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笑顔の代償  作者: 大根沢庵
第三章 君がいたから知った事
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第三章9  『再会』 

「いや「よっ」じゃなくて何でライゼがここに!?」


「それには少し事情があってだな~」


 ここに向かうのは自殺行為だと引いていたはずだ。それなのにライゼは今ここにいる。その事に付いて強く問いかけるのだけど、ライゼはへらへらと笑顔を浮かべながらも後頭部を掻いた。

 そうしてると彼の背後から見慣れた面々が歩み寄って来て。


「なっ、みんなまで!?」


「いや~付いて来ちゃいました。と言うよりかは先回りしちゃいました」


 更に驚愕するとフィゼリアは同じ様な笑顔を浮かべながらもvサインを突き出して来る。纏め役みたいな感じだったウルクスも同じ様にしていて、あろう事かその後ろにはアリスとノエルも立っていた。更にはナナまでも。

 けれどそんな事は知らないクロードは一人顔をしかめたまま。

 やがてアリスが前に出ると強気な笑みを浮かべながら言った。


「みんなが「やっぱり二人の事が気になる~」ってずっと気にしててね。仕方ないからついて行こうって事になって、気づいたらアル達より早く来てたって訳。それにもしかしたらナナの事も分かるんじゃないかって事で」


「んな滅茶苦茶な……! でも森の中を突っ切って来ないと間に合わないはずだし、何より神秘の森はどうするんだ!?」


「森は私の力で突っ切って来た。で、神秘の森は何があろうと壊れない様に強化しまくった上に反撃性も付与しておいたから安心!」


「何か、アリスもみんなに毒されて来てないか……?」


「そう? 元からこんな性格よ」


 みんなの事情は大体把握する。けれどこんな危険な場所に向かって来るだなんて何を考えてるのだろう。……そう考えた事によって今までみんながどんな思いでアル達を止めようとしていたのかを察する。そうか、みんなこんな感覚だったんだ。

 改めてどんな思いだったのかを察しつつも話を聞く。


「あれから話し合ったんだ。俺達はどうするべきなんだろうって。《深淵の洞窟》に向かうのは確かに自殺行為。でも二人はそこに向かう程の価値を見出した。なのに俺達はこのままでいいのかって思ってさ」


「それで考え抜いた結果、俺達も《深淵の洞窟》に以降って結論に至ったんだ。アルを追う為に。そして、ナナの真実も掴むために」


「結構滅茶苦茶だな……」


 考えは分からなくもない。多分、アルも同じ立場だったら同じ事を考え実行するだろうから。でもここに来る以上危険度は理解しているはず。それなのに仲間を追いかける為にここまでするだなんて、口が悪いけど馬鹿のする事だ。

 それにいくらナナが世界のバグだと言っても一緒に連れて行くのは危険すぎる気が。

 けれど、次の言葉でアルは考えを改める事となる。


「二人は俺達の仲間だからな」


「…………」


 そうだ。忘れていた。みんなは「仲間だから」という理由だけで動ける様な人達だった。それ程なまでにみんなは優しい人なんだ。

 それを思い知らされてアルは黙り込む。

 でも、口元に微笑みを浮かべると小さく言った。


「全く、馬鹿な人達だこと」


「馬鹿なのは互い様だろ?」


「そうだな」


 そう言って拳を合わせた。理由がどうであれ戦力が増えるに越した事はない。それにアリスとノエルも付いてきているし、いざとなったら何とかなるだろう。

 考えてみればここじゃ精霊術の結界も無いのだから魔術の力は下がらない。だから安全な事にホッとしつつもクロードにみんなを紹介する。


「アル、彼らは?」


「みんなは一度別れた俺の仲間だよ。先回りされた訳だけど。右から順にライゼ、ウルクス、フィゼリア、ナナ、アリス、ノエルだ。で、こっちは王都で出会ったクリフとジルスの仲間、クロード」


「よろしくな、みんな」


「ああ。よろしく」


 初対面なのに互いに敬語も使わず手を握った。こうしてみるとクロードの性格って結構ライゼに近しい物があるのかもしれない。

 やがて一通りの自己紹介を終えるとライゼは早速提案した。


「それで、アル達はこれからすぐにでも攻略を開始するんだよな」


「もちろん。一先ず第二層まで到達してから後の事を考えようかなって思ってる。……付いて来るんだろ」


「おうともさ。その為にここに来たんだから」


 ここがいつ死んでもおかしくない場所だって分かってるのか。そう問いかけたくなる表情をしながらも答えた。

 何を言いたいかなんて既に分かっている。だからこそ互いにそれ以上言葉を交わさずともそれぞれの準備に入った。


「じゃあ、俺達は準備してくるから」


「おう。ここで待ってる」


 そう言ってアル達は宿に向かった。まぁ、宿と言っても出発する時には部屋を明け渡さなくてはいけないし、すぐにでも出発する気だからあまり宿の意味はない。ただ道端で道具を纏めるよりかは部屋の方がいいと思っただけだ。



