。アンタを今すぐこの手で殺してしまいたいぐらい、アンタが憎い。』




