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妖一の知らない間に・・・

リンと厚乃は村人達が厚乃専用に作った囲いのある水浴び場にやって来た。

「いつも思うんだけど、私がここを使うの不味くない?」

「別に構わないと思うわよ?ここって私を恐れた人達が自分たちの為に作った所だし」

そう言うと厚乃はリンの返事を待たず一足先に脱ぎ始める。

「やっぱりあんたはずるいわね」

厚乃の裸は同性のリンでさえ生唾を飲むほど美しい。

「なにが?」

厚乃が振り返り正面から見るとその美しさが際立つ。一見華奢に見えるが、スラリと長い手足に程よく育ち形の良い乳房、よく締まった腰と綺麗な形の臀部その上美しい顔立ちにサラサラの髪、何処を取っても何一つ叶わないと思い知らされる。

「アツノが綺麗って事」

つい零してしまった羨ましいと自覚させる一言を口に出したことを後悔しながらリンは乱暴に衣類を脱いでいく。

「昔から私はリンが羨ましかったわよ」

厚乃の様な美しさは無いが、リンは凛々しくも可愛い顔をしている。そして体の方もそんなに悲観する程でもない。胸は同年代に比べ平だが、決して短くはない手足にうっすらと筋肉の起伏が見える腰、よく締まっている臀部、何よりも体の上から下まで引き締まっているが決して筋肉質という訳でもなく、触ると柔らかく女の子だと直ぐにわかるだろう。

「お世辞はいいわよ」

「本当の事なのに」

そう厚乃は昔から自由に動けるリンが羨ましかった。何よりもリンの性格が羨ましい。

「アツノ水浴びしましょ」

冷たい水に2人が入り体を清めてゆく。リンが真剣な声色で厚乃に話しかける。

「アツノ。妖一の事なんだけど」

「妖一さんがどうしたの?」

「あいつの事気に入ってるでしょ」

一瞬厚乃の表情がピクリと動く。

「どうしてそんなこと言うの?」

「どれだけ付き合ってると思ってるわけ?親友の事位ある程度分かってるわ。それにアツノが私以外を名前で呼んだのは初めてよ?知ってた?」

厚乃が嬉しそうに笑い肩を竦める。

「それじゃあ正直に言うは、妖一さんの事を気に入ってるわよ」

「なら、あいつに聞いてからだけどあいつがここがいいと言ったら置いていくわ」

「じゃあ、貴女はどうするのよ」

「今まで通りよ」

「何を言ってるの?」

「1人で今までと同じ様に、家に帰って薬草なんかを集めながら売って生きて行くって事よ?」

「そう言う事じゃないわ!リンは妖一さんが居なくなっても何も感じないの?」

「そんな事ないわ。あいつは放っておくとなにをしでかすか分からない手の掛かる弟みたいなやつよ。ま、一週間もすれば元に戻るわ」

「やっぱりそれじゃ駄目じゃない」

「どうして?」

「どうしてってそれは寂しいって事じゃないの?リンも私と一緒でずっと一人で居たんだから、役に立たなくても妖一さんの存在は小さく無かったはずよ?」

「そうかしら?私は少なくとも12歳までおじいちゃんと一緒に居たわよ?」

「そうかもしれないけど、おじいさん以外からは邪魔者の様に扱られてたって言ってたじゃない」

「そんな昔の事忘れたわ」

「ならこうしましょ。どうせ私はそろそろ村から出ようと思ってたの。それに妖一さんはリンと一緒に行くって言うと思うわ。だから次にこの村に来た時に私も一緒に連れて行ってちょうだい」

「それでいいのね?」

「ええ、私もこの村で腫物を扱う様にされるのはもう嫌だしね」

「そう、私もそろそろ村を出て旅に出るって少し前から村長に話してたのよ。その時一緒に旅に出ましょ」

「そうね、それが良いわ」

リンと厚乃が妖一に聞かれる事の無い場所で、妖一の今後が勝手に決定した瞬間であった。

「それで妖一さんになんて話を切り出すの?」

「そこら辺は私に任せなさい。めんどくさいからズバッと聞くわ」

「まぁそう言うなら任せるけど・・・」

若干の不安を覚える厚乃だったがリンに任せることにする。

「そうそう、私に付いて来るって言ったら連れて行くけどその間どうするの?」

「一応この村にはお世話になったから長に話を通したり親に旅に出る事を話したりしているうちに直ぐに貴女達がこの村に来るわよ」

「まあ、それで良いならいいけど」

「リン、なにか旅に必要な物とかあるの?出来る限り用意するけど」

「そうね、着替えと自分用の食器やお金ぐらいじゃないの?」

「そんなに少なくていいの?」

そんな装備で大丈夫か?と聞きたくなるほど軽装備だ。

「大丈夫よ。私が大体用意してあるから。物を売ってお金が貯まる度に旅に必要になりそうな物を買ってあるのよ」

「そう言えば、いつから旅に出るつもりだったの?」

「12歳の時に一人暮らしを始めて直ぐの頃に、薬草を売りに町に行った時からよ」

懐かしい事を思い出しているのか複雑そうに笑っている。

「リンは昔からしっかりしていたものね。まあ、あの頃は私を見る度に気絶しかけたりしてたけどね」

そんな状況でも厚乃に声を掛け続けてくれるリンの存在にどれほど助けられていたことか分からない。

「そんな事思い出さなくてもいいわ」

リンは恥ずかしそうにそっぽを向く。

「そろそろ出ましょ、冷えて来たわ」

「そんなに真っ赤な顔をしてるんだから、リンはもう少し冷やしたらどうかしら」

「うっさいわね」

2人は冗談を言いながら着替えを済ませ妖一の待つ厚乃の家へと向かう。


次は8月1日の朝の予定です。

よろしくお願いします。

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