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『枯れ木の上の幼女』

 昨日はペルじいとしゃべっているうちに寝てしまってたようだ


「もう起きた?今日は早いね」

「シャイナこそちゃんと寝た?」

 朝日が昇る前で、気持ちいい朝だった


「でかくなってない?」

 昨日は、歩く人参くらいの大きさだったドーラは、歩く大根になっていた

「昨日いっぱい食べたからね。モリモリだね」

「お金が心配だな」

「ご主人なら、きっと大丈夫だよ」

「だといいんだけど」

「なんじゃ、お二人とも起きとったか」

「ペルじいも早いですね」

「あんちゃんの痛み止めのおかげで、昨日はぐっすりじゃ」

 薬草調合書のおかげで、ペルじいの傷もふさがって、痛みもなさそうだった


「じゃ、朝食作るよ」

「うん、お願い」

「朝ご飯食べたら、帰るとするか」

「そうですね」

 シャイナが朝ご飯を作ってる間、ペルしいと今後のことについて話した

「どうしたもんかのう」

「骨折ですもんね。治るのに結構時間掛かりますよね」

「ワシが仕事できないくらいだったら、大丈夫なんじゃが、あんちゃん大丈夫かい?」

「俺ですか?」

「二日しか、こっちにおれんから、大変じゃろ」

「そうですけど、まぁ、ここまでお世話になってるので、俺のことは心配いらないですよ」

 ここまで、お世話になりっぱなしなのに、こんな状態でも心配されていた

「運よく、しばらくの蓄えもありますし」

「そう言うんじゃったら、ワシも安心じゃ」

 そうこうしているうちに、朝ご飯もできて、キャンプの全員で食卓を囲むことにした


「しかし、よく食べるのう」

「ニーーー!」

「喜んでるみたいですね」

「食費が心配じゃな」

「ご主人だし、大丈夫だよ」

「だといいんだけど」

 ドーラが朝食を食べ終わるのを待って、三人と一匹で村へと二時間かけて戻ることにした

「帰りは馬いらないんですか?」

「居残り組が最後に片付けていくわい」


 キャンプを出発して一時間ほど歩いたところに、五メートルくらいある枯れ木があって、その先端に何か引っかかっていた。近づいてみると、五歳くらいで、ブロンド長髪の女の子だった。しかし、ペルじいもシャイナもドーラも反応がなかった。もしかして、俺にだけ見える異世界座敷童かもしれない

「あの~すみません、変なこと聞くんですけど、枯れ木の上に女の子引っかかってません?」

「引っかかっとるな」

「ですよね」

 ペルじいには見えてた

「シャイナも?」

「うん」

 シャイナも見えてた

「ニーーー!」

 たぶん、ドーラにも見えてる

 しかし、誰も歩みを止めない

「かかわらん方がええ」

「おーい!」

 枯れ木の幼女に呼び止められた

「そこの冴えないやつと、じじいと、かわいい赤毛の子と……根っこ」

「なんか女の子、呼んでるみたいですよ」

「無視じゃ」

「おい!聞こえておるぞ!じじい!」

「聞こえてるみたいですよ」

「モンスターじゃないのか?」

「我はモンスターなんかではないわ!」

「モンスターじゃないみたいなんですけど」

「……しょうがないな、話だけでも聞いてやるか」

 とりあえず、三人と一匹で枯れ木の根本まで行った

「そこのヤツ!どうしたんじゃ?」

「よくぞ聞いてくれた!我は今、わけあって力を奪われておる!そして、力を取り戻そうと住んでいた城を飛び出したのはいいものの、場違いなハーピーの群れに襲われて、今、この枯れ木の上に引っかかっているところだ!」

