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プロローグ『断罪』

初投稿

「今日をもって国連軍の勝利で中東戦争の終結を宣言します」


 終戦セレモニー。世界的に考えても実にめでたい行事だが、俺は終戦とともに無職ということになるので時間の無駄としか思えない。

 しかし、親指のささくれが痛い。


「VR部隊の皆さんはこちらに移動をお願いします」


 というわけで俺が所属しているVR部隊の表彰が国旗やら軍旗やらが飾られた講堂で始まるらしいが、

腰痛持ちなので立ってるの辛いし、お偉いさんの無駄にかしこまった話も長いし、パイプ椅子しか用意されてないので座っても腰は痛いけど


「此度の戦争において遠隔操作のロボット兵を用いたゲリラ部隊の鎮圧、

敵軍事拠点の破壊工作において多大な活躍されたことをここに表彰します」


 バッヂをいっぱいつけたいかついお髭を生やした強そうなお偉いさんの言う通り、俺、高橋タツヤ(24)はロボットを操って中東でおそらく100人以上の殺し、3か所くらいの軍事拠点というか集落というかなんというかそんな感じのところをロボットの自爆機能で爆破した

 もちろん後悔している


「以上で表彰を終わります。引き続き洗礼を受けていただきますので少々お待ちください」


 表彰も終わったみたいなんで後悔しているのに戦争に参加したことについてだが、もちろん戦争がしたくて参加したのではなく、就職先が見つからなかったわけで。

 特に有名な大学でもなく、ゲームばっかりしていた俺は、民事軍事会社ファランクス社の開発したFPSゲーム「エインヘリヤル」をやりこんでいくうちにスカウトされ、初任給35万という高めの給料でVR用遠隔操作ロボット兵士「メタルパラディン」の操縦者として、戦争が終わるまで契約社員として働くことになったというわけで決して戦闘狂やサイコパスの類ではない


「本日はお忙しい中終戦セレモニーにご参加いただきましてありがとうございます。

それでは、最後に、ここ終戦記念教会にて洗礼を受けていただいてセレモニーの終了となります。

もう少しお時間をいただければと思います」


 一刻も早く家に帰りたいところだが、なんというか洗礼とやらを受ければ罪が許されるらしいからロボット兵越しに殺人を繰り返した俺としてはメンタル的に結構ありがたいし、

お偉いさんたちも、これをやらないとメンツやら世間体やら色々とあるんだろうな。


「それでは神父様お願いします」


「えーと、今回の中東戦争においてそなたらの活躍により、まぁ世界の平和が維持されたわけでありますが、えーっと洗礼を……じゃなかったね。そのーあらゆる罪……でもなくてね」


「神の名のもとにです」


「あ~はいはい、神の名のもとにそなたらの犯してきたあらゆる罪を神の名のもとにでね、あの~すべて許します。だからもう平和だし、気楽に生活しても大丈夫なのでね、頑張ってくださ~い。はいっ」


 俺と同じVR部隊の、死んだ魚のような目で見つめられたしわくちゃ老人神父のスピーチは終わったみたいだ


「以上で洗礼を終わらせていただきます。みなさんお時間のない中ご協力ありがとうございました」


 お時間のない中ねぇ、たった今からお時間しかない俺に対しての当てつけにしか思えないが、まぁしばらく暮らせるだけの貯金はあるし、ゆっくりゲームでもしながら楽な仕事でも探してできるだけ波音立てずに残りの人生満喫したいので


「ちょっと、そこの特徴のないや~つ」

 なんか幻聴が聞こえたみたいだけど、とりあえず俺は今すぐ新作ゲームをしたいので帰ります。

「おい!聞こえてんだろっ!」

「はい」

 返事しちゃったけど誰だよ。

「俺だよ!」

「誰だよ!」

「こっち見ろよ!」

 こっちってどっちだよ。

「教壇の方だよ」

「きょうだん?」

 謎の声の言う通り教壇を見てみた。


「よっ!お久しぶり……じゃなかったな、そんな間抜け面あったことあったら忘れられるわけないもんな、間抜けすぎて忘れたくなるかもしれないけど」

 教壇の上にはいかにも神様っぽいうねうねした木の杖を持って、いかにも神様っぽい白い布を纏ったいかにも神様っぽい白髪の老人が耳をほじりながらこっちを見ていた

「状況説明ご苦労。後いかにもなって言葉使いすぎ、馬鹿がバレバレだわ」

「えっ……」

「しゃべってないのになんでって思ってるところ悪いが、とりあえず、ちょっと近くに来いよ」

「あの……教会の人ですか?」

「簡潔に言うと俺、神。ここにいる理由はお前の罪を許すために来た」

「でもさっき許されたんですが」

「あんなのでほんとに許されたと思う?」

「許すって言ってくれたんで」

「神父とお天道様が許しても、俺がルールだから許さない。自分が何したかわかってんのかよ。」

「……殺人?」

「自覚はあるみたいだけど、なんでまたこんなこと」

「世界平和の」

「違うだろ」無表情だった、自称神様の表情が少しこわばった

「すいません就職が見つからなくて……でも戦争でしたし、会社からは平和のためだからって、教会も賛成したからって」

「それはお前らの解釈だろ。俺は最初に何があっても人を殺めてはいけませんって言ってのに勝手に事実捻じ曲げやがってろくなもんじゃねぇよ!お前ら!」

 でも、俺だけじゃないのに

「ほかのやつも追々天罰下すし、あと少ししたら世界経済にも大打撃与えるから心配しなくて大丈夫。じゃ本題な、天罰としてお前のこれからの人生の休日、つまり土日を奪う。祝日は除く。ここまではいい?」


