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プロローグ
もう秋になる。
空の情景は歩みを見せ、艶やかな世界を構築した。
乾いた空気が風に乗り、僕の肌を過ぎ去った。
美しい情景は、どこで生み出されるのだろう。
こぼれる涙を流す感情は、どうして感じるのだろう。
どれだけ考えても分からない。
分からないから美しいのか。
退屈な毎日、繰り返される日課。
平和に過ぎゆく日々に飽きながらも、僕は現状を気に入っていた。
しかし、そんな平凡な日常は、一人の少女に打ち消された。
恥ずかしがり屋の少女は、あまり言葉を発さない。
それに反して寂しがり屋の少女は、存在の主張を忘れない。
秋の景色に溶け込む少女は、言葉を紡いで音にした。
「私は、いつもここにいるわ」




