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じいとへーゼル

 ここ最近、ノンキ村で犬が凶暴化するという現象が起きていた。それらは村の農作物を食い散らかしたり、人に噛み付いたりして、大変村人たちから危険視されていた。


 みなが犬に対して恐怖心を覚えるようになり、家の中にこもりがちになっていたなか、へーゼルという娘とその祖父、通称「じい」はいつも通り畑を耕していた。


 「じい、じゃがいも掘り起こすからシャベル持ってきて!」

 「相変わらず大雑把な性格じゃのう。ほれ持ってきたぞ」


 じいとへーゼルのいつも通りの会話。しかし、そんな二人の目の前に突然一匹の赤茶色の毛並みをした獰猛な小型犬が現れた。そしてそれは、へーゼルのもとにグルルと唸りながら突進してくる。


 ――ガンッ!!


 へーゼルはシャベルで小型犬の頭を殴打し、気絶させた。犬の頭上にはくるくると星が回っている。その様子を見ていたじいは、頭を抱えて溜息をついた。


 「私に噛み付こうとするなんて、勇気のあるわんこじゃない」


 「少しは手加減してやりなさい……そうじゃ、もう二度と悪さをせんように、あの首輪を付けておこう」


 じいは、木でできた小さな家のタンスから赤い首輪を持ってきては、気絶している小型犬に取り付けた。意識を取り戻した犬が再び襲い掛かろうとしたとき、ビビビ! と微量な電流が流れ、犬はその場で伏せのポーズをした。


 「いったい、何をしやがったこの老いぼれ!」


 聞こえてきたのは小さな男の子のような声である。へーゼルは辺りを見回すが、辺りには二人以外の人はいない。間違いなく、目の前の犬の声だ。


 「この首輪は不思議な力があってな……なんじゃっけ、とにかく不思議な力があるんじゃ」

 

 「ふざけるなよジジイ! 噛み付いてやる!!」


 ビビビッ!


 再び電気がはしり、ふにゃっと地べたに伏せる犬。


 「ねぇじい、不思議な力ってなんのこと?」


 「ほえ、なんじゃったかの」


 「もー、頼りにならないんだからー」


 犬が慎重に立ち上がり、じいの方を向いて、「この首輪を外せ」と吠えるように訴えかけた。悪さをしようとしたら電流がはしると学習したのであろう。もう噛み付こうとすることは無かった。


 「外してやらんこともない。じゃがどうしてお主ら犬が凶暴化したか教えてくれんか」


 「老いぼれ、ここから西の岬にいる魔女、グレーテイルを知らないのか? そいつの魔法で人間を見ると興奮して噛み付いたり悪戯してしまうようになっちまった。ほんとうは自由に暮らしたいのによ」


 「……グレーテイル。はて、どんな姿じゃったか」


 「じい、知ってるの?」


 「……なにか大事なことだったような気が……すまぬ、思い出せん」


 「もー、ほんと頼りにならない! 私その魔女に文句言ってくる」


 「止めといた方がいいぜ。どうせ魔法でやられるにきまってらぁ」


 犬は地面に寝そべりながら目を閉じて尻尾をクルンと巻いた。完全にふて寝である。そんな姿を見てへーゼルは思いついたように、「あんたもついてきなさいよ」と提案した。犬の耳がピンと立つ。それは喜びではなく、恐怖に近い感情で起こったものだ。


 「お前人間だろ、魔女相手にどう戦うんだよ。それにオレはただの雑種犬。おまけにボケ老人ときた! こんなちんちくりんな集まりでどうやって抗うことが出来る」


 「私にはシャベルがある。あんたには牙がある。じいには……なんかある?」


 「ほえ? タンスの中に不思議な力のあるペンダントならあるが……身につけると魔法を使えるようになるという」


 「私の家不思議なアイテムありすぎ!!」


 

 こうして、魔法を使えるペンダントを身につけたじいと、シャベルを持ったへーゼル、首輪の効果で二人から離れられずにしぶしぶ同行するはめになったわんこの物語が始まった――

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