四日目 昼
ぞぞ村から出た僕達は休憩もろくに取らず日が傾き始める頃まで走り続けると後ろから足音が聞こえてくる。
「ねぇリン、後ろから何かが付いて来るよ?」
「ああ、多分昨日の奴らじゃない?」
出かける時は荷物が多くて追いつかれたが今は2人で荷物を分けて運んでいるので早々追いつかれない。
「放っておいていいの?」
「ああいった連中はいくら殺したってまた増えるわ」
なにそのゴキみたいな生命力・・・なんか嫌だな。
「その熱意を違う所に向けれないのかな?」
「あんた変なこと言うのね。あいつらも多分、私やアツノと同じ様に村に居られずに外に出たけど、食べて行けないから生きる為に必死なだけよ」
何か苦い物を喰わされた時の様な顔を一瞬する。
「それにしても、他にもお金を稼ぐ方法ぐらい有りそうだけど」
「妖一人生綺麗事ばかりじゃ生きてけないのよ」
僕達は会話に意識を割き過ぎたのか、前で待ち伏せていた山賊の仲間がいる事を近くに行くまで気づけなかった。
「妖一、前と同じよ!いいこと私が捕まっても構わずに走りなさい!」
「大丈夫だよ!絶対に捕まったりしないよ、きっと!」
「分かれて逃げても意味はなさそうだから、真っすぐ突っ切るわよ!」
前に4人の山賊が居るけどそこを突っ切るらしい。調理用の包丁を右手に持ち鋭い眼で4人を睨む、流石リン男気に溢れている。
「僕も戦うよ!」
布の中から刃物を取り出そうと思っていると、リンがこちらを見ずに言ってくる。
「妖一!殺した事の無い奴は邪魔なのよ!」
その言葉だけで僕がどれほどお荷物なのか改めて実感させられ、そして納得してしまい刃物を取り出すのをやめる。リンが突然消え次の瞬間4人の内、2人が首から血を吹き出し力なく倒れていく。僕と残りの山賊達が一瞬立ち止まる。その隙をリンが逃す訳もなく新たに1つ死体が増える。
「リン!そのまま走り抜けて!」
リンは待ち伏せしていた最後の1人の首も刈り、僕と追ってくる者達の距離を見た後で走りながら返事をする。
「分かったわ」
リンの後を追う様に走る僕の横を何かが通り抜け、リンに向かって飛んで行く。
「リン危ない!」
声を掛けるのが遅れリンの腕を掠め地面に落ち、そこで飛んでいた物が矢だと分かる。
「馬鹿野郎!傷物にすんじゃねぇよ!」
「チッ」
決して大きくは無い、それどころかこんな状態では聞こえるはずのないリンの痛みから来たであろう舌打ちがハッキリと聞こえ、その瞬間僕の中で何かが切れる音がする。何故かリンが見えなくなるまでは動いちゃ駄目だと冷静な部分が言ってくる。その声に従いリンとの距離をあけた後山賊に話し掛ける。
「ねぇ、今弓を打ったのは誰?ねぇ、聞いてるの?リンに怪我をさせたのは誰?」
振り向いて見てみると6人もいる。いきなり雰囲気が変わったからだろうか誰も僕の質問に答えてくれない上に逃げようとしてる奴までいる。
「リンに酷い事したのに誰も謝らないの?その上逃げようなんて虫が良すぎるんじゃないかな?・・・もういいや」
返事が返ってこないので、布から小太刀と大きめの鉈を出し小太刀を逃げようとしていた奴に投げる。すると運良く背中に刺さりそのまま貫通して木に刺さる。
「後5人だよ。ねぇ誰がリンに怪我をさせたの?ねぇどうして黙ってるのさ」
面倒になった僕は山賊との距離を一気に詰め、そのまま2人の頭を鉈でカチ割ると生き残っていた3人が必死に逃げ出す。
「ちょっと待ってよ。僕はまだリンを傷つけた奴とお話したいんだよ」
逃げる3人を追うと意外と早く追い付て近い者から順に足を斬り飛ばし、3人を1つの場所に集める。
「ねぇ、誰がリンに酷い事したの?」
恐怖の所為か誰も答えてくれないので1人の頭を割る。
「ねぇ、答えてよ」
どうやら生きている2人は意識を手放したようだ。
「まあいっか、どうせもう生きていけないだろうし僕も散らかした物を何処かに捨てて帰ろっと」
白が袋から飛び降り何かを集めている。
「何をしてるのシロ?」
どうやら死体から財布などを集めているようだ。
「リンの治療費代わりにもらって行こっか」
死体から持ち物全てを取り布の中に入れて行くと布の実験の事を思い出し死に損ない二匹を布に放り込む。
「シロ、取れるもの取ったし人があまり来ない場所に捨てよっか」
肉の塊を集め道から外れて直ぐの場所にあった崖から捨てていると、ふと自分の袖口が汚れている事に気がつく。
「折角綺麗な毛並みなのに汚れちゃったねシロ」
水を大量に出し汚れを落とした後で帰路に着く。
「お腹すちゃったね。今日のご飯は何だろねシロ」
次は8月5日に上げます。