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欲望センサーって凄いよね

「……どうするべきか……」


私は<カスタム>と<ガチャ>の画面を眺めながらかなり悩んでいた。


アルベルトさん達を襲撃した犯人達のダンジョン再挑戦が幕を閉じたようで、食堂でひたすらシュークリームを作っていた私にベリアルとイグニがやって来て全て片が付いた事を知らせてくれた。

二人共いつもと変わらない様子だったけれど、大量の血を浴びて洗い流してから来たのか、彼らからはほのかにシャンプーの匂いと血の匂いがした。

本来ならルール違反者と隠し条件を満たした者以外は相手をしない二人から血の匂いがするということは、恐らくそういう事なのだろう。

やはり、私は奥に引っ込んでいて正解だったようだ。


戻ってきた魔物たちにシュークリームを配ると、皆大喜びしていた。

私が見てない間魔物たちがどんな風に犯人達を相手していたのかは分からないが、恐らくいつもよりたっぷりと挑戦者達の相手をしたのだろう。

現にイグニとベリアルが戻ってきた時にDPを確認したら、溜まったDPは優に40万を越えていた。

アルベルトさんが襲撃された日にモニターで確認した時に確認出来た犯人の騎士たちの数は大体30人弱。1人の挑戦者につき1万を越えるDPを稼いだ事が分かる。


にしても、第三騎士団なんて言う割には規模が随分と小さい。

騎士団だったら、100人200人を軽く越えそうなイメージがあるのだけれど、何故だろう。


『回答。ケネーシア王国第三騎士団は貴族の親族からの推薦のみで来た者の中で、内省が厳選した者が入るため、第一、第二騎士団と比べてその規模は小さいです。』

「つまりはコネで入団した中でも無能と上層部が判断した人達しかいないから少ないんですね?」

『肯定。その通りです。』


はっきりと此方の暴言レベルの推測を肯定する<オペレーター>…嫌いじゃないよ。

なにはともあれ一度に大量のDPが稼げたので、DPをどう割り当てるか決めなければならない。

そして今、私は居住スペースの一番奥に存在する個室の中でDPの分配について考えていた。


一先ず25万は新しいルート作成のために使おう。

最近は冒険者たちがよく来ていたので、そろそろ新しいルートを作ろうと思っていたのだ。

既に新しいルートのコンセプトも考えてあり、ケルトに新ルート用の脚本を書いてもらっている。

このタイミングで大量のDPを稼げたのは良かったかもしれない。

5万は既存のルートの改築だ。こうやって大量のDPを稼いだ時にしか改築は難しいので、改築出来そうな所は改築してよりリアルで迫力のあるダンジョンにしたい。

プロジェクターで背景に映像を映すのにも色々限界があるからね。


後のDPは新入り魔物の召喚と居住スペースの増築に使う。

黄色の扉のモンスターハウスに入る魔物や、赤の扉でバッドエンド(蛮勇に溺れるエンド)に行き着いた人たちを引きずり込んで溺れさせて後で助ける水中での活動が可能な魔物、追加の人材が必要な場所は幾つもある。

