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適材適所、役割分担こそ仕事の最効率化を測る

イグニとベリアルの口論が減ってから、ダンジョンの中は一気に平和になった。

元々他の魔物たちの関係性は悪いものじゃなかったけど、前は最強ツートップが険悪で周囲を恐慌状態にさせるから皆怯えてた感じなんだよね。

でもそんな恐慌の元が無くなったので、皆のびのびとダンジョンで生活している。

冒険者たちも特に酷い騒ぎを起こす事なく、ダンジョンで一喜一憂している。


今このダンジョンにいる魔物は総勢40体。

ゴブ郎とベリアルとイグニの最強ツートップの他には6種類の魔物が存在する。


スケルトントリオを含めたスケルトン 10体

ワイト  10体

ウルフ  7体

スライム 5体

アラクネ 3体

シルキー 2体


スケルトン達は人型をしているからかとても器用でそれぞれ技術系に長けているので、ダンジョンで冒険者たちの相手をする時以外は技術班として裏方側を手伝ってもらっている。

仕掛けの量産や設置は勿論のこと、ここ最近ではそれぞれのルートの仕掛けを起動や青の扉で不正解音を鳴らす係も出来るようになった。

特に優秀なのはスケルトントリオで、スケは映像編集、ケルトは脚本、ルートンはDIYが得意だ。

一応スケルトンたちに裏方側の仕事は辛くないのかと聞いてみた事がある。そうしたら、「どっちも大丈夫」とサムズアップで返された。


ワイトとウルフは主にダンジョンの表舞台に出てもらって冒険者たちを相手にしてもらう戦闘班だ。

ワイトには主に赤の扉ルート、ウルフには黄の扉ルートで働いてもらっている。

身軽なウルフは仕掛けの場所さえ教えておいたら足場の悪い場所でも冒険者を相手にできるし、ワイトは赤の扉の物語がホラー系なのでシチュエーション効果で恐怖倍増だ。実際、雪道の中で突然現れたワイトに驚く冒険者たちは多い。

あとウルフには私のメンタルケアもさり気なくお願いしていたりもする。シャンプーしてドライヤーで乾かすと凄いフワフワになるんだ。もふもふ最高。

因みにワイトは普通に人間と同じ食事を食べられて、ウルフは地球のドッグフードが大好評だ。やっぱ地球の食べ物は動物相手にも好評なのか。


スライムは途中で気絶した人を帰還用魔法陣まで移動させる係と掃除班だ。

元々は綺麗好きのようだったスライムにダンジョン内の掃除を任せていたけど、ダンジョンに人が集まるようになった頃に赤の扉に入った冒険者が途中で気絶してスライムたちがここまで運ぶ事が続出したのだ。

冒険者でも気絶するんだなぁと思いつつも、ダンジョン内で気絶されると後から来た冒険者たちの進行の妨げになる。

なので改めて追加報酬としてデザートを付けることを条件に冒険者達を帰還用魔法陣に突っ込む事を頼んだ。


アラクネこと、アーシラ、ラク、ネアのアラクネ三姉妹は主に黄の扉で指示役の人に妨害をする係だ。黄の扉ルートの天井に彼女たちに張り付いてもらい、途中で玩具の蜘蛛を落としたりウルフ達に襲撃のタイミングを指示したりして恐怖を程よく煽るのだ。

アラクネ三姉妹は半身が蜘蛛だからか裁縫が得意でダンジョンの営業時間外で良く自分が出した糸でレースの作品を作っているのを目撃した。

なので彼女たちに手芸用の布と手芸本を渡してみたら、思いの外喜んでくれた。

今度スケルトントリオに頼んで彼女たちの部屋にミシンを置いても良いかもしれない。


最後にシルキー二人、シシリーとルーシーは料理班だ。魔物の数が10体を越えた所で私一人では夕飯時までに人数分の食事を用意できなくなったので<カスタム>で召喚させてもらった。

