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『全裸スタート』

 さっきまで暖かい光に包まれていたはずなのに、なんか体がスースーして肌寒い


「よっし!気合い入れていくか」

 いざっ神様からのミッションをこなしていくかと思った矢先、体が肌寒い理由が分かった

「……全裸?」

 そういえば、こっちの世界に何も持ってこれないんだった

「もしもし?大丈夫そう?変なとこに落ちたりしてない?」

「森みたいなところにいるんですけど」

「ちゃんと地面に移動したんだ。前来た人は岩の上に落ちて足の骨折った上に、なんか好戦的な部族に食べられちゃったっけ」

「食べられたって……あの~服的な物はないんですか?」

「何がないんですかだ!立場わかってんのか!自分で探せよ!ウジ虫が!」

「すみません……なんかヒント的な物はありますか?」

「ない!ガンバ!」

 ということで元の世界では即逮捕の状態で、名前もわからない謎の森で服をなんとかしなきゃいけなくなった。

 とにかく、早く股間のあたりを隠したいので、森の中だしどこかにでっかい葉っぱとか探すしかないか


「おーい!そこの人!」

「あっ!はい!」

 ヤバい!捕まる!

「どうされたんじゃ?全裸で」

「あっあのっ……あっ痛っ!」

「どうしたんだね!落ち着きなさい」

 目の前に現れたのは杖をついたかなり小柄なおじいさんで、特徴はというと笑った時にできる目元のしわと地面につきそうなほどたくましい髭。そして、傘ほどの大きさの麦わら帽子と竹籠を背負っておりまるで山菜取りをする仙人のようだった


「なんで全裸?服はどうしたんじゃ?」

「あの~盗賊に襲われちゃって、その時に記憶もなくしちゃって」

「こんな村に盗賊?……盗賊がパンツまで奪うかい?って襲われた記憶はあるんじゃね」

 かなり苦しい言い訳だが、俺は盗賊に襲われて身ぐるみ剝がされて挙句、奇跡的に体に傷跡一つつかない状態で山賊にリンチされた結果、記憶喪失になったということで納得してもらった。

 そして、大事なところだけでも隠しなさいと背中に背負ったザルからタオルを貸してくれた。


「記憶がないのは困ったもんだね。とりあえず村に来るかい?」

「でもタオル一枚だけですよ」

「大丈夫じゃよ。年寄りしかいない村だから」

 そうして、俺はタオル一枚で年寄りしかいない村に行くことになった


「ここがカーダの村じゃよ。薬草で有名なんじゃ」

「へぇ~薬草」

「ところであんちゃん記憶もないし、身寄りもないならとりあえず、ワシのところ来るかい」

「いいんですか?」

「ばあさんと二人暮らしじゃし、話し相手になってくれれば助かるんじゃが」

「もちろんです。ありがとうございます」

「そういえば、名前も名乗ってなかったね。ワシはカスペルじゃ。村のみんなにはペルじいと呼ばれておるよ」

「俺は高橋タツヤです」

「タカハシタツヤ?変な名前じゃな。なんて呼べばいいんじゃ?」

「タツヤで大丈夫です」

「着いたぞ。ここがわしの家じゃ」

 そこには、おとぎ話で出てくるような丸い窓でレンガ造りの家が建っており、おそらく暖炉用の大きく立派な煙突がシンボルになっていた。


「お邪魔します」

「早く服を探してやらんとな」

 優しいおじいさんが家に上げてくれたおかげで全裸サバイバルの問題は解決されたが、まさかここまで何もない状態で放り出されるとは思っていなかったので、何とか衣食住を二日間で確保しないと、良いことする前に命が危ない。

 でこっちで死ぬとどうなるんだ?あとで聞いとくか


「あんちゃんに合う服はこれくらいしかないけど入りそうか?」

「そうですね……大丈夫そうです」

 黄土色のシャツと緑色のよれよれのズボンと動物の皮で作ったような靴で中世ヨーロッパの木こりのような服装を貸してもらったが、貸してもらってこんなこと思うのは良くないのだがかなり着心地が悪く、なんといっても生地が荒いから肌が弱い俺にはだいぶ堪える

