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六日目 昼

リンに呼ばれ女の子から逃げてきた来た僕は、リンの元に駆け寄る。

「どうしたのリン?」

「そろそろ食事だから探してたのよ」

リンは首を軽く動かし親指を立て自分の背後を指差す。

「まだ作ってるみたいだけど何か手伝う?」

後ろを見えると皆が持ち寄って作った沢山の料理が次々と出来上がって行く。

「あれを皆の真ん中に運んでくれる?」

指差す先を見ると、昨日の猪肉を大きく残していたようで太い木の棒に括られた肉の塊が火の上でグルグルと豪快に焼かれている。

「あのまま持つの?」

「違うわよ。外側を削いでいくからそれを持って行ってほしいのよ」

あれってケバブっていうんじゃなかったけ?

「何ボーっとしてるのよ」

「ちょっと前の世界の料理に似てたから」

「そうなの?ま、あんな調理方法なんてどこにでもあるわよ。火の上で焦げないように回してるだけだし」

よく考えてみたら結構原始的な調理方法だね。

「それもそっか」

「ほら、さっさと持って行って」

大きな葉っぱに肉を大量に盛られている。

「じゃ持って行くね」

「あ、ちょっとまって」

今焼けて削いだ肉を一切れ取り半分ほど食べた後僕に差し出してくる。

「今日は私達が一応主賓主役なんだからちょっとだけつまみ食いよ」

悪戯な子供の様な笑顔をこちらに向けてくる。

「でも、いいのかな?」

皆が食べていないのに食べていいのかなと思いつつ、リンの食べかけの猪肉を凝視する。

「つまみ食いがバレるでしょ、さっさと食べなさいよ」

僕の口に肉を押し付けてる。少しドキドキとしながら食べると余り味が分からなかった。

「食べたかったんでしょ?美味しかった?」

ドキドキして味が分からなかったと言うと怒られるだろうか?きっと怒られるのだろう。

「凄く美味しかったよ」

リンはニコリと笑うと直ぐに表情を戻す。

「そう、良かったわ。それ運んでくれる?」

僕は言われた通り猪肉を運び置くと同時に足の間から顔が飛び出す。

「ねぇ~ねぇ~」

先程別れたばかりだというのに女の子が又僕の足にくっ付いてくる。

「今度はどうしたの?」

女の子が僕の顔を見ながら手を引っ張る。

「抱っこ~」

この子はどうしてここまで僕に懐いたのだろう?

「いいけど、お父さんとお母さんの所に居なくていいの?」

頭を撫でながら聞くと胸を張りつつゴロゴロと喉を鳴らす。

「お父さんに言ったら、そんなに好きなら頑張って好きになってもらいなさい!って言ってた!」

この子のお父さんは自分の子供が心配じゃないのだろうか?さては子供の面倒を僕に押し付けたな?まぁいっか。僕は女の子を抱き上げる。

「僕はこれからリンの所に戻ろうと思ってたんだけど行ってもいいかな?」

女の子がため息をつきながら僕の肩を叩く。

「私はいい女だから許してあげるけど、女の前で他の女の事を言っちゃ駄目だよ?」

意味が分かってて言ってるのかな?だけどいい勉強になったかも。

「なんかごめんね。それじゃ行こっか」

女の子を抱っこしながら歩こうとすると白が不満そうに前足で僕の喉元を叩いてくる。

「どうしたのシロ?」

白に話しかけたはずが返事をしたのはなぜか女の子だった。

「きっと私に嫉妬してるんだよ!」

凄く自信満々だね・・・と言うより嫉妬?

「何で嫉妬なのかな?」

え?何言ってるんですか?みたいな顔で僕を見ないで。

「シロも立派な女の子だから私みたいな、可愛い子を抱っこしてるから嫉妬してるの」

ん?白って雌だったの?