 間接的な黒い塊の被害者だった

「じゃあ、帰るとするか!」

「あ~~!ちょっと待って!お願い!」

「引っかかった理由はわかったけど、力を奪われたわけは教えてくれないの?」

 俺の問いに対して少し間をあけて口を開いたが「すまん、今は教えることができん!」と秘密のままだった

「わけも教えてくれんようじゃし、帰るとするか」

「おい!じじい!聞こえとるぞ!」

「じじいって言っておるし、帰るか」

「お~い!ちょっと待ってくれ!悪かった!すまん!」

「すまん?……帰るか」

「もう!わかったから!すみませんでした!」

「まったく、しょうがないな、で、なんの用じゃ?」

「まぁなんだ、その~、非常に申し上げにくいんだが、ここから、下ろしてくれんか」

 全員が想像していた答えだった


「下ろしてくれって言っても、中々、高いしなこの枯れ木。しかも枝が折れそうじゃし、どうしたもんかのう」

「う~ん……クロスボウの矢を打ち込んで、梯子みたいにするのはどうでしょう」

「あんちゃんのクロスボウで矢を打ち込んだら、木が折れるわい」

「じゃあ、僕の矢だったら、いい感じに刺さるんじゃないかな」

「そうじゃな……その手でやってみるか」

 シャイナが矢を木に等間隔に打ち込んで、何とか登れそうにはなった

「何とか登れそうですけど、誰が行きます?」

「ワシは骨折じゃしな」

「俺が乗ったら折れそうだし」

「僕、女の子だから」

「えっ?」女の子だから安全に登れるんじゃ

「でもこの中だったら、シャイナじゃないかな?」強化魔法使えば簡単だろ

「でも、僕、女の子だし」

「えっ?」シャイナはかたくなだった

「そうじゃな、女の子にはやらせられんな」

「後、僕、スカートだし」

「えっ?俺、見ないよ」

「だって、今朝、全裸でベッドに入ってきたもん。絶対見るよ」

「誰でもいいから!早くしてくれ~!」

「男らしくないヤツじゃな」

「ほら、ご主人、あの子待ってるよ」

「せっ、せめて強化魔法かけて」

「あれ自分専用なんだ」


 結局、俺になった

「チクショー、なんで俺なんだよ」

 矢と木の枝を足場に何とか、幼女の近くまで登った

「おい、助けに来てやったぞ」

「そうだな、早く下ろしてくれ」

 下ではよく見えなかったが、クソ生意気な幼女は、服の背中が木の枝に引っかかった状態で、腕組みして、仁王立ちというか、仁王浮遊をしたまま、あどけない長いマツゲのぱっちりおめめで、こっちを見下していた。しかも、スカートの中の白いパンツが丸見えだった

「なんだ?早く下ろしてくれ」

「ちょっと待って」

「あっ、もしかして、お前、我の純白のパンツに見とれているか、欲情しているな。まったくしょうがない奴だな」こんな幼女から、欲情という言葉を聞く日が来るとは、異世界も末だ

 見とれても、欲情もしていないが、純白パンツは悪くない景色なので、しばらく、生意気幼女の言い分聞いてみることにした

「まぁ、我ほどのダイナマイトバディに欲情するのは仕方ないことだが、そういうのは下りてからにしてもらってもよいかな……ん~もうそろそろ、下ろしてくれんか?なんだ、その~恥ずかしいから下ろしてほしいな」