新入り魔物達を増やすとともに居住スペースも追加しないと行けないので、意外とDPがかかるのだ。


稼いだDPの1割は貯金に回すつもりだけど、問題は<ガチャ>を回すか否かだ。

過去の二回で私は見事SSRキャラのベリアルとイグニを当ててしまった。

限りなく少ないとは思うけれど、またSSR級のチートキャラ……というか、人型魔物を当ててしまうと私の心労が増える。

しかし、混合ガチャの物は意外と使えるアイテムや魔物も当たるのも事実なのだ。

主に戦闘や脅かし役として働いてくれるワイト数体や、ダンジョンの影のサポーターであるスライム達もこの混合ガチャで当てて召喚したものだ。


少ないDPで復活型の魔物やダンジョンの宝箱に入れるアイテムが手に入るのは有難い、けど心労が増えるのもそれはそれで困る。

実際、イグニが来た時はベリアルと一瞬で犬猿の仲になってストレスが半端ない事になった。

またいがみ合いを始めそうになるならイグニ達の時のように何かゲームを用意すればいい。

それでも、なんだか他の問題が起きそうな予感がするのだ。

これ以上チートキャラが増えてもその魔物にあった役割を探すのが難しい。

役に立つアイテムや魔物は勿体ないけれど、それらは少々高値ではあるけれど<カスタム>でも購入可能だから別に<ガチャ>で引く必要もない。


「ということで、今回は混合ガチャは引かないという事でけってー…」

「アイネス!!*****、ゴブロー、イグニレウス、オヤツ、タベタ!!」

「いぅぉぁあああああああああ!」


<ガチャ>の画面を消すために手を伸ばしたその時、背後の扉が大きな音を立てて派手に開き、イグニが大声でやって来たため盛大に奇声を上げて驚いてしまった。

言っている内容からして、多分「ゴブローが俺のおやつを食べた!」と訴えているのだろう。いや、子供か。

そんなことより大変なことになった。

突然イグニの登場に驚いてしまい、間違ってガチャを回すボタンを押してしまったのだ。しかも見事に10連ガチャ。なんだこの奇跡的なミス。

キャンセルしようにも既に動き始めているガチャを止める術はなく、私の前に魔法陣が姿を現す。


「あぁ……Bキャンセル出来ない…」

「アイネス?ナニ、アッタ?」

「君のせいで間違ってガチャを回してしまった所ですよ。とにかくこれ以上SSRが来るのだけは本当に止めてほしい。出るならスライムとかワイトとかスケルトンとか、何処の役目にも入れられる魔物をお願いします…!」


