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5話:その♀、転入生。


 アリスに悩みを打ち明けた(……というより見破られた)その翌日。

 とくに何事もなく朝食を終え、アリスもいつもの無表情でお見送りしてくれた。


 昨日、三條さんに関して話しをした時は手伝ってくれると言ってくれたものの、具体的なことはひとつも聞いていない。

 アリスのことだ。すでに何かしらの策があるのかもしれないが、今のところこれといって変わった様子はなかった。



 ♂ ♂ ♂



「おーし、今日もHRはじめっぞー。……と、その前に、今日は転入生を紹介する」


 ひな子先生の言葉に、皆一斉に前を向く。


 この時期珍しい転入生……それにこの学園のカラーもあって、その転入生が"普通ではない"ことがほぼ約束されている。


 普段は我が道を貫くクラスメイト達だが、やはり転入生とそのスキル(?)に関しては興味津々のようだ。

 でも、ケチャップチューブでドアを狙い澄ますのはどうかと思うぞ、土居さん。新人歓迎にしても手荒すぎる……。


 横目に見れば、あの窓♀こと三條さんも前を向いていた。

 まっすぐな背筋がいつも以上に伸びて……って、少し緊張しているのだろうか。どこか固く感じられる。


「んじゃ転入生ー、入れー」


 そして、先生の指示の数秒後に教室に入ってきた転入生。


 短く揃えられた漆黒のような髪に、反対に白磁のような肌。

 表情の伺えない切れ長の瞳。


 ……女の子だった。


「はじめまして、今日からこのクラスでお世話になる"雨宮アリス"と申します」


「……」


 そして、うちの使用人だった。




 ♀ ♀ ♀




 昼休み。

 クラスメイトからの質問攻めを華麗にスルーしきったアリスが教室を出るのを見計らって、ぼくも後を追った。

 これで見事、無愛想な転入生の称号を手に入れたなアリスよ……。


 そして、屋上へと向かう階段の脇、その踊り場。

 周囲からの死角になるこの場所に辿りついたと同時に、アリスはこちらに向き直った。

 どうやらここに、話し合いの場を定めたようだ。


「祐人さま、ご足労おかけいたしました」


「いや、いいんだ……。でもまさか、学園に転入してくるとは思ってもみなかった」


「とんだサプライズでございます」


 ……うん、こっちの台詞だそれは。


「とりあえず、説明してもらおうか」


「はい、簡単なことです。今回、祐人さまのお手伝いをするにあたって、まず悩みの原因であるクラスメイトさま……三條ほのかさまを、実際この目で確認することが必要でした。そこで、共に学園生活を過ごし、より間近で彼女と接することが最適かと思ったまでです」


「なるほど、あくまで調査のためか。でも、わざわざ転入までするとは。大変だったろうに」


「その辺は問題ありません。茅野家の膨大な財産があればちょちょいのちょいです」


「そうか。……え? 今聞き捨てならんことが聞こえたような?」


「冗談です。今回はわたくし自身のパイプを利用しました。実はわたくし、こちらの学園の理事長とご縁がありまして。今回の件に関して少々協力を仰いだのでございます」


「そ、そうなのか……」


 それはそれですごいな。学園理事長と知り合いとは……。


「いわば裏口転入でございます」


「なんか言い方ひとつでイメージ変わるわー」


 思いっきり悪い方に変わった。


「ともあれ、これで心置きなく調査ができます」


「どこか無理やり感もあるが、とりあえずそうだな。で、これからはどうするんだ?」


「まずは手始めに三條ほのかさまとコンタクトをとってみましょう」


「うん、わかった。これから頼むよアリス」


 そうして、ぼくとアリスの三條さんアプローチ計画がスタートした。



「あれ? でも……」


 そこでさっそく、一つの疑念が起こった。


 アリスはまず、三條さんにコンタクトをとると言った。

 おそらくアリスが三條にアプローチを仕掛ける、ということなのだろうけど。


「……大丈夫なんだろうか」



 翌日、些細な不安はあっけなく現実となる。





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