「お似合いじゃな」

「ありがとうございます。助かりました」

「落ち着いたところ悪いんじゃが、記憶がなくなったということはどこから来たとか、何してたかは覚えとらんのか?」

「名前くらいしか覚えていなくて……」

「しかし、ここは街道から離れておるし、盗賊が出たことも数十年聞いたことがないしな、本当に盗賊じゃったら村長に報告しないと。」

「そんなに大事なんですか?」

「大事じゃよ!こんな年寄りしかおらん村、襲われたらひとたまりもないわい」

「警察とかはいないんですか?」

「ケイサツ?なんじゃそれ、あんちゃんの故郷の騎士団みたいなもんかね」

「騎士団?」

 騎士団ってことはやっぱり中世ヨーロッパとして生活するのが過ごしやすいかな

「村長に頼んで、街から王都に騎士団を要請する伝令を出してもらうんじゃ、で受理されれば王都からパラディンが率いる騎士団が来るんじゃ」

「お金とかかかるんですか?」

「もちろん、こんな小さな村には結構大きな出費じゃが、村人全員が皆殺しにされるよりましじゃよ」

うまく嘘をついたつもりだったが、めんどうなことになりそうだ

「あと、あんちゃん住むとこも働くところもないじゃろ」

「そうですね」

「どうじゃ、村長に相談してこの村に住んでみるかね?」

「いいんですか?何から何まで」

「どうせ年寄りの村じゃ、若いのがいると少し活性化するじゃろ。」

「ありがとうございます」

「そうと決まれば、さっそく盗賊のことも含め村長に報告というかね……おっとばあさんが返ってきたかね」

「ただいま帰りましたよ」

「お帰りやばあさん」

 玄関にはペルじいさんと同じくらいの背丈で、髭以外かなりそっくりで顔の笑いジワが優しい雰囲気を醸し出しているおばあさんがいた。


「ほぉ~こんな家にお客さんかね」

「紹介するとするかね。こちら盗賊に襲われて身ぐるみ剥がれた……」

「タツヤです」

「タツヤさんじゃ」

「ほぉ~それそれは大変じゃったな」

「じゃから今日からしばらくこの村に住むことになったんじゃ」

「ほぉ~それはええことじゃな」

「でこちらはばあさんのシャムエルじゃ、村ではシャムばあさんと呼ばれておる」

「よろしくお願いします!」

「それでは村長に報告に行ってくるわい」

「あっじいさんや、明日の昼からお向かいさんがマンドラゴラの収穫をするらしいから、畑の近くを通るときは耳栓をするように気を付けるんじゃよ」

「もうそんな季節か、じゃ行ってくるわい」

「いってらしゃい」

 ペルじいさんのおかげで、運よく衣食住が何とかなりそうだ


「ここが村長の住んでいるカエの館じゃ」

 そこには二階建ての赤レンガでできた図書館みたいな建物があり、壁一面に力強く張ったツタが歴史を感じさせ、この小さな村には似合わないほどの大きさだった

「大きい家ですね」

「村長が住んで居るが、もともとは家じゃなく、ここを薬草の村にしてくれたセイシュウ大師様が使っていた工房兼資料館みたいなところなんじゃ」

「すごい本の量ですね」

「あっいたいた。村長」

 王座のように積みあがった本の上に、甚兵衛みたいな服を着た、これまたかなり小柄で白髪で顔の全体のパーツが隠されて、髪と髭が完全に地面に付いている村長がいた


「おう!なんじゃカスペル。変な奴連れてきて」

 変な奴?

「変な奴じゃないよ村長。盗賊に襲われて身ぐるみ剝がされた奴じゃよ」

「盗賊?こんな村にか?」

「そうなんじゃ!でこの人が襲われたんじゃ」

「この人が!」

「そうなんじゃよ!」

 そろそろ盗賊に襲われたっていう紹介やめてくれないかな

「じゃから、王都に騎士団の要請を早く出さないと!」

「あの~」

「街へのダイアウルフ用意せんとな」

「あの~住まわせていただき」

「なんだね、今忙しいんだよ」

 話がそれたが、ペルじいさんからもろもろ説明してもらって、ペルじいさんの家の横にある空き家を使わせてもらうことにした。

 そして、村も若い働き手を必要としているみたいで薬草農家見習い的なことさせてくれるというので、とりあえず、は住むところと仕事は決まったけど、二日しかこっちの世界いることができないことはどうしよう


