『調合書翻訳』
「カーダ村に到着しました」
「着いたようじゃから荷物下すとするか」
沈黙が続いた馬車から解放されたが、街で買いこんだ大量の荷物が待ち構えていた
「腰がいてぇなぁ……えっ?」
木箱一個で俺の腰は音を上げていたが、シャイナはピーンと張った背筋で木箱三個を持ち上げていた
「力強いんだな」
「俺、身体強化魔法も得意だから」
「へぇ~」
どうやらシャイナは俺にはない魔法の才能があるらしい
「ん?なんじゃ!あれは」
腰の痛みと戦いながら、家に荷物を運んでると村の中心に馬にまたがった軽装甲冑の騎士らしき人が四人くらいが村長と話をしていた
「お~い!カスペル!ちょっとこっちに来てくれい!」
「なんだい?村長」
「騎士団から先に斥候をよこしてもらったんじゃ!」
「さすが騎士団は仕事が早いのう」
「無駄話はええから早く森の話を聞かしてくれ」
「まぁまぁ焦らんでも斥候の皆さん、お茶でもどうですかい?」
「カスペルさんのご厚意、感謝いたしますが、今は森の異変について、調査任務中ですので、任務終了後によろしくお願いします」
「そうかい?それは仕方ないな……でも、ええお茶じゃよ」
「ええから早く話さんか!」
村長が街で要請していた騎士団から斥候が来たみたいで、いつもは穏やかなカーダ村の空気が少し張りつめていた
「どうしたの?」
「なんか近くの森がおかしいみたいなんだよ」
「結構ヤバイ?」
「俺も昨日この村に来たからわかんね」
「そうなんだ」
「まぁ森のことは騎士団の皆さんに任せて、ちゃっちゃと片付けようか」
「うん、わかった」
とりあえず、山ほどある荷物を家に運び入れて、荷解きの前に軽く休憩することにした
「はぁはぁ……とりあえず、こんなもんか」
「そうだね」
「まぁまぁ座ってお水でも飲んで……今、自然魔法で出すから」
「大丈夫、自分で出せる」
そういうとシャイナは、手のひらから蛇口並みの水量で、元々家にある、生理的に受け付けないほど汚れているコップで、俺の分まで水を出してくれた
「はぁはぁ……ありがとう」
「大丈夫?残り、俺がやろうか?」
「な~に大丈夫だよ、少し休めば」
「そう?」
奴隷を買ったんだし、メイドだし、家事の部分を全部メイドに任せるのはおかしくないだろうと、心の中で思いつつも、結局二人で荷物を片付けた
「やっと片付いたね」
「はぁはぁ……うん」
「座ってお水飲む?」
「……うん、そうするよ」
今度は、街で買ったきれいなコップに水を注いでくれた
「ふぅ~これで新生活も完璧だな」
「なんか立派な家だね、こんなところ初めて」
「初めて?」
「うん、旅の盗賊団だったから、廃墟とか、洞窟とか、そういう感じのとこ住んでた」
「なんかアジトとかに住んでるって思ってた」
「騎士団とか、賞金稼ぎとかにすぐ嗅ぎつけられるから大変だった」
「命がけだな」
「でも今日から、こんな立派な家に住めるから、頑張って生きたかいがあるよ」
運よくもらっただけの家だが、ほめられるとなんだか、気分がいいというか、ニヤついちゃうというか、なんというか
「そう?まぁ狭いとこだけどくつろいでよ」
「うん、ちゃんとくつろぐ。ありがとう」
なんだかシャイナの表情が、檻に入れらていた時よりは、若干、明るくなった気がしないでもない
「ということでね」
「ん?」
「まぁなんか成り行きで言ったけど、メイドとしてやってもらうんだけど大丈夫?」
「大丈夫って?」
「大丈夫って、嫌じゃない?ってこと」
「俺、なんでも大丈夫だよ。奴隷として買われたから、メイドでも性奴隷でも、なんでも大丈夫」
「性奴隷?……はさすがに……」
「兵士に捕まった時から覚悟はしていたから、必要になったら大丈夫だよ」
「お言葉はありがたいけど、間に合ってるというか、うん」
「わかった、じゃあメイドで頑張る」
めちゃくちゃそそる提案だったが、一応、こっちの世界良いことをするようにって神様に言われてるわけだし、きれいな関係のメイドとしていてもらうようにした
「でもメイドって何すればいい?俺、ずっと盗賊だったから」
俺もテレビでメイドカフェを見たことあるくらいだし、どうしよう
「う~ん……そうだな……家事とか、料理とか?」
「家事とか、料理?」
「後は……お帰りなさいませご主人様とか?」
「うん、でも家事とかやったことないけど、どうしよう」
「お隣のおばあちゃんに教えてもらおうか」
「俺、できるかな」
「あまり難しいもんじゃないし、大丈夫でしょ」
「うん、頑張る」
「後、自分のこと、ずっと俺だった?」
「うん、周りのみんながそうだった」
「なんかメイドには上品なイメージがあるからもっと上品に?」
「上品?」
「上品!」
「う~ん……ボク?」
「ボク?」
悪くない!
