灰色の渡り鳥
真っ白な綿が降っている。小さく小さく、薄く薄くちぎったような、そんな綿が。
手を差し出すと、真っ白な小鳥の儚い羽が、抜け落ちてしまったようなそれが、ふわりと手に舞い落ち、手の上で休んだと同時に、溶けるように消えていく。僕の手の上は居心地が悪かったみたいだ。
ふわふわと、灰色の大きな綿から、ちぎれて舞い、僕の肩にふわりと舞い落ちる時には、真っ白な小さな綿だ。
灰色の下に真っ白な羽が舞い落ちる。どうやら同じ灰色でも、こちらの灰色はお気に召さなかったらしい。羽は元々なかったかのように、姿を消していく。
近くを通った大人たちが、嬉しそうに話している。
「積もるかな?」
「積もるといいね。」
だが、残念ながら、そこまで灰色の旅する大きな鳥の羽毛が抜け落ちることは、ないようだ。
大きな鳥は東へゆっくりと飛んでいく。白い羽を落としながら。鳥の影からは、ゆっくりと、真っ白な輝きが、染めていく。
僕は、いつか、今は小さな羽がたくさん舞い降りて、小さなかたまりを2つ上に重ねて作ることを夢見ている。
僕は、また遠くの町に飛んでいく灰色の渡り鳥に、そっと願った。
読んで下さりありがとうございました。短くてすみません。