彼女達には普段はダンジョンの居住スペースに作った食堂で私と一緒に皆の食事を調理してもらっている。

本当はレシピ本を渡せれば良かったのだが、イラストや絵の多い手芸本と違ってレシピ本は日本語での説明が多い。

タブレットで料理動画を見せることも考えたけど此方の世界では調理中に材料の分量をはかる事がないらしく、彼女達が数字と料理用語を覚えるまでは私が彼女たちの前で作って見せてそれを見ながら彼女達が再現する事となったのだ。

シシリーとルーシーはやはり家事妖精なだけあって料理上手で、私が一度見せた料理はその後も完璧に作ることが出来た。

更に向上心もあるのか、たまにスケルトンたちと一緒に調理室で料理の研究している姿を見かけている。


因みにイグニやベリアル達にもちゃんと役割というものがある。

イグニは魔物達全員の地球文化勉強時間の助手だ。

力仕事ではないのか?と他の人が見ていたらそう思われるだろうけど、<ネットショッピング>のお陰でその場で重い物を置くことが出来るので殆どないのだ。

イグニは地球の文化…特にゲームや食べ物といった娯楽がお気に入りらしいのだ。イグニはベリアル同様イラストやジェスチャーでの理解力も高いので、魔物達が空き時間に遊べるような遊びのルールのレクチャーをしてもらっている。

今頑張って覚えてもらっているのがカルタだ。カルタは私の言語の勉強にもなるため、魔物たちに遊んでもらって覚えてもらいたい。

イグニにはなんとかカルタの読み手になってもらうため、一足先にひらがなの勉強中だ。今の所、タ行の読み札を完璧に覚えている。


ベリアルはダンジョン内の魔物たちの指示出し係だ。

ベリアルは初期からいたためか、このダンジョンの構造については私の次に知っている。

なのでダンジョンの一日の仕事配分の割り振りや、それぞれのルートで待機している魔物達への連絡を任せているのだ。

アラクネ、スライム、ベリアルにはトランシーバーを営業時間中に持ってもらい、それを使って連絡を取り合ってもらっている。

本当は新人研修も任せたかったのだけど、それぞれに役割を任せる時にイグニに真顔で首を横に振られた上に色々言われたので、渋々ベリアルの傍で私が見ているというなんとも効率の悪い方法になった。

何が気に入らなかったんだ。


そして最後、私の最初の友人ことゴブ郎の役割だが、ずばり私のコミュニケーションを促す仲介役である。

助手役だったら能力値の高いベリアルやイグニに任せるべきだろう、しかし、私に必要なのは仲介役なのだ。通訳をして欲しい訳ではない。

魔物たちとのコミュニケーションにおいて最も厄介なのは言語の壁や種族の壁ではなく、私のコミュ力の壊滅的なまでの低さなのだ。

人型を保ってないウルフやスライムとは普通にゴブ郎なしでもコミュニケーションが出来る。

人型だけど言葉を話すことが出来ないスケルトンやワイトたちもギリギリ大丈夫。

しかし半分以上人型で、しかも喋ることが出来るシルキー、アラクネ、最強ツートップを目の前にするとどうしても固まってしまい、気まずい空気が流れ出してしまうのだ。

イグニが来た頃には、何度も何度もマイホームに逃げ込んで引きこもっていた。

というか、ゴブ郎くんがいなかったら私はそのままマイホームに引きこもり続けている。

人を目の前にすると思わず逃げ出して自分の部屋に引き篭もるのは私の悪い癖だ。まだまだ始まったばかりのダンジョンでそれをしてしまうのはベリアル達も困るだろう。

ゴブ郎くんは、ベリアルとイグニの威圧にも呑気でいられる程の肝が据わっていて、気まずい空気を有耶無耶にする才能がある。

なにより、この異世界で私が最初に心を通わせたのがゴブ郎だったせいか、魔物たちの中でもゴブ郎が一番信頼におけるのだ。

そういう訳でゴブ郎には普段から私の傍にいてもらっている。

最強ツートップである二人を差し置いてゴブリンであるゴブ郎を傍に置くなんてとベリアル達から文句を言われないか心配だったけれど、ベリアル達は何も言わなかった。

バドミントンの件でゴブ郎の方が自分達より序列が上だと認識したからだろうか?

