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最後に笑うのはきっと私とオレ

前半はアイネス視点、後半からパーリーウルフズのリーダー視点です!

ダンジョン戦争の決着はいかに…!

「…っ、駄目だ。もう我慢出来ない」


私は今も溢れ出しそうな感情に絶えきれなくなり、口元を抑えて蹲った。

そして、目から溢れ出しそうな涙を堪え、大きな声で叫んだ。


「めっちゃ臭い!! 本当に無理!!」


封の開いた容器…缶詰を出来るだけ自分から離し、私はその悪臭から逃れようと試みる。


「えっほ、予測はしてたけど想像以上に臭い…!!防臭マスクじゃなくてガスマスクでも付けるべきだったか…!スラっち、これの処理お願いします…!」


未だに悪臭のするガスが放たれている缶詰を噎せながらもスラっちに渡した。

これを最終兵器として使うことを決めた過去の自分の選択を後悔するけど、時既に遅し。

侮っていた……。

まさか、シュールストレミングが此処まで臭いとは思わなかった。


シュールストレミング。

前の世界で世界一臭い食べ物と認定されたニシンの塩漬け。

相手が何人で来たとしても対処できて血とか傷とかリアルグロ映像を生み出すことがなく、尚且私が扱える物となる最終兵器レベルのアイテムとなると、これしか思い浮かばなかった。

元の世界でも凄まじいと称されたその悪臭は、人狼であるパーリーウルフズにとってはまさに必殺アイテムと言うべきものだった。

臭くて不味い魔力回復ポーションを飲みまくって鼻が死んだ私が防臭マスクを付けても臭いのだ、嗅覚が人の何十倍にも鋭い彼ら相手なら即気絶も致し方ない。

なんだか普通に戦うよりもえげつない戦法になってしまった気がするが、戦闘能力皆無の私が一人で魔物を倒す方法はこの方法しかなかったのだ。

後でパーリーウルフズには何かお菓子でも渡そう。


「にしても、スライムって凄いですね…。この悪臭をものともしないんですから…。」


一緒に生活をしていて気づいたのだが、スライム達は悪臭や身体に害を与えるガスの類が一切効かない。

これを知ったのは以前私が納豆を食べようとした時のことだった。

どうもベリアル達魔物は匂いに敏感らしく、私が今後の献立に入れられるか試食を頼んでみた所、独特な匂いを放ち、ネバネバとした食感が特徴的な納豆はどうも駄目だったようで、全員初見で顔を強張らせなんとか一口試してみたものの8割が二口目以降を口にせずにギブアップした。

特に鼻の良いウルフ達なんかは匂いを嗅いだ瞬間に狼なのに顔をブルドッグみたくしわくちゃにさせ、イグニには「これは本当に食べ物なのか?」とそもそもの存在を疑われた。

ベリアルは完食を目指したけれどかなり具合悪そうに食べていたので私がストップ、フォレスは完食したものの、その匂いに少し顔を顰めていた。

食べ物に好き嫌いのないゴブ郎もお気に召さなかったようで、半分食べて後は残していた。

そんな中、スライム達だけは美味しそうに納豆を完食し、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねたのだ。

イグニ達が残した納豆も食していく彼らに、「匂いとか大丈夫なんですか?」と尋ねてみると、丸を描いて大丈夫だと教えてくれたのだ。

<オペレーター>にスライム達の生態について説明を聞いてみると、<オペレーター>はこんな説明をしてくれた。


『スライムは魔物の中で最も適応能力が高い魔物と呼ばれています。体内に入れた物はなんでも栄養として吸収する性質を持つため毒物を摂取した事による影響を受けず、更にスライムには嗅覚機能というものがないことから悪臭やガスによって状態異常を受ける事も皆無です。』


どうやら、スライム達は戦闘能力こそ低いものの、環境適応能力に関しては魔物の中でもトップレベルを誇るらしい。

どんな悪環境下でも生きる事が出来て、核が透明なジェルの膜に覆われているため、悪臭や毒ガスで苦しむ事はない。

だから彼らはイグニ達が嫌がった納豆の独特な匂いや食感など物ともせずに食すことが出来たし、このシュールストレミングのガスが充満した中でもマスクなしで変わらず行動が出来る。

元の世界でもRPGゲームとかでも大体何処のエリアでもスライムはいるぐらいありふれていると認識されているからね。

………いや、もしかして逆か?