「シロって女の子だったんだね。気にもしてなかったから知らなかったよ。ごめんねシロ」

白は大きく鼻を鳴らし首を少し左右に振る姿を見て、本当にこの子は言葉が分かるんじゃないだろうか?とも思ってしまう。

「そんなだから男はダメだってお母さんがよく言ってるよ」

又もや女の子から注意されてしまった。気を取り直してリンの元に戻ると、リンが僕を見て変質者を見たような顔をする。

「妖一、あんた本当は子供に近づいちゃダメな部類の人じゃないの?」

このやり取りはリンの中でお気に入りに入れられたのであろうか。

「なんどもいってるけど僕は子供好きであってそっちの趣味は余りないよ」

リンが何とも言えない顔をする。あれ?なんか間違った気がする・・・まぁいっか。

「それにして本当に懐かれてるわね」

リンの言葉に女の子が反応する。

「リンちゃん。お父さんとお母さんに好きな人って紹介したの」

呆れた顔をするリン。

「前はミー君って言ってなかった?」

女の子がなぜが胸を張る。

「今度こそ私の運命の人なの!」

リンはため息をつく。

「前はミー君その前はお隣のおじさんその前は私じゃなかったかしら?」

どうやらこの子は惚れっぽいらしい。それにしても次々と変わるものだ。

「その時は本気だったんだもん」

何だこの将来男癖が悪くなりそうな幼女は・・・。

「まあなんだっていいわ。それより妖一絶対投げるんじゃないわよ?」

なんだろう、そんなに言われると投げたくなる。怒られるからやんないけど。そんな事を思っていると女の子が不満をたれる。

「え~なんで~あれ楽しかったよ?」

それにしてもこの子あれを楽しいと言えるのが凄いと思わずにはいられない。自分で言うのもなんだが一歩間違えば死んでいたかもしれない。

「駄目なものは駄目よ。それに怪我しちゃうかもしれないでしょ」

時々思うがリンはお母さんの様だ。

「面白いのに?」

女の子は納得できないらしい。

「面白くても駄目。余り聞き分けがないとくすぐるわよ?」

リンが両手をワキワキと動かすと女の子は逃げようとするが残念な事に未だ僕の腕の中に居る為逃げる事が出来ない。

「ごめんなさい~」

降伏宣言をすると満足げにリンが女の子を撫でる。

「最初から言う事を聞けばいいのよ」

こうして近くから見ると本当の親子の様に見える。

「高くしないならいい?」

なんと女の子はリンと交渉するつもりらしい。リンが僕を見た後イタズラを思い付いた子供の様な顔をする。

「そっちのお兄ちゃんがお馬さんになってくれるからそれで我慢しなさい」

僕がお馬さんするの?けどここ土の上だよ?汚れるよ?女の子は満更でも無いらしくニコニコと笑う。

「仕方ないからそれで我慢してあげる」

どうやら又もや僕の意思とは関係ないらしい。仕方ないここは僕も本気にならざるえないだろう。

「あんたなんでそんな意気揚々と四つん這いになってるの?」

僕の知ってるお馬さんとは違うのかな?

「お馬さんって言ったらこれじゃないの?」

リンが斑岩で僕を見る。

「いや、合ってるんだけど・・・なんでそんなに乗り気なの?」

その言い方だと僕が進んでしてるみたいに聞こえるんじゃないかな?

「え?リンがお馬さんになれって言ってたから、それに僕はそんなに乗り気じゃないよ?これは仕方なくって言うんだよ」

リンと話してる間に女の子が背中の上に座りノリノリで叫んでいる。

「目指すはご飯の山だ~」

ご飯の山ですと?えぇ、悪くないんじゃないかな?

「ひひ~ん」

リンが白い目をする、そんな目で僕を見ないで。僕はリンの視線から逃げる様に四つん這いのまま全速力で駆けてゆく。

「はやいはやい~」

女の子は喜んでくれているが皆の視線が痛い。

「いけいけ~」

そのまま暫く遊んでいるとリンに呼ばれる。

「妖一、遊んでないでさっさと食べるわよ」

気のせいじゃなければ僕がお馬さんしてた理由はリンにあると思うんだけど。

「分かった。それじゃ食べに行こっか」

女の子に降りてもらい歩き出そうとすると、無言で抱っこを要求されたので女の子を抱き上げリンの隣に歩いて行く。

「妖一別にいいんだけど、めんどくさかったら断ってもいいのよ?」

僕は結構楽しんでるんだけどな。

「子供と遊ぶのは楽しいからそんなに困ってないよ」

リンはため息をつく。

「あんたがいいならそれでいいわ。明後日にはアツノと合流するんだからそれまで遊んであげなさい」

明後日にアツノと合流なんだ。

「そうなんだ。よし!ご飯食べたら夜まであそぼっか」

まだ隣に居た女の子に話しかけると大きくジャンプしながら喜んでくれる。

「夜まで遊ぶ~」

女の子の両親がいつの間にか近くに居た。

「うちの子がすみませんね」

元々僕に子供の面倒を見させる気でしたでしょ?

「いえ、僕も楽しいので構いませんよ」

お父さんが何やらニヤニヤと僕を見る。

「本当に結婚して娘を貰ってくれてもいいんですよ?」

この人は何を言ってるんだ?まぁ確かにこんなに懐かれると可愛いですけど、それ以上ではないんですよ。

「僕みたいな自分の事さえも碌にわかってない者にお嬢さんは勿体ないですよ。ですので結構です」

いらないと言うと失礼だし、何より素直に言うと、将来男癖が悪くなるであろう少女なんてごめんだ。

「そうですか。まだあきらめなくても大丈夫みたいだぞ。よかったなぁ」

そんな風に取りますかお父さん。まぁ惚れっぽいこの子の事だから旅に出たら、次に会ったとしても忘れてるだろ。

「妖一、なんでもいいけど冷えるわよ?」

リンに言われ料理を見ると先程まで湯気を出していたのに湯気が無くなっていた。

「教えてくれてありがとう。シロ食べよっか」

白を下ろし料理を取り分けてあげると嬉しそうにハグハグと勢いよく食べ始めるの見て、そういえば今日は朝ご飯を食べていない事を思い出した。途端にお腹が盛大になり始める。

「どんだけお腹空いてんのよ」

リンに呆れられたが朝食をとっていないのだから仕方ないと思うんだ。

「朝抜きだったからお腹がすいちゃって」

いつもの面子に女の子家族を入れ5人と一匹で、楽しく食事を取り大人たちは仕事に戻って行く。その後約束道理女の子と遊んでいると3人の子供も途中から混ざって皆で夜まで遊んだ。

「そろそろお家に帰ろっか」

子供達に言うと皆が不満そうな顔をする。

「まだ遊んでちゃ駄目なの?」

どう説得しようと悩んでいるとリンがやってくる。

「あんた達いつまで遊んでんの?そろそろ晩御飯の時間だからみんな帰りなさい」

やっぱり子供達はリンの言う事はよく聞くらしい。

「「「「はぁ~い」」」」

皆が居なくなると少し寂しい。

「ほら、妖一もさっさと帰るわよ」

次は8月17日に上げる予定です。

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