最強ツートップが従っているためか、他の魔物達もゴブ郎が傍にいることに関してなにか言う様子もない。とにかく文句が出ないようで良かった。


バトミントンといえば、ベリアルとイグニの対決のために用意したコートは魔物たちが遊ぶためのスペースになった。

ベリアル達がやったバドミントンは勿論、サッカー、バスケ、卓球、テニスなど、基本何でも出来るよう学校の体育館のような空間にした。

イグニの献身的な宣伝により、仕事のない魔物たちが楽しげに遊んでいる。


私も一度イグニにバドミントンの相手に誘われた事がある。

イグニはゴブ郎に惨敗したのがよほど悔しかったのか、スケルトンやワイト達にも勝負を挑んで鍛えているのをよく見る。

ダンジョンに来てから料理をする時以外は一日中ずっとモニターの前で座りっぱなしの生活が多かったので、この勝負を私は受ける事にした。

結果はどうなったって?


勿論私の圧勝である。ゴブ郎と違って20ポイント制でやった結果だ。

私は確かに出不精で、体は高校生女子の平均より少し低いぐらいだけど舐めてもらっては困る。

出不精で部屋に籠もったら学校や食事以外全く出てこなくなる私に対し、中学の頃親が無理矢理運動部に入れたのだ。

しかも、部活中に手を抜いているようなら私室を没収するという言葉を付けて。

その所属していた運動部というのがバドミントンだった。

私室を没収されるのが嫌だった私は、部活動中それはもう真面目に頑張った。

毎朝素振りと筋トレに励み、部活仲間との練習試合にも積極的に参加。

大会が近づいたら相手のプレイを洞察して相手の弱点を探りいれる。

大会の中ではシングルでは短時間で相手からポイントを取り、ダブルスでは相方が取り損ねたシャトルのみを打ち返すサポート役を徹底した。

全国大会に通用するレベルではないにしろ、区大会や県大会ではそこそこ良い成績を取っているのだ。

部活仲間からは「無表情だから相手している時の威圧感が半端ない」と苦言された事があるものの、プレイが下手と言われる事は少なかったと思う。

高校生になってからは帰宅部に変更してしまったけど、筋トレは忘れずに行っている。

そういうことで、私はそこそこ運動が出来る方なのだ。体力はないからマラソンとかは苦手だけど。


イグニは運動神経こそ私より高いけど、突然の不意打ちに弱くてフェイントを入れられると一瞬動きが止まる。

早くて強いスマッシュには逆にスマッシュを打ち返せる程得意だけど、逆に緩急のついたショットを手元や足元近くに打たれると反応しきれずにミスが多い。

更に、何度か緩急のついたショットを打ち続けるとそれをルーティンとして覚えてしまい、突然ネット近くにスマッシュを打たれた時に反応が出来ない。

ベリアルとイグニの対決や、イグニ対他の魔物たちとの試合で審判をしていた時に観察して分かった明確な弱点だった。

力だけで勝てると思うなよ


私に完膚なきまでにボコボコにされた後、イグニはまた落ち込むかと思ったけどそれはなかった。

逆に、やたら親しげに声を掛けるようになったと思う。

一方、私対イグニの試合の審判をしたベリアルは試合後、度々ドロっと甘ったるい視線を送るようになった。

敵意を向けられるよりは良いけど、人にそんなリア充っぽい視線を送られるのはアレルギーなので勘弁して欲しい。


今抱えていた最大の問題が解決し、ダンジョン経営も右肩上がり。

このまま、平和な異世界ダンジョンスローライフ過ごせると良いなぁ…



『アイネス**!*****!』

「アッ、一瞬で砕け散ったわ私のスローライフ」


突然トランシーバーから聞こえてきたアーシラ姐さんの声。

どうやらまたもトラブルの種が舞い込んで来たようだった。


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