ゲーム制作者の中でスライムはどこにでもいるという認識があったから、彼らの作ったRPGゲームでもその常識が反映されたとかだったりする?

そうなると過去のゲーム制作者に元異世界転移者いるのではないだろうか?

なんか地球の知られざる真実を知ってしまった気がする。


「あとは攻略部隊の皆がタケルさんのダンジョンのダンジョンコアに触れるまで、此処で大人しく待つしかないですね…。うぅ、早く出たい。」


悪臭の根源をスラっちが処理している最中とはいえ、換気しない限り部屋に充満した悪臭は消えない。

パーリーウルフズの数は今此処にいる三人を含めて5人。

他の二人がその前のゴール地点にいる事を考えると、更にこの部屋に二人追加でやってくる可能性があるから今換気するのは駄目だ。

このまま攻略部隊がタケルのダンジョンを攻略するまで待つしかない。

やっぱりガスマスクを用意しておけば良かったな…。


そんな事を思っていると、物音が聞こえた。

他の二人が来たのかとそちらを振り向いてみると、とんでもない事が起きていた。


「ちょっとちょっと…、嘘でしょう?」


なんと、先程最終兵器の悪臭によって意識を失ったはずの赤い体毛の人狼がふらつきながらも立ち上がろうとしているではないか。


「ガスを間近で受けながら、まだ気絶しないとか精神力凄すぎませんかね?私のとこのウルフは、納豆の匂いだけでも気絶する子いたんですけど…。」


軽口を叩きつつも、私は心底焦っていた。

鼻の良いグレーターワーウルフだったらシュールストレミングですぐに全員気絶して終わるだろうと考えていた。

殴り合いとかそんな事にならないだろうと甘く見ていた。

けど、まさかあれに耐えられるとは予測していなかった。

迂闊だったとしか言いようがない。

幸い、リュックサックにはスタンガンや撃退スプレーなど、使えそうな武器はまだある。

こっそり通信機であっち側の状況を確認すると、まだ最深部に辿り着いていないようだ

泥仕合になること確定だけど、ここまで言ったら腹をくくるしかない

跡が残る傷が出来ない事だけ祈ろう。


「****…、*************!」

「ゲームコンテニュー、バトル再開…って所ですかね?」


あんまり時間稼ぎ出来ないから、なるべく早めに攻略してくださいね。皆さん。


***** #####


ボスのダンジョンには一時期、沢山のグレーターワーウルフ達がいた時がある。

オレらを除いても大体30匹くらいの群れで、皆自分の種族に誇りを持っていた。

グレーターワーウルフ達にとって、嗅覚の鋭さは一種のステータスみたいなもの。

どれだけ頭が良くても、スキルに優れていても、鼻が良くなかったら群れの中では無能扱いされる。

逆に言えば嗅覚さえ良ければ戦闘も碌に出来ないやつでも群れの中で褒めそやされる。

そんな中、オレはそいつらから『駄目狼』って呼ばれていた。


―――――――『あいつ、あの悪臭の中でも平気そうにしてるんだぜ、なんか変だよな?』

―――――――『普通だったら鼻が曲がりそうになるのに、あいつの鼻イかれてるんじゃないか?』

―――――――『グレーターワーウルフでありながら嗅覚が鈍いなど、なんて恥知らずな』

―――――――『飲み込みが早いって言っても、鼻が駄目じゃあねぇ…』


いや、オレ別に鼻が悪い訳じゃねーし。

普通に匂いの判別は付くけど、ちょっと他とちげーだけ。

それで悪臭とか少し大丈夫なだけだし。


オレはボスに召喚された時から、嗅いだ“匂い”を“音”として、聞いた“音”を“色”や“形”として認識する事が出来た。

草の香りは高い音、毎日食ってる肉の匂いはピアノの低い音、泥水の匂いは壁を叩いた時の音。

そんな風にオレは匂いを嗅ぎ分けていた。

別に匂いを嗅げねぇって訳じゃねーけど、その“音”の方がオレの中では強い存在だった。

だから他のグレーターワーウルフが耐えられねぇくせぇ匂いの中でも普通に行動出来る。

ただ、マジでうるせぇってだけ。

特に腐った果物の匂いを嗅いだ時に聞こえる甲高い悲鳴のような音はマジで耳が痛くなるから嫌いだ。


ブルー達も皆似たような理由で群れでは腫れ物扱いされてて、オレらは殆ど孤立状態だった。

ダンジョンでは雑用ばっか押し付けられるし、同じノリでつるめるブルー達と初恋のリリぴょんがいること以外はマジでつまんねぇ。