「それで」
「じゃあ僕でいく!」
「あっ、説明しないといけないことがあるんだった」
「うん?」
正直に話してもいいって言ってたし、シャイナには、こっちの世界の人じゃないことと週末しかこっちの世界にいれないことを全部話した
「ということは、一週間で二日しか、ご主人に会えないってこと?」
「うん、そういうことになるね」
「なんだか、寂しいね」
「寂しい?」
「うん、寂しい」
「ほんとに?」
「うん、寂しい……でも、僕、ご主人のために頑張る」
「そう言ってもらえると……」
ため口、ボクッ子、メイド、元盗賊……なんだか、よくわからないキャラが増えすぎたような気もするが、平穏にやっていけそうだ
「じゃあ、まずは、何したらいい?」
「早速、家事でもって言いたいところだけど、ペルじいと館で用事があるから先にそっち行くか」
「うん、わかった」
騎士団によるペルじいの取り調べも終わったころだと思うし、シャイナと呼びに行くことにした
「すみませ~ん」
「は~い、ちょっと待ってくれい!」
家の前にある竹のベンチで、座って待ってるとペルじいが慌てて出てきた
「すまんのう、待たせちゃって」
「結構、時間掛かりました?」
「そうなんじゃ、やつら頭が固いから、何もかも細かく聞くんじゃ!」
「そうなんですね」
「じゃあ行こうかい!村のみんなも待たせておるからのう」
三人で館へ向かうと、村長を中心に八人くらいの村人が集まっていた
「お~い!カスペル!遅いじゃないか!」
「ちょっと待ってくよ!村長、ワシは悪くないんじゃ、斥候さんたちの話が長いんじゃ!」
「まぁええわい、で、あんちゃんがセイシュウ大師の残した調合書を読めるって本当なんか?」
「そうですね、読めましたね」
「そうかい?じゃ早速セイシュウ大師のレシピ再現するとするか」
「行きましょう!」
館の中に入ると、乾燥した薬草や、薬草をすりおろすであろうすり鉢や、蒸し器のようなものがたくさん並んでいた
「どれからやります?」
「そうじゃな……簡単そうなのはどれじゃ?」
「そうですね……この瘴気毒?に対する回復薬とかどうですか?」
「それにするか」
「え~っと……まずは乾燥バンガフルーツの粉末小さじ二杯と山麦大さじ三杯を三分くらい蒸してから搾油機にかけてじっくり中の油を搾る」
アナログな搾油機の隙間から少しづつ、油が染み出てきて、お椀にたまっていく
「それで?」
「で、その油を樹液とイモデンプンに練りこんで丸薬にする」
「簡単だができたようじゃな」
本に書いてある通りの作り方で、茶色い丸薬ができた
「効果を試したいところじゃが、あいにく今、瘴気にやられとるやつがおらんから、次いくか」
「じゃ止血剤にも使える傷薬とかどうですか?」
「そうじゃな、よく使うし、ええじゃろ」
「じゃあ、いきますよ」
「おうよ!」
「まずは、死人カズラの花とバシリスクに抜け殻をドロドロになるまで煮込む」
奥で遊んでいたシャイナが急に口を開いた
「この花、戦場跡によく咲いてるよ」
「死人カズラっていうほどだしね」
死人カズラについて聞いてみたところ、動物性たんぱく質を栄養にする植物らしく、死人にもよく生えるからこの名前になっているという
「ちょっと時間がかかるのう」
「煮込めるまでほかの奴作ります?」
「そうじゃな」
死人カズラの花とバシリスクの抜け殻をドロドロにしている間に、簡易用の痛み止めと魔力増進薬と麻酔薬ができた
「一気にできましたね」
「じゃあ、わかりやすい痛み止めから試すやつはおらんか?」
痛いことされるかもしれないので、当然誰も名乗り出なかった
「仕方がないな、カスペル!」
「ちょっと待ってくれ!村長!痛いことする気なんじゃろ!」
