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リバーシブルな日々  作者: 古岡達規
プロローグ
1/18

序章 ー その衝撃は突然に

「……なんだ、これ」


 単純に頭に浮かんだ思いが口から零れた。


 さて。唐突な話なのだが、人間の容姿ってもんはそう簡単に、あれやこれやと変化するものではない。

 我々人間の一般生活における容姿の変化とは、生きていく過程で成長したり、歳を取ったりすることによる、ある程度時間をかけてのものだ。

 変装したりだとか、化粧をしたりだとかといった表面的な変化のことはこの場合除外する。事故や怪我で、とかいう突発的な変化も同様に度外視だ。

 そして、そういった長期的な観点での変化ならば何の問題もない。まぁ極端に変化が少ない人間もいるかもしれないが、それは稀有な例であって普通の人間は年月を経る毎に変化していくものだ。


 むしろ変化してナンボ、である。

 変化しない方が少数派なのだ。

 よしんば変化しない人間がいたとしたら、それは不死の薬を飲んで不老不死になるとか、磯野家の法則が適用されたものぐらいで、最悪人の形をしていても人間ではないかもしれない。


 そう、人間とは常日頃、人生という道のりを歩いていく上で、心身共に刻一刻と変化していくものだ。


 しかしこの場合での“変化”とは、ほんの数日、極端な話僅か数時間での急激な変化をのことを言う。

 髭が伸びた、髪が伸びたというような表面的な変化ではなくもっと大きな変化。例えるならば、朝目が覚めたら昨日たまたま拾ってきた捨て猫が美少女になっていたくらいの大きな変化である。

 いや、流石にこれは大袈裟かもしれないが、イメージとしてはそれぐらいの異常事態が起きたと考えてもらいたい。

 朝起きて、顔を洗ったり歯を磨いたり、どんなに鏡が嫌いな人間でも一日一回、最低でも三日に一回ぐらいは鏡で自分の顔と向き合っているはずだ。

 そこで毎回変わらない自分の顔を拝む。当然、人間の容姿がある朝突然変化しているなんてことはない。


 あり得ない。断じて。


 もし仮に「いや、自分の容姿はある時突然変わったんだ」とか言い張る奴がいたら、そいつは整形手術か何かを受けた者か、あるいは失意のうちに玉手箱を開けた浦島太郎くらいのものだろう。

 あるいは早急に脳やココロのお医者さんに診てもらわなければならないような人なのかもしれない。

 逆に言えば、そうでもなければ人間の容姿というものは短期間で急激な変化を遂げたりしないものだ、ということである。


 ではなぜそんな当たり前のことをいちいち説明するのか、もちろんそれには理由があるからだ。

 その理由と言うのも、話の流れから察していただけるかもしれない。


 要するに変わってしまった人間がいるということだ。


 それもある時突然に。かなりの短時間で。


 それについてこれから順を追って説明していくわけだが・・・、もちろん当人は整形手術なんぞしていないし、玉手箱を開けた浦島太郎でもなんでもない。変化の術も使えなければ、怪盗千四百十二号のように変装の名人だったりするわけでもない普通の日本人、一般的な高校生だった。


 しかし、ある日突然変わってしまったのだ。

 それはもう突然に。何の前触れも無く。


 なんでだろうね?


 朝、いつも通りに起きて洗面所に向かう。そして日常の習慣的な行為として鏡の中の自分と向き合う。多くの人間が毎朝行っているはずだ。件の某(ソイツ)もいつもそうだった。

 だがしかし、今朝に限っていつもと様子が違う。


 見知らぬ少女が鏡の前に立っていた。


 ・・・さて、ここで留意しておかなければならないことがある。それは件の某が男性(おとこ)であると言う点だ。

 ちょうど季節は春。『春眠暁を覚えず』という言葉もあるくらいだから、「なーんか今朝は身体が変な感じがするなぁ、春だから寝ぼけてんのかな……?」くらいに軽く考えた某は、蛇口をひねって冷水で顔を洗い意識に覚醒を促した。

 冷たい水は、まだ眠気が抜けない体に作用し意識を徐々に冴えさせていく。そして再び顔をあげて鏡の中の自分と対面する。


 しかし目の前の鏡に写っている状況は一向に変化を見せない。水も滴るイイ男ならぬ水の滴るイイ女がいるだけだ。件の某は()のはずなのに鏡には()が写っている。


 矛盾。


 先に述べた通り、件の某は本来男性である。

 しかし今現在鏡と向き合っているのは女性。別人ではない、その筈だ。


 自分が右手を上げれば鏡の中の少女は鏡合わせの左手を上げるし、左手を曲げれば少女は右手を曲げるといった具合に、自分が行った動作を鏡に映った少女は模写して見せる。

 昨夜、就寝前に歯磨きをするために洗面所で鏡と向かい合ったときに見た姿は確かにいつも通りの自分だったはずである。服装も寝巻き代わりに着ていた昨夜と変わらない着古されたミズノの黒いジャージ。


 これはどうしたことか。


 わけもわからず何度も冷水を叩きつけるようにして顔を洗うが鏡に映る様子に一切変化は見られない。それならばと自分で自分の頬を叩き、強く両頬をつねる。


ー……痛い


 遂には自分の頭を思い切り殴ったりしてなんとか意識の焦点を現実に合わせようと努力する。

 目を擦り、目頭を揉みほぐし、目を細めて鏡を凝視する動作を繰り返す。何度も瞼を閉じては開いてを繰り返す。

 それでも結果は変わらない。眠気は無くなっても目の前の光景は変わらない。それらの行為はただ単純に件の某(ソイツ)に対して現実を突き付けるだけ。


「な……な……」


 意識がはっきり覚醒していくのとは裏腹に、思考は底無しの泥沼のように混濁していく。


――一体、何がどうなって……


 四月八日午前六時十七分、麗らかな春の朝をこの世の終わりの如き絶叫が切り裂いた。

 初めまして、古岡達規と申します。

 読んでくださった方、ありがとうございます。


 この話の大元を考えたのはもう10年以上前の高校生のときになります。

 いい加減自分だけの中だけで腐らせるのではなく、誰かに読んでもらいたい!と思ったのでこういった形を取ることに致しました。

 高校時代の黒歴史を掘り起こしつつ加筆修正していくのはなかなかに精神的にクるものがありますが頑張って進めていきたいと思います。


 更新は不定期になると思います。下地がある間は周一ぐらいの更新を目標に頑張っていきたいです。


 何分初めてなので投稿の仕方とかタグとか色々間違ってるかもしれないけど許して・・・。


 それでは、また。


H31.3.26 微修正

R1.6.10 微修正

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