匂いを嗅いだ時に感じる音も、群れの人狼達の陰口も、他の魔物たちが零す不満も、何もかもが喧しくてうるせー。

そんなクソつまんねぇ世界に、オレはいた。

やがてボスの下で働くのが嫌になった群れのグレーターワーウルフ達は、ボスのダンジョンを出ていった。

ボスは群れのグレーターワーウルフ達が居なくなったことに気が付かなかった。

オレの世界は、群れの奴らがいなくても未だに喧しくて、クソつまんなかった。


そんなクソつまんねぇ世界にある日、革命が起きた。

それが起きたのはダンジョン戦争の最中でもトラブルの真っ只中でもない、変わった事のない日だった。

シズっさんに倉庫にある魔法薬の材料を持ってくるように頼まれ、倉庫にやって来た時、偶然ボスと遭遇した。

その時のボスは何か機嫌が良かったのか、鼻歌を歌っていた。

ただの鼻歌だったら別に気にも留めなかったけど、その時ボスの歌っていた鼻歌にオレはつい聞き入ってしまった。


白黒の単調な形しかでないこの世界のミュージックとは違う、色鮮やかで目まぐるしいミュージック。

楽器もない、コーラスもない、ただの鼻歌なのに色んな形に変化する。

オレの他とは違ったクソつまんねぇ世界に衝撃を与える音の波。

これを聞いたオレはその衝撃と鮮やかさに、思わず涙が出た。


その後すぐにボスに鼻歌の事について聞いてみたら、ボスがいた遠い場所で有名な“あにそん”?だそうだ。

あんなに激しいメロディも、思わず引き込まれる歌詞も聞いた事がない。

まさに雷のように衝撃的なミュージックだった。


ボスの鼻歌によって、オレの見る世界が一変した。

ただの騒音でしかなかった音達の一つ一つがミュージックの一部に聞こえるようになった。

音の組み合わせによって見える色も形も変わるのはマジで綺麗で、気に入った匂いをミュージックで再現するのはすっげー面白い。

この日から、オレはミュージックにのめり込むようになった。

ブルー達を巻き込んでバンドを作って一緒に楽器を作って、オレが考えたミュージックを皆で演奏する。

アリアリ達には煩いって何度も怒られたけど、それでも止められなかった。


演奏を続けている内にオレらの世界は次第に変化していった。

2つの<咆哮>によって生み出された不協和音で人間以外の奴らを動けなくする方法を発見したし、オレらのミュージックを気に入ったディオさんには人前で披露する場所を与えてもらった。

今はちょっと敵同士になったけど、オレらのミュージックに拍手を送ってくれたアイぴっぴとも会えた!

ボスは良いボスじゃねぇけど、あの人のお陰で今のオレは此処にいる。

だから、出来るだけの恩をボスに返してやりたい。


オレはなんか他とは違うし、そんな強くもねぇし、頭も良くねぇし、良く他にはうるせぇって言われる。

だけど、オレにだって出来る事はあると思うんだわ。


だから、わりーなアイぴっぴ。

オレは耳に纏わりつく低い呻き声のような音を振り払い、立ち上がる。

そして、此方を見て見たことねぇ武器を構えるアイぴっぴに目を合わせ、精一杯笑って叫んだ。


「だからさぁ……、ぜってー負けらんねぇんだわ!!」

「#########、#####…#######?」


オレはアイぴっぴに向かって走って距離を詰め、突進をする。

アイぴっぴはオレが走り出したのを見て、すぐに横にずれてオレを躱した。

オレはすぐに方向転換してアイピッピの首元のチェーンに手を伸ばす。

アイぴっぴはそれをしゃがむ事で回避した。

くっそ、完全に此方の動きを読まれてるわ。


「なんだよ、アイぴっぴ普通に戦えんじゃん!」

「######、########。」


アイぴっぴよりグレーターワーウルフのオレの方が素早さは良い。

けど、アイぴっぴはそんなオレの動きに追いついて躱してくる。

本気で動けばアイぴっぴも回避できないかもしれないけど、それだとアイぴっぴを殺してしまうかもしれないから出来ない。

そこでふと、アイぴっぴが何かの容器を持ってその口をオレの顔に向けた。

嫌な予感がしたオレが慌てて後退すれば、その容器の口からヤバい匂いのする液体が霧状に噴出した。


「ちょ、それぜってー顔に直で当たってたら暫く苦しむやつっしょ!?」

「#######~。」

「なにそのダミボイス!?」


銃とかなんでも切れる剣とか作っちゃうボスもやべーけど、アイぴっぴもアイぴっぴでなんつー武器を持ってんだよ。

てかなんで突然ダミボイス?