首を傾げるイグニを放置して必死に手を合わせて祈りを上げる私。

ガチャはレア級やノーマル級の魔物や魔法武器を引き当てる中、丁度半分の所で『SR!!!』という文字が表示された。画面の様子からして魔物のようだ。


「確かにSSRじゃないけれども!!」


まるでコントのような結果に私は思わずツッコミを入れてしまう。

確かにSSR出るなとは祈ったけれど、SRでいいわけじゃないから。

更に、追い打ちを掛けるようにSRを引き当ててすぐに『SSR!!!』という文字が表示された。


「そして結局SSRが出るのか!!って、やば、サングラスサングラス…」


3回連続のSSR引き当てに再度ツッコミを入れる。

SSRってなんだったの?欲望センサー働きすぎではないですか??凄いな欲望センサー。本来の確率を覆してくるよ。

しかし引いてしまった物を取り消す事は出来ない。

魔法陣が今にも光りだしそうだったので、私は慌てて魔法陣の光対策用のサングラスを取り出して掛ける。

私の予想通り魔法陣は強い光を放ち始め、魔法陣の中から2体の魔物が姿を現した。

今回はサングラスを付けていたので、光で目が眩むことなくその姿を確認できる。


片方は、桃色の掛かった紫色のベリーショートヘアの女性だ。

ほっそりとしたモデル体型のスタイルに、愛らしい顔つきながらも男性を魅了する色気を持った魅力的な顔。

バニーガールのように露出の高い扇情的な衣装に身を包むその容姿はまさに可憐な美少女そのもの。

しかし、その背中にはベリアルと同じような羽があり、お尻の部分から尻尾のような物が生えている。

愛らしく、美しく、そして色っぽい小悪魔系の彼女は人懐っこい笑みを浮かべて、上目遣いで此方を伺っている。


一方、もう片方はどこか清らかさを感じる男性だった。

エメラルドグリーンのその長い髪は女性なら誰しもが羨むように艶の良い髪で、エメラルドの宝石のようなその瞳と相まって綺麗だった。

背中から生えたサファイアの蝶々の羽がヒラヒラと動く度、キラキラと輝く虹色の鱗粉が出てくる。

背中以外には人間と全く同じように見えたがよく見ると彼の耳は尖っており、まるでイラストで見たエルフのようだ。

どこかおっとりとした優しげな、それでいて気品が溢れるその顔はベリアルと似たような物を感じるけれど、少し違う感じがする。

ベリアルは月夜の闇のようなミステリアスなオーラを感じたが、目の前のこの男性からは森林に差す木漏れ日のような清純なオーラを感じさせるのだ。


そんな二人を目の前にした私の反応は、イグニやベリアルを迎えた時と変わりなかった。


「チェンジで!!!」



***** *****


既に恒例になりかけている突然の奇声を上げた私はひとまず深呼吸して心を落ち着かせ、早速新しく召喚した二人を見てみる。


小悪魔系の女の子の種族はなんとなく分かる。十中八九サキュバスかなにかだ。

なんとなくベリアルと似たような闇のオーラを感じるし、男性を魅了するような衣装を身にまとっているからね。

むしろ、サキュバス系の魔物以外に悪魔の羽と尻尾が生えてて露出度の高いバニーガール衣装を着ている魔物がいるなら教えて欲しい。


もう1人の緑髪の人は…エルフか妖精かなにかだろうか?

耳が尖っているから少なくとも人間ではないだろうし、なんだか森林や花の良い匂いがする。

背中の青色の蝶々の羽が綺麗だけど、あれってイグニ達のように仕舞えるのだろうか?

仕舞えないようだと鱗粉で生活に支障が出そうだからなぁ…。


ひとまず二人に名前を付けて<契約(コントラクト)>を済ませてしまおう。

名前がないんじゃコミュニケーションも取りにくいし。


「えっとまずはそこの女の子から…」

「アイネス。」

「むぐっ」


まずは露出度の高い美少女の方から<契約(コントラクト)>をしようと思ったその時、後ろから男性の大きな手によって口が塞がれる。

身を捩って振り返ってみれば、私のすぐ背後になんだか額に皺を寄せて難しい顔をしているイグニが立っている事に気がついた。

イグニは真剣な表情で私を自分の正面に身体の向きを変えさせると、そのまま自分の懐に仕舞うように私の身体を沈めてきた。


「わっ、ちょ、息が…」

「****、***************。」


息苦しさに慌ててイグニの背中を叩いて訴えようとしたが、イグニはそれを聞かずにより懐の中へと抱きしめると、異世界の言語で何かを話し始めた。

イグニの言葉の後、私の後ろから男性の声が聞こえてくる。

恐らく、今しがた召喚されたばかりの魔物の片方と何か会話をしているのだろう。


「*******…。*********************。」

「***イグニレウス*。*************、*************。」

「**************?」

「******。アイネス****。アイネス****。***************。」

「****?*************?」


何を言っているのかさっぱり分からないので二人がどんな会話をしているかは分からないが、なんか私のことについて話をしているのはわかる。

暫く懐の私を通してイグニと耳の尖った男性魔物が会話し、時々アニメのキャラクターでいそうなアニメ声の女性が会話の中に入る。

いや、会話するのは良いんですけどひとまず息できない事とイケメンに抱き締められているという事実への羞恥で死にそうなんで解放してくれませんかね?!

そんな思いを込めてイグニの背中を叩いて訴えていると、ようやく会話が終わったようでやっと解放してくれた。

ふと振り返ってみれば、二人共背中の羽を隠した事に気がついた。

恐らくイグニがなにか伝えて羽を収めてもらったのだろう。


「イグニ…、こういう事は事前に教えて下さい…」

「ゴメン、アイネス。」

「次は気をつけてね。」


私が恨みのこもった目でイグニを睨めば、イグニは片手を合わせて謝ってきた。

正確に伝わってるとは思わないけど、抱きしめる前に見た顔がいつもと違って真剣な様子だったから、きっと何か理由があったのだろうと思ってそれ以上責める事はしなかった。


「******…」

「あ、ほっといてごめんなさい。」

「******、アイネス***********。***********。」

「******?」

「うん、何言ってるのかさっぱり分からないですけど、なんとなく私の言葉か職業について確認をとられたのは分かりました。そうですよ。言葉が通じないダンジョンマスターは私の事ですよ。」

「ブハッ、**アイネス**!***********!」

「****、*******…。」


分かる部分から私の推測の内容を理解したのか、イグニが吹き出して豪快に笑いながら頭を撫でてきた。

多分反応的に、私の推測は当たっていたらしい。

耳の尖った男性の魔物はポカーンと呆然とした様子で此方を見ながら呟いた。

それに対し、美少女の魔物の方は私を興味津々といった感じに見ながら手を振ったりしている。彼女はアイドルかなにかだろうか?