「じゃさっそく、ダイアウルフの用意するから、あとは大丈夫かね」

「そうじゃな、あとは任せてくれい」

「今日からよろしくお願いします」

「じゃ家見に行くか」

「そうですね」

「まぁ最近まで老人が住んで居った家じゃから、家具とかもそのままにしておるし、特に面倒なこともないじゃろ」

「最近まではどんな人が住んでたんですか?」

「村の最年長ばあさんがなくなったんじゃ。片づけるのも面倒じゃったから、あんちゃんが来て丁度ええんじゃないか」

 老衰みたいだから、いわくつきじゃないよな

「運が良くて助かりました」

「あっここじゃ」

「お隣ですね」

 異世界で初めてもらった新居はペルじいさんのお隣で、ペルじいさんの家から煙突を取ったような家で、最近まで、最年長の人が住んでいただけあって、村長の家に負けないくらいツタが張っている中々立派な一戸建てであった


「こんないい家いいんですか?」

「もう村にもこれ以上、住民は増えそうにもないしな」

 玄関を開けてみると、ほこりはかなり積もっていたが、レトロな純喫茶のような内装で、家具も揃っており、もともと二人で住んでいたということなので広さも文句なしのマイホームだった

「とりあえず掃除ですね」

「じゃわしは帰るとするわい。なんかあったら隣に来てくれい」

「はいっ!ありがとうございます」

 あまり得意ではないが、とりあえず掃除するか

「もしも~し、聞こえてる?」

 はたきを持って掃除を始めようとしたとき、チョーカーからヤンキー天使が呼びかけてきた

「はい、聞こえますよ」

「そっち順調そうだね」

「そうですねめちゃくちゃ順調です。家も仕事も見つかりましたし」

「とりあえず、生活は大丈夫そうか」

「あの~、一つ質問いいですか?」

「なに?」

「こっちで死ぬとどうなるんですか?」

「失踪扱いだよ」

「あと、二日しかこっちいれないっていう言い訳は何かヒントはないですか?」

「みんな呪いで別世界に飛ばされるで通してきたよ」

「そうなんですね」

「ほんとのこと言ってもいいけど、変なウソついちゃったからとりあえずは呪いでいいんじゃない?」

「わかりました。じゃとりあえず、掃除始めます」

「おう!ガンバ!」

 家の中は最近まで人が住んでいただけあって、軽くほこりをはたいて雑巾とモップ掛けをしただけで生活感のある部屋になった

 そういえば、朝ごはんも食べずにこっちに来たから猛烈に腹が減った。ペルじいさんにでも相談してみるか


「お邪魔します」

「よぉ~来たかい。今ちょうど呼びに行こうとしたところじゃよ」

「そうなんですか?」

「あんちゃん食べ物買うお金もないじゃろ、ちょうど昼ご飯が出来上がったところじゃ食べていくかい?」

「ごちそうになります!」

 食卓の真ん中にフランスパンのような細長いパンがおかれており、香草らしきものがかかったステーキと、おそらく何かのチーズがホールごと準備されていた


「今日は岩石牛尽くしじゃ!」

「がんせきぎゅう?」

「食べたことないかい?結構有名な食材じゃと思うとったが」

「どういう牛なんですか?」

「火山灰を食べて、体全体が岩に覆われた牛じゃよ!クセがある味じゃが香草で焼いとるからおいしいはずじゃよ」

「じいさんや説明はいいから冷めんうちに早く!」

「そうじゃな」


 別の世界で初めての食事に恐る恐る岩石牛のステーキを口に運んで食べてみたら、歯ごたえがある肉で噛むたびに芳醇な味と香りが口の中に広がり、かなり美味で、ついでにチーズも岩石牛の物で、こちらは酸味が強めのチーズだが、味の濃いステーキにはぴったりの一品だった


「じゃごはんも食べたし、ちょっと休憩したら午後の薬草取りに行くかい」

「そうですねよろしくお願いします」

「準備できたら呼びに行くわい」

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