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コミュ障に喧嘩の仲裁とか無理だから!!!!

拝啓、お母さん、お父さん。

お元気にしていらっしゃいますか?

娘は今、ダンジョンマスターとして冒険者たちの相手をしています。

アトラクション型ダンジョンが始動して半月…。ダンジョンには多くの冒険者達が集まっています。

最初こそ変わったダンジョンに戸惑っている方が多かったのですが、最近はこのダンジョンの在り方を理解してくれる方が増えてきております。

つい先日、ダンジョンが人気になった事で溜まったDPを消費して、新しいルートの作成と元々ある3つのルートの複製を致しました。

物語の管理人の語りを聞くスペースをそれぞれ一部屋に変更し、その後続く扉の転移陣で少人数に分け、同じルートだけどそれぞれ違う道へと進ませるように作り変えました。

更にルールを全て書いた看板やダンジョン情報を載せた提示板などを設置してどうにか効率良くDPを集めています。

これなら最近計画している新しいルートも近日公開出来るかもしれません。

そんな私ですが、最近ある一つの悩みがあります。

それは…


ドンッ


「カタカタ……!」

「はぁぁぁぁ……」


私のダンジョンの最強ツートップがほぼ毎日と言っていい程喧嘩していることです。



***** *****


彼らが所謂犬猿の仲であると悟ったのは、イグニが召喚された日の夜。

夕飯のカレーライスを食卓に並べている時のことだ。

私がマイホームに引っ込んでいる間にベリアルがイグニに色々話してくれたらしく、イグニは私の顔を見るなり頭を下げて謝ってきた。

まあ、初対面に超絶チートキャラなイケメンと無愛想なパーカーパンツのモブ少女見たら9割の方が前者がダンジョンマスターだと勘違いしてしまうだろう。

許してあげる事にした。


カレーライスには3つの辛さを用意した。

甘口、中辛、辛口の3つ。使うルーもそれぞれの辛さに合わせて変えてみた。

カレーって人によって辛さの好みがあるからね。今回はカレー初心者の魔物ばかりなので辛さを決められるようにした。

因みにカレーの味見をしたゴブ郎は甘口がお好みらしい。私はいつもは中辛を食べるのだけど、今回は甘口カレーを選んだ。

なにせ、うちのカレーの甘口は甘党の父(40代後半、仕事はITエンジニア兼黒魔道士)に合わせて甘口のカレーにジャムをドバドバ使った激アマカレーだったのだ。

逆に辛口カレーは、辛党の母に合わせてオリジナルブレンドのスパイスが入った子供には辛すぎる激辛カレー。

甘すぎるのも辛すぎるのも苦手な私にはどちらも遠慮したい物だった。

両親がいない時くらいは普通の甘口カレーを食べたい。


私とゴブ郎がカレーを持ってくると、イグニは既にカレーに対して興味を示していた。

ベリアルにカレーの味を確かめてもらうと、まるサインを貰った。

イグニは味見したがっていたけど、ベリアルに手で制されて食べられてなかった。

カレーの味比べの結果、ベリアルは中辛、スケが甘口、ケルトが中辛、ルートンが辛口を希望した。

イグニは辛口一択だ。許したとはいっても罰がない訳じゃないからね


それぞれお好みのカレーをご飯に盛り付けて、ベリアルとゴブ郎と一緒に椅子が一つ追加された食卓に並べていく。

ベリアルが来た時の初めての食事ではベリアルがかなり遠慮してたのでイグニも同じことするのではないかと心配したけど、事前にベリアルから説明を受けていたのか、すんなりと私の隣に座った。

そして、私の反対隣にベリアルが座る……。


あれ、なんだろうこの両手に花的な状態。

両隣のイケメンから放たれるイケメンオーラに目が潰れそうなんだけど。

しかもイグニから妙に王者っぽい圧が掛かってて精神がガリガリ削れるんだけど。

今すぐにも席を変えたかったけれど、ゴブ郎は座って今か今かとカレーライスを食べるのを待ってるし、スケルトントリオに至ってはヘルプの視線を送ったら目線を逸らされた。

君達、私が今どう思ってるのか察してるでしょ?ほら、ちゃんと目を合わせな?ん?