「ええから、ちょっとだけにするから」
「あっ俺やりましょうか?ちょうど腰痛いんで」
「そうかい?……じゃあ、飲んでみてくれ」
土のような味がする液体を飲み干すと、すぐに腰の痛みが消えた
「どうじゃ?」
「全然、痛くないです」
「ここまで即効性があると思わんかったな」
「こっちも煮あがりましたよ」
「そうかい、じゃ傷薬作ろうかい」
「え~っと、ドロドロになったら……鉱山ゴケとトゲコンブと一緒に練って軟膏状にしていく」
「鉱山ゴケじゃと?毒の調合に使うもんじゃぞ!」
「でも本にはそう書いてあるし」
「とりあえず、やってみたらどうじゃ?村長」
「わかったわい」
全部素材を混ぜ合わせて練っていくと、ドス黒い軟膏が出来上がった
「で、誰が試すんじゃ?」
毒の材料が使われていると言っていたので、もちろん村人のみんなは静まり返っていた
「じゃあ、僕、ちょうどケガしてるからやるよ」
「村にこんな若いお嬢ちゃんいたか?」
「あんちゃんちのメイドじゃよ」
「そうかい、じゃあ、やってもらおうか」
「ほんとにいいの?」
「大丈夫、任せて」
周りの心配する顔をよそに、村長はシャイナの手首に黒い軟膏を塗りたくっていく
「どうじゃ?」
「ちょっと染みるかな」
「やっぱり毒、含んどるか」
「……いや、カスペル、傷が治っとるぞ」
「ほぇ~すごい速さで治っとるのう」
一分も経たない内に、シャイナの手首にあった傷は痕もなく治っていた
「帝国魔術師並みの回復力じゃな」
「そんじゃ、この調子でもう少しやるか」
その後も、カーダ村の総出の薬作りは続き、日が暮れるまでに本に載っている半分くらいの薬を再現することができた。そのうち半分はまだ実験していないが、実験できたものの中に失敗しているものはなかったので、おそらく、全部成功だろう
「今日は、こんなもんかのう」
「そうじゃな、残りはしばらく経ってからにするか」
「そうですね、なかなか疲れますね」
「じゃあ、帰ってごはんじゃ!」
「そうじゃな」
「どうじゃ?あんちゃんとお嬢ちゃん、今日もごはん食べていくかい?」
「迷惑じゃなければ」
「もちろんじゃ!」
二日連続でごちそうになるのは申し訳ない気もしたが、シャイナも村に来たばかりだし、歓迎会的なノリでお邪魔させてもらうことにした
「あっすみません、一ついいですか?」
「なんじゃ?」
「シャイナのことなんですけど、ずっと盗賊だったみたいで、おばあちゃんに家事とか、料理とか教えてもらえないですか?」
「そうじゃな、問題ないじゃろ」
「いいですか?すみません」
「ばあさんの話し相手が増えて助かるわい」
「いえ、こちらこそ助かります」
「あんちゃんがおらん間、お嬢ちゃんも寂しいだろうしな」
「そうですね、気持ち汲み取っていただいて、ありがとうございます」
「ええんじゃ、気にせんでも」
三人でペルじいの家に向かっていると、いつも通り、煙突から煙がモクモク上がっていて、いい匂いがしていた
「ただいま、ばあさんや」
「は~い、おかえり、ご飯できてますよ」
「お邪魔します」
「お邪魔します」
「あら!こちらの若いお嬢ちゃんは?」
「シャイナだ」
「シャイナちゃん?」
「あんちゃんちのメイドじゃ」
シャムばあにシャイナのことを説明したところ、話相手が増えて楽しくなりそうって言って、快く、花嫁修業的なことを受けてくれた
「今日は疲れたから早く食べて、さっさと寝るか」
「そうですね」
今日の献立は、中華っぽい味付けの野菜炒めとパンとアメリカのB級ホラー映画に出できそうなギガントカミキリムシの丸焼きで、野菜炒めとパンはもちろんおいしいと思うが、問題はこの仰向けでこんがり焼きあがっている巨大カミキリムシだった
