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2文字のは良いですけど、4文字のはちょっと…

【名前】リンゴ

【用途】食用。

【状態】新鮮。

【その他】ウサギの飾り切りがされている(*^_^*)


何度も見返してもそれは確かにある。

一見普通の鑑定結果。

しかし圧倒的な存在感を放つ顔文字がそこに存在している。

私はそっと何も言わずりんごの入った皿から目を逸らし横に向いた後、常に持ち歩いているタブレットを懐から出し、再度<鑑定>を行う。


「<鑑定>。」


すると再び鑑定結果の記された画面が目の前に表示された。


【名前】OIPad Pro

【用途】情報収集、カメラ撮影、マップ…エクセトラエトセトラ。(^_^)v

【その他】アイネスが常に持ち歩いている地球産タブレット。最新式多機能電子機器。防水防塵耐衝撃タブレットケースが装着されている。この世界だとちょっと…いやかなりオーバーテクノロジー。(^_^;)なんでこんなの持ってるの?


「やっぱり気の所為じゃない!」


この<鑑定>、顔文字がついている。

AIだったら普通有り得ないような、それこそ人間が使うような顔文字がこの鑑定結果についている。

しかもなんか口調が緩い。

一見シンプルな言葉でそうは見えないように装っているけど<オペレーター>みたいに敬語で畏まった感じじゃなく、どっちかというと現代の地球に生きる若者の感じの口調だ。

あと顔文字のチョイスがちょっとうざい。


「<オペレーター>さん、これが本当に<鑑定>のプロトタイプなんですか?なんというか…口調がものすっごい現代感溢れてるんですが。」

『肯定。プロトタイプ<鑑定>は正常に作動しています。口調はこれが基本です。』

「基本がこれなんですか?!ちょっと馴れ馴れしすぎませんかね?!」

『回答。「スキルのくせに口調と顔文字がうざい」という理由で完全アップデートを余儀なくされたプロトタイプですので。』

「完全アップデートというかそれ、ほぼボツ扱いになったってことですよね?!」


口調と顔文字がうざいとはなんとも酷いアップデート理由である。

気持ちは分かるけれども。


「というかこれ、スキルに心が宿っちゃってません?」

『否定。あくまで相応のシステムが事前に打ち込まれたマニュアルを元に発動しているだけであるため、『心が宿っている』という表現は間違っています。』

「ていうことは<鑑定>でこうなるようにマニュアルを組み込んだ方がいたってことですよね?何してるんですかその方。」

『回答。「所有者に親しみを持ってもらうため」との意見が複数出たためこのような鑑定報告をするように組み込まれました。しかし、創造神達の予想よりも馴れ馴れしいものだったため、一新されました。』

「親しみを持つっていっても限度がありますよ…。」


異世界転移して使ったスキルがこんな顔文字を使うスキルだったら大体の人は「は?」てなる。

親しみを込めるにしても顔文字は止めよう。

顔文字付きの鑑定結果を出す<鑑定>はラノベでだって見たことない。

そんな会話を<オペレーター>さんとしながら今度はスキル名を唱えずに<鑑定>の使用を試みる。


【名前】机

【用途】インテリア

【その他】ちょっとちょっと、さっきから馴れ馴れしいとかウザいとか失礼じゃない?ヽ(`Д´)ノプンプン!自分も好きでこんな喋り方じゃないんだけどー!(●`ε´●)


「やっぱり心あるでしょうこのスキル」

『否定。ありません。』

「いや絶対あるでしょうこれ。その他欄を完全に交換日記よろしく好き勝手に書いちゃってるじゃないですか。スキルが所有者にクレーム出しちゃってるじゃないですか。」

『回答。ユーモアを持たせる為の機能です。』

「ユーモア云々で済ませるどころじゃないですよね?明らかにバグスキルじゃないですかこれ。」

『告。プロトタイプのスペックは現在使われている<鑑定>と変わらぬスペックです。故にそれ以外は目を瞑れば問題ないかと推測されます。』

「まあ、折角<オペレーター>さんが2ヶ月間頑張って使えるようにしてくれたスキルですからね。別に文句は言うつもりはありませんよ。ツッコミは言いますけど。」


そんなことを話していると、何もしていないにも関わらず黒い画面が表示される。


【名前】鑑定 LV1.1

【用途】指定された対象の情報を読み取り鑑定するスキル。

【その他】<鑑定>スキルの原型となったプロトタイプ。それ結局不満言ってるやないかーい\( ̄∀ ̄*)