必死にスケルトントリオに目で訴えてみたものの、大人顔負けのスルーをし続けられてしまい、長時間ゴブ郎を待たせるのも可哀想なので席替えは諦めた。


「いただきます」

「ぎゃうぎゃう~」


皆で手を合わせていただきますをすると、皆一斉にカレーライスを食べ始めた。

地球でも大人から子供まで大人気の定番メニューは魔物達の間でも大好評なようだ。

ベリアルは上品にカレーライスを食べ、その味を堪能しては、此方に色々話しかけてくる。

話し方的には多分「美味しい」とか言っているのだと思う。貴族っぽい人でもカレーライスは気に入られるのね。


そして、今回地球の料理初挑戦のイグニはというと、カレーライスの中に転がる野菜を見てかなり嫌そうな顔で此方を見てきたので、好き嫌いするなの意を込めて冷ややかな視線を送ると、渋々カレーライスに対面した。

イグニはカレーライスを一口掬ってマジマジと見た後、渋々と言った感じで一口食べた。

すると、パァッと目を輝かせ、そのままがっつき始めた。

どうやら、かなりお気に召したようだ。しかも辛いのは大丈夫らしい。イケメンがヒーヒー苦しんでる姿を見られるかと思ったのに残念だ。

皿を掴んでガツガツと食べる様はまさに豪快そのもの。あっという間に完食すると、此方に皿を向けてきた。


「****!」

「食べるの早っ」


おかわりをご所望だったようなので立ち上がって持ってこようとすると、ベリアルが私を止めてイグニの皿を受け取ると、お代わり用のカレーが入った鍋へと向かっていった。

別にお代わり出すくらい大丈夫なんだけどなぁ。


「アイネス、************?」

「え、すみません。なんて?」

「***!**********?」

「あー、カレーライスの事かな?」


興奮気味に私が食べているカレーライスを指差してきたので、恐らくなんて名前なのか聞いてきたのだろう。


「これは、カレーライスって言います」

「カレー、ライス?」

「そうです。カレーライスです。」

「カレーライス!******!」

「お気に召したようで何よりです」


イグニは何度も「カレーライス」と連呼しては豪快に笑う。

相当気に入ったようだ。これ、カレーうどんとかカレーパンとか食べさせたら面白そうだなぁ。

しかし、カレーを多めに作っておいて本当に良かった。

この様子だとイグニ達は何杯でもお代わりをしそうだ。

今はゴブ郎が野菜を切ったり皮を剥いたりするのを手伝ってくれるので大丈夫だけど、このまま魔物が増えていけば私だけでは人数分の食事を用意できなくなるだろう。

ダンジョンの居住スペースにもキッチンを作って、家事が出来そうな魔物を呼んだ方が良いかもしれない。

言葉が違うからレシピ本とかでは難しいので私が実際に調理して見せて覚えてもらうしかないだろう。後は此方でも地球のネットにアクセスできるのだったら、タブレットを注文して料理動画を見せるのも良い。

スプーンを咥え考え込んでいると、頭に何かが乗せられた。

ふと横を見てみると、イグニが私の頭に手を乗せて私を撫で回している事に気がついた。

豪快そうな見た目の割に、頭を撫でる手は優しい。


「ちょ、ちょっと…」

「アイネス、*******!」

「うん、何言ってるのかさっぱりですね。」


一先ずその豪快な笑顔の感じるに、私を馬鹿にしている訳でも見下している訳でもないらしい。

頭を撫でられるのはあまり得意じゃないので避けようとしたけど、すぐに手を頭に乗せ直すので、逃げられない。


仕方ないから大人しく撫でられてようか考えていると、後ろから私とイグニの間に誰かの腕が入りイグニの前に山盛りのカレーライスがドンッと音を立てて置かれた。

後ろを振り返れば、私とイグニの背後にベリアルが立っていた。

ベリアルはポカーンと唖然としている私に微笑んだ後自分の席に座った。

なるほど、私が嫌がっているのを察して助けてくれたのかと私は察した。

素知らぬ顔で自分のカレーライスを食べるベリアルに対し、不機嫌そうな表情のイグニがベリアルに声を掛けた


「***、********、***?」

「****、*******。」

「************?********。」

「イグニ**********。**************」

「*******、ベリアル**********。」

「****」

「******」


止めて止めて。私を挟んで口論をするのはホント止めて。

何を言ってるのかさっぱり分からないけど、どんどん二人の雰囲気が険悪になってるから。

美味しそうにカレーライス食べてたスケルトントリオも怯えてるから。歯どころか全身カタカタ震わせちゃってるから。

そしてゴブ郎はこの空気の中でも美味しくカレーライス食べられるの凄いね。ある種の天才だよ。

本当に私の両隣で私の分からない言語で会話するのは勘弁してください。学校の給食で仲の良い二人組が関係のない一人を挟んで楽しげに会話してる時と同じぐらい気まずい。精神がガリガリ削られる。

なんとか助けを求めようとスケルトントリオに視線を向けると、スケルトントリオは思いっきり首を横に振った。

今までこれほど誰かと以心伝心出来た時があっただろうか?拒絶されてるけど。


このままじゃ精神的死を迎える。水を取りに行くという名目で一旦マイホームに逃げよう!