「この虫食べるんですか?」
「もちろんじゃ」
「ご主人、嫌い?」
「嫌いっていうか、食べたことないんだよな」
「珍しいのう……じゃあ、開くぞ」
「開く?」
「このままじゃ、殻が固くて食べられんじゃろ」
そういうと、ペルじいは、ナイフを巨大カミキリムシの腹の部分に差し込み、殻を割るようにお腹を開いた
「ひょ~うまそうじゃな」
全体で見ると気持ち悪いが、殻の中からは湯気とともに、白身魚のような身が出てきた
「さぁ食べるかのう」
「あんちゃん食べないのかい?」
「えっと……た、食べます」
恐る恐る巨大カミキリムシの身を口に入れてみたら、魚と鶏ささみの中間のような歯ざわりで、淡白な味わいがシャムばあお手製の、酸味のあるソースと相性抜群だった
「どう?ご主人、食べれそう?」
「うん、おいしい」
気持ち悪い見た目で嫌悪感を示していたが、結局きれいに完食した
「腹いっぱいじゃな」
「すみません、今日もごちそうさまです」
「ご馳走様」
「じゃあ、お嬢ちゃんは明日から来るってことでええかい?」
「はい、お願いします」
「明日から頑張る」
「楽しみだねぇ~」
ペルじい夫妻にお礼を言って、家に帰った
「ふぅ~おいしかったね」
「うん、あんなおいしい物初めて」
「そうだよな、盗賊ってあまりおいしそうな物食べてない気がする」
「肉、焼いただけのヤツが多い」
「そうなんだ」
「今日も、もう遅いからお風呂沸かそうか?」
「そうだね」
シャイナにお風呂を沸かしてもらってる間に少し部屋の片づけをしていたら、蘭子さんから通信が来た
「お~い!元気でやってる?」
「はい、結構順調にやってます」
「そのようだね」
「あの~それで、こっちから戻るときのことを聞きたいんですけど」
「ちょうどそのことを説明しようと思ってたとこ」
「あっお願いします」
「まず、元の世界からの移動は全部、教会からすることになっていて、この後、元の世界に戻るときも教会に戻されるから」
「はい」
「で、こっちから移動するときのことなんだけど、帰りは勝手に教会に戻ってるけど、行きは初回以外は魔法陣で場所を指定できることになってるの」
「はぁ、どうやって指定するんですか?」
「私に言ってくれれば、その都度変更できるよ」
「じゃあ、この家のベッドで」
「了解……で、魔法陣なんだけど、いない間どうなってるか、わかんないから移動させることができる権利を誰かに預けてもいい決まりになってるけど、どうする?」
「移動させる権利?」
「例えば、この家が燃えちゃったりとか、強盗に占拠されたりとかした場合、魔法陣が消えてしまうと、こっちに来れなくなるから誰かに魔法陣を持ってもらうってこと」
「う~ん……」
「メイドちゃんにしちゃえば?」
「そうですね」
ということで、シャイナに魔法陣を預かってもらうことにした
「どうしたの?お風呂もうすぐだよ」
魔法が得意だと言っていたが、両手からキャンプファイアーくらいの火炎を出して、お風呂を沸かしていた
「えっと、薪使っていいよ」
「こっちの方が早いから」
「お風呂の前にちょっといい?」
蘭子さんの声はこっちにも聞こえているらしいので、魔法陣のことを説明してもらった。幸い、シャイナは魔法が得意なので、すぐにやり方を覚えてくれた
「じゃあ、もろもろ良さそうだね」
「ですね」
「じゃあ、明日の朝、教会で待ってるから」
「わかりました」
そうこうしてると、お風呂が準備できたみたい
「ねぇ、ご主人」
「ん?」
「一緒に入ってもいいけど、どうする?」
「えっ?」
「一緒に入る?」
「大丈夫……一人で入る」
「そう?わかった、じゃ後で入る」