一瞬、なんか青くて丸い何かが見えた気がしたわ。なんだったんだあれ。

そんな事を思っていると、後ろからスライムが突撃してオレの顔に纏わりついた。

スライムの身体の中に顔が入って、呼吸が出来なくなる。

慌ててスライムをどけようとするが、ぷにぷにとしたスライムの身体は滑って掴む事が出来ない。


「むぐぉおおおおおおおおお!」


オレは咄嗟にスライムの身体の中で全力の<咆哮>をぶつけてやった。

スライムの粘体が口の中に入ってマジで苦しかったけど、それでも叫んだ。

するとスライムはオレの全力の<咆哮>を核の近くで浴びて気絶したのか、ヌルンッと俺の顔から剥がれ落ちた。

すると目の前にはアイぴっぴが立っていて、オレの身体に黒くて四角い物を突きつけた。

嫌な予感がしてすぐに逃げようとしたが、その前にアイぴっぴが動いた。

アイぴっぴはオレが離れるより先に、黒いそれに付けられていたスイッチを押した。


ビリビリビリィッ!!!

「ガハッ…!!」


その瞬間、雷にでも打たれたような衝撃がオレを襲う。

死にはしない程度だけど、気絶するには十分すぎるくらいマジでイテー。

雷のようなショックを直で浴びて思わず意識が遠のきそうになり、目を閉じそうになったその瞬間、地面に倒れ伏したブルーとオラムの姿が目に入った。


その瞬間、オレの中で何かが弾けた。


「パーリーウルフズ、舐めんなあああああああああ!!」

「##!?」


オレはギリギリなんとか持ちこたえて意識を保ち、目の前にいるアイぴっぴの首元のチェーンをしっかりと掴んだ。

自分の方に引っ張れば、チェーンに繋がれた金色の鍵がアイぴっぴの懐から現れて、チェーンが壊れた。

アイぴっぴとオレは落ちていく金色の鍵に手を伸ばした。


その時、突然アイぴっぴの動きが一瞬止まった。

何かに目を丸くして驚いている。

その隙に、オレは金色の鍵を手に入れる事が出来た。


「おっしゃ、鍵ゲット!これであっちの扉を開ければウィナー!」

「#####!!!」

「アイぴっぴにはわりぃけど、このまま行かしてもらうわ!!」


慌ててアイぴっぴがオレの身体にしがみついてオレが扉に向かうのを止めようとするけど、アイぴっぴめっちゃ軽いから全然邪魔できてねぇの。

コボルトのガキ達の面倒見てる時と似ててちょっと癒やされるけど、悪いけどこのまま引きずって扉に向かわせてもらう。


隙を見て鍵を奪い返そうとするアイぴっぴの手を躱しつつ、オレはアイぴっぴを引きずりながら最深部に続く扉の前まで辿り着く。

鍵穴に金色の鍵を差し込んで回せば、扉の鍵は簡単に開いた。

扉を開けて中に入った先には、台の上に乗せられたダンジョンコアらしき水晶玉を見つけた。


「#~#~#~#~#~…!」

「あ~と~も~ちょい~…!」


アイぴっぴに邪魔されながらも、オレはダンジョンコアへと近づいていく。

そしてとうとう、オレの手がダンジョンコアに触れた。


「おっしゃ!!」


オレがそう叫べば、頭の中に直接誰かの声が聞こえてきた。


『一方のダンジョンが勝利条件を満たされたため、ダンジョン戦争が終了しました。









勝者、ダンジョンマスターアイネス。』

「は!?」


聞こえてきた声の内容に、オレは素っ頓狂の声を上げた。

オレにしがみついているアイぴっぴは顔を俯けていて、表情が見えない。

オレは納得がいかず、声に文句を言う。


「マ!?確かにオレダンジョンコア触れたはずなんだけど…!」


そう言ってオレは今も触れているダンジョンコアを良く見た。

するとそれはオレが少し強く握っただけで、ヒビがついてしまった。

慌てて手を離してよく見てみれば、それにはボスのダンジョンコアから溢れるような魔力が全く感じられない。


「…す、水晶玉?え、此処最深部じゃ…」


戸惑っていると、アイぴっぴがオレの肩を叩き、ある方向を指差した。

指差した方向には看板が置かれていて、こう書かれていた。