「とうとうスキル使ってもないのに画面が表示され始めましたよ。やっぱりこれ心ありますよ。」

『…否定。ありません。』

「<オペレーター>さんもちょっと迷っちゃってるじゃないですか。これ心ってなかったらバグが起きてるかなんか幽霊とか取り憑いてますよ。こんな<鑑定>さんに対して<オペレーター>さん、一言どうぞ。」

『回答。ひとまず<鑑定>スキルの自己発動が起きないよう制限出来ないか検討を試みます。』


なんというか、<鑑定>は<鑑定>でもとんでもないバグ<鑑定>を手に入れてしまった。

<オペレーター>がサポートAIスキル業界における超万能型エリートだったらこの<鑑定>は一見ゆとり世代の若者にしか見えない社長?もしくは創設者?

<オペレーター>と良く会話しているのもあってか<鑑定>が明らかにゆるく感じる。

私、こういうゆるーいノリでいつの間にか距離を詰めるタイプの人とか苦手なんだけどなぁ…。そういうのって大概リア充だし。

まあ<オペレーター>からスペックは普通の異世界特典の<鑑定>と変わらないと保証されたのでクレーム送信は止めておこう。

誰がこのプロトタイプ<鑑定>を作ったのかが気になる所ではあるけれど。


「さて、次は<アイテムボックス>ですね。」

『疑問。<鑑定>を使えばスキルのスペックは分かるのではないのでしょうか?』

「私がこの異世界生活で二番目に学んだ教訓は「何事も実際に使ってみないと効果が分からない」ですので、書面での確認だけじゃ信用できないんですよ。」

『疑問。1つ目の教訓とは?』

「美味しい食べ物は種族も言語も関係なく心を通わせる、です。」


この2つの教訓は異世界生活において本当に役立つ。

基本皆美味しい物には目がないし、スキルも実際の効果を知っておけば色々応用のしがいがある。

この2つの教訓だけでも生存率が確実に上がる。

誰かが異世界転移のススメ的な本を出版するのだったらこの2つの教訓を載せて欲しいものだ。


「使い方は他のスキルと同じなんですよね?」

『肯定。その通りです。』

「じゃ、早速使って行きましょうか。<アイテムボックス>」


スキル名を唱えれば、なにもない空間に黒い穴のようなものが姿を現した。

私は試しにリンゴの一切れをその穴に放り込んでみた。

リンゴは何の抵抗もなくその穴の中に入り姿を消す。

そして私が何も言わずとも目の前に<アイテムボックス>の中に何が入っているかが表示される。

此処まではまあ、ラノベやアニメである所の<アイテムボックス>と一緒だ。

問題はその後である。


「これ、どうやったら物を取り出せるんですか?」

『回答。取り出したい物を思い浮かべるか、<アイテムボックス>に手を入れて直接取り出せば良いかと。』

「直接取り出すのはなんか怖いので、脳内イメージにしますね。」


私は先程<アイテムボックス>に入れたリンゴをイメージする。

机の上に手をかざせば、確かに<アイテムボックス>に入れていたリンゴは姿を現した。

姿を現した…のだけれど…


「…<オペレーター>さんや。」

『回答。なんでしょうか。』

「確かに私、リンゴだけをイメージしましたよね?」

『肯定。完璧なイメージでした。<アイテムボックス>から物を取り出すには十分な域です。』

「ではそのリンゴと一緒にくっついて姿を現した、明らかに私の知る蝶よりもツーサイズほど大きいこの蝶々さんは一体なんでしょう?」

『回答。フルーティーバタフライと呼ばれる昆虫です。地球で言うところの蝶と類縁に当たり、花の蜜や果物の果汁を集め腹に貯める特性を持つ虫です。その腹に溜まった蜜は栄養が豊富で、一時的な非常食としても扱われます。』