奴隷をメイドとして買ったわけだが、俺は天罰として、こっちにいるわけだから、なんとしてもきれいな関係で過ごす努力をしないといけないわけで、絶対に変なことはしないつもり
でもお風呂くらい、タオル巻いてもらったら、いいかもしれないけど
「上がったよ」
「わかった、じゃあ入る」
シャイナがお風呂を上がったところで、寝るまで時間があるので、街で買ったハーブティーを飲みながら、世間話をした
「ねぇ、ご主人はなんでこっちの世界に来てるの?」
「ちょっと悪いことしちゃって、なんか天罰みたいなことでこっちに来てる」
「悪いこと?じゃあ、ご主人は悪もんなの?」
「悪いことしてるつもりじゃなかったんだけど、悪いことになってた」
「ふ~ん、でも、僕がしてたことよりは悪くないのかもね」
「どうかな?」
生涯孤独のまま盗賊団に入れられて仕方なく盗賊してた女の子と、悪気もなく、自分の手を汚さず人殺しをしていたヤツなど比べるまでもなく、一目瞭然で俺の方が悪もんだった
「でも、シャイナは人、殺したことないよね」
「うん、でもご主人も……」
「……そうかぁ」
「でも、人助けはしたことない」
シャイナは、俺が人殺しだと悟って気を使ってくれていたようだったので、こっちも気にせずにしゃべることにした
「人殺してないだけマシだよ……でも赤ちゃんの時に拾われた以外になんか情報ない?」
「力の強い魔法陣で守られていて、盗賊団が村に着いた時から効力が弱まっていて、助け出せたって」
「魔法陣ねぇ、それってすごいの?」
「わかんないけど、僕を助けた村では魔具とかエナジーストーンとかが盗めたらしい」
「魔具とかエナジーストーン?」
「うん……あっご主人この世界のこと詳しくないんだっけ」
「まぁ詳しくないかな」
「まぁ簡単に言うと魔法を閉じ込めた物だよ、両方とも」
シャイナが少し、ドヤ顔したように見えたが気にしないようにした
「便利だね、それ」
「僕は魔具なしで使えるよ」
やっぱり、ドヤ顔しているように見えるが、まぁ変わらず気にしないようにした
「へぇ~すごいねぇ、魔具なしでって?」
「エンチャント魔法のことだよ、剣を電気でバチバチにしたり、ハンマーにかまいたちをまとわせたりとか、楽しいよ」
「ぜひ、見てみたいもんだね」
「じゃあ、ご主人が次、来るときにクロスボウの矢にエンチャント魔法使ってあげるよ」
「助かるよ」
完全に上から目線になっているが、俺も大人なんで気にしないことにした
「ご主人が助かると、僕もうれしいから頑張るよ」
「じゃあ、もしかして、魔法使いの血筋とか?」
「かもしれないけど、わかんない、ずっと盗賊だったし」
「まぁそうなるか」
「そうなるね」
「でも、やっぱり気になったりした?」
「ううん、盗賊団が家族だったから、特に思わなかったよ」
「……そうなるよな」
「そうなるよ」
シャイナが、眠たそうに眼をこすっていたので、もう寝るように言ったが
「どうする?もう寝る?」
「ううん、まだ大丈夫」
「なんか眠たそうですよ。お嬢さん」
「眠くないよ」
「だったらいいけど」
「だって、この後、ご主人帰るんでしょう」
「そうだね」
「せっかくだから、ご主人の世界のことも聞きたい」
「そうだな何から話そうか」
シャイナが聞きたがっていたので、こっちの世界にある、金属の板で作られた燃料で走る自動車の話や、鉄の棒でできた雲まで届く塔の話や、電波という不思議な力で映像を各地に届けている魔具の話をしたら、限界が来たのか、シャイナはそのまま机に突っ伏して寝てしまっていた
「寝ちゃったか」
俺は寝たらどうせ、教会に座った状態で元の世界に戻されるので、シャイナを抱っこしてベッドに入れて、俺もソファーで寝ることにした