そう思って立ち上がったけど、両隣から腕をがっしりと掴まれた。


「アイネス**、ナニ******?」

「アイネス!*********!」


先ほどの険悪な雰囲気が嘘かのように爽やかな笑顔で私に話しかけるベリアルとイグニ。

いや、だからさ……


「コミュ障にコミュ力を求めるな!!!」



***** *****


それ以来、ベリアルとイグニは毎日のように口論をしているのが目撃される。

会話出来ない私とそれぞれの仲は悪くないんだよ?

でも、言葉が通じ合ってるはずの二人がすごい仲悪いの。

やっぱり言葉が通じてると生き物は争いを生むものなの?だったら私このまま言語スキルないままの方が良いんだけど。


何が嫌かって、ベリアルとイグニが口論をしていると周囲に被害が及ぶのだ。

二人共威圧スキルの持ち主だから口論になると威圧スキルで周囲が恐慌状態になるし、どっちも能力値トップだから弱い魔物達が仲裁に入る事が出来ない。

なのでダンジョンマスターで二人から手を出されない私が喧嘩の仲裁に呼ばれるんだけど、そもそも何が原因で口論になっているのか分からないから仲裁のしようがないのだ。

しかも私が一度彼らの元に来ると二人は私を挟んで口論を続けるし、離れようとすると何故か紅茶や備え付けのお菓子を渡されたり、がっしりと腕と頭を抑えられたりして途中離脱が出来ない。

通りすがりの魔物たちにヘルプを求めても助けてくれない。君達それでも私の配下の魔物?


冒険者たちがダンジョンに来ている昼頃は口論せずに真面目に割り振った仕事をしているのでダンジョン経営に支障はないけど、私と他の魔物達の精神的ストレスが溜まってどうしようもない。

こういう時ラノベの主人公とかだったら二人の仲をどうにかする方法を思いつくだろうけど、残念ながら私はラノベの主人公などではなくただのコミュ障な女の子だ。

自分と周囲の仲も築けないのに人の仲を取り持つなんて私には最も不適格な事だ。


「<オペレーター>さん、なんか二人が私が間に入ることなくたちまち仲良くなるような素敵な方法ってないですか?」

『回答。ありません』

「辛辣!でも知ってた!」


救いの<オペレーター>もこんな感じだった。

分かってたよ、そんな事は。

方や悪魔伯爵の称号の持ち主、方や竜族の王者の称号持ち。

どっちもプライドがエベレスト級に高そうなのだ。

ダンジョンマスターが間に入らなかったら今にも手とか魔法が出る大喧嘩に発展しているだろうね!

誰か二人と同じぐらい強くて間に入れる魔物がいれば良いかもしれないけど、今このダンジョンにいるのは私とゴブ郎とスケルトントリオ、それとウルフ系とアンデッド系の魔物達のみ。

<カスタム>じゃ高レベルな魔物は高額過ぎて私が今保有しているDPじゃ手が届かないし、<ガチャ>は何が出るかわからないからどうしようもない。

ほぼ、詰み状態である。


「はぁ~…どうしたらいいんだろ…。」

『………推奨。一度二人に正式に戦わせてみてはどうでしょう?』

「え、逆に戦わせるんですか?大丈夫ですかそれ?」

『魔物にとって強さは序列階層を作る最も重要な要素です。戦闘によってどちらが優位なのかを明確にすることで、今後の揉め事を減少させる可能性が高いです。』

「どっちが上かを勝負で決めるのか…。確かに良い手かも…」


そんなことで二人の喧嘩の回数を減らせるなら良い。

一度の戦い程度で二人の仲が良くなる訳ではないが、少なくとも口論の回数を減らすことが出来る。

二人が喧嘩しなくなれば他の魔物たちが怯えて過ごす事もなくなるし、私のストレスも減る。

悪くないアイディアだ。


「問題は、二人にどんな勝負をさせるのかだよね…」


純粋な戦闘は駄目だ。場所を用意するのが難しいし、下手な場所を選ぶと周囲に被害が及ぶ。

もしも外なんかで戦わせたら周囲一帯が焼け野原になることは明確だ。

しかし、他の勝負となると、どっちかに有利な勝負になってしまう。それじゃあわだかまりが残ってしまうから駄目だ。

ゲームなら地球の物を幾つか知っているけど、二人がルールを把握できるか不安がある。


「……ネットで良い方法あるか探してみるかぁ。」


こういう時、困ったときこそネットで検索だ。

ネットだったら色々良さそうな物が見つかるかもしれない。

取り敢えず今日という日を乗り越えよう。

それまでに二人がまた口論をしなきゃ良いんだけど…と思った矢先にルートンくんからヘルプが来た。

また二人が喧嘩を始めたらしい。


はぁ…憂鬱だ。


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