「なんで生き物であるはずのフルーティーバタフライが生きているのか?とかなんで時間停止機能が機能していないのか?というツッコミはまあプロトタイプ<アイテムボックス>だから、ということでなんとなく説明が付くので百歩譲ってよしとします。しかし、何故入れた覚えのないフルーティーバタフライさんが<アイテムボックス>に入っているのでしょうか?」

『回答。プロトタイプ<アイテムボックス>は全て一つの空間を共有しています。フルーティーバタフライは更新前に入っていたアイテムが残っていたのかと推測されます。』

「更新する前に中身の整理と掃除ぐらいちゃんとしろ!」


私は渾身のツッコミを入れた。

私は昆虫を死ぬほど嫌っている訳でも悲鳴を上げて泡を吹いて気絶するほど苦手でもないけれど、ウサギりんごに結構大きめな蝶々がくっついてたら流石に驚くよ。

プロトタイプ<アイテムボックス>の中身がまさかの過去の所有者達のアイテムまで入った汚部屋ならぬ汚ボックスだとは、なんていうことだ。

誰だ<アイテムボックス>の中身の掃除を怠ったの。

新しい部屋に引っ越す時や新しいスマホに変える時は古い部屋やスマホを綺麗にしなくてはいけないことを知らないのか。

というかこの蝶々、一体どれぐらいの期間<アイテムボックス>に入れられてたんだ?お腹の蜜、もう腐ってしまってるのではないだろうか?


『回答。プロトタイプ<アイテムボックス>の中は個体一つ一つではなく、<アイテムボックス>全体的に時間停止が掛かっています。中の生物は活動することが可能ですが老化することはありません。』

「え、要は簡易的に不老になれる空間ってことじゃないですか。物を入れる以外にも使える良いスキルじゃないですかね。」

『肯定。しかし人間のような知的生命体が<アイテムボックス>に長期的に滞在した場合、時空間のズレによって徐々に精神が崩壊し発狂を起こします。』

「前言撤回。やっぱり物を入れる以外には使えないスキルですね。」


永遠に若いままでいられるといっても、精神崩壊を起こすようでは意味がない。

不老は女性の憧れとも言えるけど、あまりにリスクが高すぎる。

やはり不老は遠い夢の夢か…。


『告。スキルに<不老不死>というものもありますが。』

「不老不死はちょっとご遠慮しますね。不老は良いんですけど、不死がちょっといらないです。」


不老には少し憧れるけれど、不老不死には全く憧れない。

二文字から四文字になるだけだろうと思いますけど、全然違います。

だって不死ってことは何をどうしても、身体が木っ端微塵に霧散しようがその世界が消滅しようが生きてしまうということ。

最初は良いかもしれないけど、何百年、何千年も一人生き続けたら<アイテムボックス>の中にいなくても精神が壊れる。

死ぬというのは、苦痛とか一つの人生の終焉とかマイナスなイメージしかないけれど、一種の解放でもあるのだ。

死のうとしても解放されない生なんて地獄そのものだ。

なので<不老不死>なんてハイリスクハイリターンな危険なスキルは御免である。


『告。どうやら<アイテムボックス>の中にはフルーティーバタフライ以外にも色んなアイテムが貯蔵されているようです。』

「ひとまず、時間を見てちょくちょく整理整頓をしましょうか…。<アイテムボックス>から物を取り出す度に一緒に他の物までくっついてくるのは嫌ですから。明日食べようと思っていたデザートをいざ取り出したら虫が集ってたら大泣きします。」

『了。』


<鑑定>も<アイテムボックス>も手に入り、異世界転移者のスタート地点一歩手前までやって来たと思ったら、スタート地点の一歩斜め後ろに立ってしまったようだ。

本気でクソゲー扱いされるぞ。


「いい加減こういったイベントは回避したいんですが、出来ませんかね?」

『回答。異世界に滞在している限り、貴方の望むような生活は不可能の域かと推測されます。』

「即答じゃないですか。」


やっぱり異世界生活は、良い所が殆どない。



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