 そろそろ、恥ずかしくなってきたか

「まぁ、我の純白パンツに見てれているのだったら、もう少し、見せてやってもいいが」

「いいか、俺は幼稚園児みたいな幼女には、欲情もしないし、見とれてもない。お前がその態度だったら、俺もお前を助けずに一人で下りてもいいんだぜ」

「すまん、悪かった、下ろしてください」

 間髪入れずに謝ったので、幼女を木から外してやった

「じゃあ、下までおぶってやるから」

「いやだ、一人で下りれるわ!」

「いや~お前の手足の長さじゃ足りないよ」

「そんなことはどうでもいい!」

「じゃあ、何だよ」

「さっきから、お前のその嘗め回すようないやらしい目線、性的に興奮した鼻息。背中で我の胸の感触を感じようとしているだろ!」

「しねぇよ!そもそもお前に嘗め回すほどの身長もなければ、こんだけの高いとこに登ってきたんだから鼻息くらい粗くなるわ」

「ウソをついておるな!」

「じゃあ、いいよ、一人で行ってみろよ。もうおぶってやんないからな!」

「フンッ、こっちからお断りだ!」

 俺がギリギリ登った足場なので、幼女にはもちろん、下りれなかった


「どうだ、無理だっただろ。なんか言うことはないのか」

「すまんかった、我を下ろせ」

「すまん?」

「すまん」

「……」大人げないのはわかっているが、この幼女の教育にもよくない

「すみませんでした。下ろしてください」

「しょうがないな」

 ということで、幼女を背中におぶって、下まで下ろしてやった

「そこの三人と根っこ、助けくれたことに感謝する」

「感謝してくれるのはいいけど、これからどうすんの?」

「我から力を奪ったヤツを倒しに行くだけだ」

 ハーピーにも負けたやつが、何を言ってるのだろうか

「誰が力を奪ったのかも言えない?」

「すまん、今、何も言えない」

「君の名前も?」

「すまん、まだ、言えんのだ。しかし、力が戻ったら必ず礼はするぞ」

「礼?いいよいいよ、困ってる人がいたから助けただけだよ」

「困ってる人がいたから助けただけ?最初、無視して逃げようとしていたよな……まぁよい、一応、命の恩人だ、力が戻ったら必ず礼はする」

「そう?気にしなくてもいいよ」

「じゃあ、そこの冴えないの手を出せ」

 幼女に右の手のひらを差し出すと、幼女が目から光を出して、俺の手のひらに小さい魔法陣が現れた

「まぁ、詳細は言えんが、役に立つ印だ」

「うん、あっありがとう」

「じゃあ、帰るとするかのう」

「ちょっと待ってくれ」

「まだ何かある?」

「助けていただいて、押しつけがましいのはわかっているが、我は昨日の夜にハーピーに襲われてから、何も食べてないんだ……何かたべものを分けてくれんか?」

「なんかあった?」

「う~ん、ドーラがいっぱい食べちゃったから」

 ほとんど空のカバンを漁ったが、パンが一個しか残っていなかった

「ごめん、今、こんなものしかないから、一回村に来る?」

「そのパンだけでよい」

「ホントに村に来なくてもいいの?」

「気持ちはありがたいが、今、急いでいるから、またの機会にお邪魔する」

「じゃあ、これどうぞ」

「感謝する」

 少ないが幼女にパンを渡したら、ドーラが俺のズボンを引っ張ていた

「なんだ?」

「ニーーー!」

 ドーラの手には黄色いまん丸の木の実が握られていた

「これ食べてって」

「えっ?これ?ドーラが言ったの?」

「うん、ドーラが実らせた木の実だって」

「実らせたの?」

「ニーーーー!」

「うん、栄養たっぷりだから、おいしいはずだよって」

「毒とかないかな」

「ニーーーーー!」

「失礼なこと言わないでって」

 確かな通訳だといいんだが

「なんで、言葉わかるの?」

「女の子同士通ずるものがあるんだよ」

 ドーラは雌か、雌しべみたいだ

「じゃあ、これもどうぞ」

「感謝する」と言って、パンと木の実を持って、幼女は森の奥へと消えた

「本当に大丈夫かな」

「不思議な子どもじゃったな」

「そうだね」

「じゃあ、改めて帰るとするかのう」

「そうですね」

 不思議な出会いがあったが、帰ることにした


「ねぇご主人」

「うん?」

「あの子、最初、ご主人のことは冴えないヤツって言ってたよね」

「うん」

「じゃあ、問題です」

「はぁ」いきなりクイズが始まった