『最深部に到着した?残念、それは偽物だ!本物のダンジョンコアは此処にないよ!』


そう書かれている看板を見て、オレは力が抜け、その場に座り込んだ。

するとアイぴっぴがオレを見下ろすように覗き込んできた。

その表情は変わらず無表情だったが、何処かやり遂げたような感じで此方にウインクをしてきた。

そんなアイぴっぴを見て、オレは全てを察した。


「アイぴっぴ、オレとバトってた時すっげー焦ってた感じ、全部演技だった訳?」

「##########?#######、#####。」


オレがそう尋ねれば、アイぴっぴはすぐにオレの質問が分かったようで、目を細め、自信ありげに首を縦に振ってみせた。

その答えを聞いたオレは、完全に力が抜けて大の字で地面に倒れた。


「ウッソ~…!あれ全部オレを此処に引き止めるための演技とかちょーヤバくね?アイぴっぴ、めっちゃ策士じゃん。」

「###################?」

「何いってんのか全然分かんねーけど、今何言われてもとにかくヤベーとしか言えねぇわ。オレら、マジで負けたのか…。つらたんだわ…」


要は、オレがアイぴっぴを倒す事をチョイスに入れてなかった時点でオレらは詰んでいたのだ。

オレらがアイぴっぴを倒さない限り、この最深部の中でダンジョン戦争に勝つ方法はなかった。

きっとアイぴっぴは、オレらがアイぴっぴを傷付けるつもりがないと分かっていたから逃げずにオレらとバトる事をチョイスしたのだ。

負けてめっちゃ悔しいはずなのに、何処かスッキリとしてしまっているのはきっと気の所為じゃないだろう。


「完敗だわ、アイぴっぴ」

「######。######。」


アイぴっぴがくすりと小さく笑った後、オレに手を伸ばした。

パーティーで見た時とは違う、女の子っぽい笑みを見て思わず目を丸くしたが、思わず吹き出して笑ってしまう。


なんだアイぴっぴ、普通に笑えんじゃん。


オレはアイぴっぴが差し出してくれたその手を掴み、立ち上がる。

マジでキツかったし悔しいけど、不思議と後悔はないわ。

こんな風に興奮したのは、初めてブルー達とライブをした時以来だと思う。

ボスとかにはめっちゃ怒られっかもしんないけど、そういうメンドイのは後で考えよう。

今は、それで良い。





オレとアイぴっぴはお互いの手を握り笑っていたけど、ダンジョン戦争が終わって緊張感が抜けたせいか、部屋の中に充満した悪臭を再認識してしまう。

段々と辛くなるのを感じつつ、チラッとアイぴっぴの方を見れば、アイぴっぴもマスクが無くなって同じようにその匂いを感じたのか、かなり顔色が悪くなっている。

お互い顔を見合わせ、そっと頷きあった後、オレらは鼻を抑えてすぐさま飛び出した。


「やっっぱくっせええええええええ!!!そしてうるせええええええ!!」

「###!###!」

「ダンジョン戦争終わったし、とっとと退散!エスケるわ!ブルー、オラム、起きろし!」

「うっ…リーダー…?って臭っ!?」

「ちょ、一体何があったし!?つか臭っ!!」

「くわしー説明は後よ後!とりまこっから出んぞ!鼻が曲がる!!」

「######~~!!!」


オレは今まで気絶していたオラムとブルーを起こして、アイぴっぴと一緒に外を出る。

変な終わり方になったけど、なんか此方の方がオレららしいわ。


あー、早くこっから出て水浴びでもして匂い落としてー!!



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― 新着の感想 ―
[一言] タケルに対する要求は ・ダンジョンの閉鎖 ・魔物達の解放 ・異世界文化の流布の禁止 ってところですか。ダンジョンマスターとしてはお終いですね。 で、人間社会に戻っても冒険者資格剥奪ものの重罪…
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