 ――――――――――



 しばらくした後に道具を纏めては宿から飛び出るとみんなは売り物に目を付けていて、色んな商品を見つめてはどれを買おうか悩んでいた。

 だから面倒くさそうな事が起りそうと予想しながらも話しかける。


「……何やってるんだ?」


「いやさ、どうせならデカいリュックでも買った方がいいかなって。こういうの」


「こういうのってどういう……でかっ!?」


 けれど視界に入った大きなリュックを見た瞬間に驚愕した。軽くライゼと同じくらいの高さまであるのだから。確かにこれなら全ての荷物が入りそうな気もするけど、ここまで大きなリュックとなるといらない気がする。

 そう思っていたのだけど、どうやらここを攻略するにあたってのキーアイテムにもなるらしい。


「兄ちゃんさてはここに来たばかりだろ」


「ま、まあそうだけど……」


「ならこれを買ってけ。これならいくらでも荷物が入るし、自分の分を入れりゃその分動きが軽くなるぞ! そしてリュックを背負う係の人にゃこれがお勧め!」


 そうして商品を売っているおじさんは装着型の小型クロスボウを取り出した。

 彼の言う通り、荷物持ちと戦闘員で分ければ攻略はスムーズに進むかもしれない。大きなパーティなら尚更だろう。

 ライゼもそう思ったのだろうか、クロスボウを手に取って前向きに検討していた。


「う~ん……いくらリュックがデカくともかなりの重量になるはずだ。それを持てる人は……」


「……えっ?」


 最終的にみんなの視線がアルに辿り着く。ま、まぁアルはみんなより筋力もあるし、この中で戦闘慣れをしていないのはアルだけだ。いつ死んでもおかしくないこんな洞窟の中じゃそんな結論に辿り着くのは当たり前だろう。

 アルも自分で納得しながらもその役割を受け入れようとする。でも、その瞬間にクロードが自らその役割を受け入れようと手を上げた。


「いいよ、別に。俺としては攻略できればいい訳だし。それに俺なら――――むっ?」


「その役割、俺が引き受けるよ」


 その瞬間にみんなは少し反応した。そりゃ、クロードは傍から見ただけでも歴戦の冒険者なんだって事が目に見えて分かる。実際クリフ達と戦っていたのだからその実力は本物なのだけど。

 彼もアルが適役なのは分かっているはずだ。けれど続けてこう言って。


「でも配役的に俺の方が……」


「配役とか適役とか、そう言うのは興味ない。ただ目指したい目標なら、その為に仲間が集ってくれたのなら、自ら先陣を切ってその目標を掴むべきなんじゃないのか?」


「――――」


 お調子者みたいなクロードから出た重い言葉。安全性なんか全部無視し、アルにとって無茶無謀にも等しい事を押し付けようとしている。アルが先陣を切ればどうなるか分かった物じゃないしもしかしたら死んでしまうかも知れないのに。

 ……なのに、そんな不安な言葉に勇気を貰って。


「クロードにそんな言葉は似合わないよ」


「なっ、せっかく良い事言ったのに!?」


「でもありがとう」


 アルに付いて行くだなんて不安だろう。今でも自分が何をしたいのか分からない様な人間なのだ。そんな人間に付いて行くだなんて心配で仕方ないはずだ。

 けれどアルは言うとみんなは頷いてくれる。


「みんな。……俺に、付いて来てくれるかな」


「もちろん」


「その為に来たんだよ」


「ったりめぇだ!」


 するとみんなからそう返されて改めて覚悟を抱いた。

 ……そうだ。みんな、アルの為にここまで足を運んでくれた。それなのにみんなの陰で安全に歩く訳にはいかない。これはアルの目指した目標まで続く道のりなんだから。

 一通りの話が付くとクロードは自分のお金でその巨大なリュックを購入した。


「んじゃ、俺は荷物持ちに徹するとするかな。それに並大抵の敵ならクリフがいりゃ何とかなるだろうし」


「あんまり期待し過ぎるなよ。傷の治りが早いっつっても常人よりも早いって話なんだから」


「わかってるよ」


 そんな事を話しながらも危険区域への入り口に向かう。既にみんなは準備万端。後は攻略を初めてひたすらに下へ進めばいいだけだ。

 緊張感が高まって行く中でアリシアは小さく問いかけた。でも、その答えは彼女にとって残念の様な物になってしまう。


「無茶はしないですよね」


「……分からない。みんなの命が危険に晒されたのなら無茶をしなきゃいけないし、きっと無謀でも立ち向かわなきゃいけない敵も増えて来るだろうから」


「そう、ですか」


 その反応は予想通りのものだった。

 神秘の森の一件でアリシアはアルが神器を介して黒魔術を使う事に抵抗を感じているのだろう。実際アルもあれだけはもう使いたくない。でも、それが危険だからこそ使った際の威力は絶大だった。だからこそまた使う事になるだろう。

 けれどアルは頭を撫でると一言付け足した。


「でも、絶対に死なない」


 するとアリシアの表情は明るくなった。

 そりゃ、あの時に約束したのだ。何があったって死ねない。それにアルも自ら彼女と一緒にいる事を望んでいるんだから。

 やがてキャンプの出入り口にまで到達するとみんなと視線を合わせた。


「それじゃあみんな、行こう!」


「「おー!」」


 そうしてアル達は意気揚々と危険区域の地面を踏んだのだった。

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