「変な女の子に呼び止められた時、ペルじいのことはじじいって言っていましたが、僕のことは、なんと言っていたでしょうか」

「う~ん……テレフォンってあるんですか?」

「何それ?」テレパシーって言った方が通じたかもしれない

「じゃあ、ヒントは?」

「ありません」

「う~ん……すみません。わかりません」

「もう、記憶力ないな、ご主人は、正解は『かわいい赤毛の子』です」

「そんなことも言ってたな」

「ねぇ!なんでわかんなかったの?」

「そんなこといちいち気にしてないよ」

「あのさぁ、ご主人」

「うん?」

「うん?じゃなくて……なんだろう。ご主人はもっと正直になった方がいいと思うよ」

 説教が始まった

「正直に生きているつもりなんですが」

「だから、そういうことじゃないんだよなぁ」

「どういうことなんですか?」

「聞いちゃうとこだよね。ダメなとこ」

「じゃあ、なんていえばよかったんですか?」

「ほんっと人の話聞いてないね、ご主人は」

「ん?」

「もういいよ」

 スネやがった

「ほら、もう村に着くぞ」

 無視だった


「一日も見んうちに、すごいことになっとるな」

 昨日出かけた時比べて、かなり、人が増えていた

「騎士団が増えてますね」

 村の中心の臨時集会所には、昨日から二十人ほどの騎士団が増えていた

「騎士団じゃあ、なさそうじゃよ」

「あれ、聖道士だよ」

「聖道士?瘴気毒対策かのう」

 村に増えたのは、騎士団ではなく、聖道士と呼ばれる浄化魔法、回復魔法などが得意な魔法使いの集団でこっちの世界では衛生兵的な役割らしいが、今回は瘴気毒対策として呼ばれたみたい

「まぁワシらが騒いでもしょうがない」

「ですね」

「昼飯じゃあ!」

 シャイナが昼ご飯の準備している間、ペルじいと換金所へ、報酬を確認しに行った


「討伐報酬とマンドラゴラの買い取り額を合わせて、十二万エレクだな」

「まずまずじゃな」

「じゃあ、あんちゃんは八万エレクで」

「いや~悪いですよ」

「今回も完全にあんちゃんの手柄じゃ、受け取ってくれ」

「そうですか~じゃあ、お言葉に甘えて」

 今回も運よくいい儲けになった

「じゃあ、帰るか」

 やっぱり家の小窓から、モクモクと煙が上がっていた


「ただいま~」

「あっご主人、おかえり~、報酬どうだった?」

「十二万」

「儲かっちゃったね」

「これで心おきなく向こうに帰れるよ」

「ドーラもお腹いっぱいごはんが食べれるね」


 雰囲気が完全に新婚だ


「植木鉢とか買ってあげた方がいいかな」

「僕が明日買っとくよ」

「ニーーーー!」

「なんて?」

「木製の植木鉢がいいって」

「そうなんだ、任せるよ」 

 シャイナと雑談している内にご飯ができた


「できました!雪原豚のとんかつとシャイナ特製ニードルフラワーソースです」

「ニーーーーーーーーー!」

 揚げたての山盛りとんかつと真っ赤なソースにドーラも、超絶ハイテンションだった

「じゃあ、冷めないうちに食べて」

 寒冷地育ちの雪原豚はとろけるような脂身で、香りがいいソースとグッドコンビネーションで、文句なしの昼食だった

「ご飯の後、どうしようか」

「ご主人、体が貧弱だから、僕が強化魔法を教えてあげるよ」

「じゃあ、後、二時間寝てから、館行こうか」

「うん、わかった」

 二時間後、シャイナとドーラを連れて、館へ向かった。道中、騎士団の集会場を覗いたところ、けが人が増えているようだった


「じゃあ、まずこれだね」

「骨格強化魔法?」

「うん、これで腰痛から解放されるよ」

「じゃあ、やってみるか」

 夕方までシャイナにみっちり教えてもらったが、最終的に視力強化と跳躍強化しか覚えられなかった

「はぁはぁなんでこんだけしかできないんだよ」

「まぁ最初だし、仕方ないよ」

「クソー」

「心配しなくても、僕がエンチャント魔法できるし」

「しかし、疲れるな魔法って」

「ご飯にしようか」

「そうだね」


 ふらつきながら、家に帰って晩御飯を食べた後、特にやることもないので、シャイナと雑談して、寝ることにした。今回もビジネスパートナーの骨折以外は、特に変わったことはなかった。しかし、あの騎士団のけが人の量、心配だな

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