「それじゃあ、<契約(コントラクト)>の方を済ませちゃいましょうか。まず、そっちの美少女な魔物さんから。」

「***?」

「はい。」


自分を指差して首を傾げた美少女の魔物に対し、私は肯定の意として頷いてみせる。

アラクネ三姉妹やシルキー達はそれぞれの種族っぽい名前を付けたけれど、サキュバスっぽい名前はなんか色々とアウトそうだから普通にありそうな名前にしたい。

少し考えた後、私は美少女の魔物の方を向いて彼女に名前を付けて上げた。


「マリア。貴方の名前はマリアで。」


元の世界の神話の聖母と同じ名前を付けるのはどうかと思ったけれど、普通に女の子の名前としては可愛いので、普通に有りだと思う。

美少女の魔物…マリアも自分の名前が気に入ったのか、此方に向かって愛らしく笑った。

やっぱり彼女はアイドルなのだろう。


さて、次は耳の尖った男性の魔物の方なのだけれど、此方は見た目での種族の判別がつかない。

エルフか妖精かのどちらかだと思うけれど、もしも外れてたらと考えると、マリアと同じく種族名から名前を考えるのは止めたほうがいい。

光とか太陽はイメージが快活すぎて合わないし、蝶々をイメージすると名前が女性っぽくなってしまうし、あまり難しい名前にしてしまうと此方が呼びにくくなってしまう。

ふと、男性の魔物から森林の香りが漂ってきた。

そこで私はふとある名前を思いついた。


「フォレス。」


森を英語にするとフォーレスト。それを男性っぽい名前にしてみた。さっきから微かに花や森の匂いがするし、彼が森育ちなのは分かる。エメラルドグリーンの髪と良い、蝶々の羽といい、結構ぴったりな名前ではないだろうか?

男性の魔物…フォレスは、<契約(コントラクト)>が結ばれると、朗らかな笑みを浮かべ、此方に会釈をした。


契約(コントラクト)>も結ばれた事だし、ダンジョンマスターとして彼らの役目を決めるためにも、彼らのステータスを確認しなければいけない。

相手はSSRとSRの魔物だし?多分イグニやベリアル達同様チートキャラなのだろう。

ひとまずベリアルかイグニに頼んで新人研修を行ってもらい、住む場所を用意してしまおう。


「一体どんなチートな魔物なのでしょうか~…っと」


ダンジョンマスター権限を使い、マリアとフォレスのステータスを確認する。

すると、私の目の前に二人のステータスが同時に表示された。


【名前】マリア

【種族】リリス

【称号】夜の女帝

レベル:80

HP: 9000/9000 MP:23000/23000


力:1800 防御:1350 素早さ:2140 魔法:3300 運:2680


【スキル】

魅了 LV10

魅惑 LV9

闇魔法 LV8

聖属性耐性 LV8

夢魔召喚 LV10

洗脳魔法 LV7

幻惑魔法 LV9

etc…



【名前】フォレス

【種族】フェアリー・ロード

【称号】妖精たちの王、森林の管理者

レベル:200

HP: 10000/10000 MP:38000/38000


力:1940 防御:3950 素早さ:1230 魔法:7600 運:1470


【スキル】

精霊結界 LV-

鱗粉散布 LV-

精霊召喚 LV10

属性魔法 LV9

浄化魔法 LV7

回復魔法 LV8

付与魔法 LV8

etc...


「……へ?」


どうやら、私の予想以上に新入り二人はチートキャラだったようです。



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