「えっと・・・はい」

「で奪った休日についてだが別の世界で世直ししてもらう」

「別の?」

「お前は今地球の日本という世界に住んでいるが、この世以外に世界はいっぱいあるわけ。で、お前にはその中の一つで良いことをしてもらう」

「良いこと……と言いますと」

「定義はないけど人助けなど……お前も成人してんだから善悪の判断くらいできるだろ」

「まぁ……わかりました」

「ていうか善悪が分からないから天罰食らってんのか、なっ!そうだろ!」

「そうですね……すみません」

「というわけで説明は以上です。質問があればまとめて言って」

「えっと……そこはどんな世界ですか?」

「はい、次」

「こっちから何か持って行けますか?」

「……だからまとめて言って」


「はい、すみません。じゃあ……そこはどんな世界ですか?こっちの世界から何か持って行けますか?ほかに行った人はいますか?何か特殊能力はもらえますか?お金などの初期費用はもらえますか?くらいで」


「え~っと人間と動物と植物があるところで魔法の概念はありますがなんでもできる便利な物ではありません。そして、こっちからは何も持って行けません。ほかに行った人は過去にいます。で、特殊能力、初期費用についてなんだが、お前は罰を受けている身分なのでそんなものは一切ありません。ていうか厚かましいわ。天罰って言ってるだろ。まぁ言葉については、ほんやくこんにゃく的なことしてあげます」


「はい、わかりました」

「じゃ、明日、土曜日なんで朝の6時にここに」

 早すぎるだろ

「早くねぇよ!どの立場で文句言ってんだよ!あと俺は心の中読めるから変なこと考えるなよ」

 すみません

 次の日、変な神様に言われた通り教会に行こうと思ったが、たぶん疲れのせいで変な物が見えただけだと思うので、昼まで寝ることにした


「カーー!カーー!」

「う~ん……なんかうるさいな!」

 俺の住む1kの部屋は窓が全開になっており、すみずみまでカラスに覆われていてた。

 しばらく、茫然としたが、すぐに昨日の出来事が幻想でも疲れのせいでもないことが分かった


「よっ!お久しぶり……って昨日ぶりか」

「おはようございます」

「カラス楽しかった?」

「楽しくはなかったです」

 昨日、見た神様が人差し指の第二関節まで鼻の穴に差し込み鼻をほじっていた

「最初だからカラスで済ましたけど、次からは手加減なしだから」

「すみませんでした。で、この方は?」

 昨日、現れた神々しい神様とリクルートスーツ姿で肩までの切りそろえたショートヘアとぱっつん前髪が特徴の美少女が、二人して無表情で鼻くそをほじりながらこっちを見ていた。


「じゃ紹介しよう。こちら天使の蘭子さん、あだ名はらんちゃん」

「天使?……よろしくお願いします」

「おう!夜露死苦!」

 清楚系美少女の口から出たと思えないほどの、ドスの効いた声が教会に響いた。

「なぜ天使がいるの?なんで天使はリクルートスーツなの?って顔しているけど、説明させてもらうと俺は忙しいので俺の代わりって感じで、監視やらお手伝いやらしてもらうことになります」

「はぁ……なんとなくわかりました」

「そんじゃ俺、用事あるからあとはらんちゃんに任せるわ」

「かしこまりました」

「あと、らんちゃんはミスエンジェルの準グランプリだから、よろしくやってくれてもいいよ」

「でも……」

「心を読む力はないから心配しなくても大丈夫。じゃ俺はここらへんで」


 そういうと、神様はUFOにさらわれる牛のように、謎の光に吸い込まれていった


「あの~不束者ですが、これからよろしくお願いいたします。蘭子ちゃんでいいのかな?」

「あん?今なんて?」

「……蘭子ちゃん?」

「お前よぉどの立場でしゃべってんだよ!ウジ虫が!天罰食らってる分際でちゃん付けで呼んでんじゃねぇよ!様付けな!それと敬語使えよ!これでもお前より年上なんだよ!わかったか!」

「えっ……」

「えっ?じゃねぇよ!わかったのかよ!返事しろよ!ウジ虫!」

「はい!わかりました!」

「じゃ、まずこれ」

 そう言って黒いチョーカーを渡された

「これがお前ともう一つの世界をつなぐ道具だ!土曜の朝にそれをつけた状態で、この教会に来て座ってたらあっちに行けるから。それとあっちの世界で私との唯一の通信手段だからなくすなよ!」

「はい!わかりました!」

「いい返事だ!褒美に向こうの世界の基本情報を教えてやるよ。場所にもよるが文明は蒸気機関が開発される直前が最先端で、民主主義の地域はほとんどない。王政もしくは部族がほとんどだから、なんというか魔法とかモンスターとかあるけどそこさえ気にしなければ意外に暮らせる感じ。あと賢者歴といって七日で一週間だし、土日が休みみたいな概念はないけど。で、なんか質問は?」


「えっと……」

「あっ!準備してもう来るよ」

 全然準備とかできていなかったが、神様がさっき吸い込まれたところから暖かい光がこっちを照らしていた

「もう行くってことですか?」

「そういうこと」


 この光で別の世界に飛ばされるらしいが、なんというか浮いてるようで、暖かいもの体中を駆け巡るようでめちゃくちゃ気持ちいい。

 いっそこのまま天に召されないかな

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