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オレハバッドエンドヲ変エル方法ヲ考エタ

 ローベルト・フェヒナーは貴族の子で傲慢な奴に育つ。

 ゲーム内ではとても残虐に数えきれないほどの命を奪っていくキャラで、主人公のパーティメンバーも数人殺すという大役を背負っている。

 これは俺の前世のオタク友達にされたネタバレの情報だ。

 しかし人名を覚えるのが苦手な俺が何故こいつの名前を憶えているかというと、ゲームの序盤ですでにちょくちょくと現れてきていて何度もゲームオーバーにされた相手でありこいつのせいで徹夜し、学校に遅刻したという苦い思い出があるからだ。

 ついでに俺の前世のオタク友達の彼女が言うには、ローベルトとは何度か戦うことになるが倒すのはラスボスが現れる直前だったそうだ。

 つまりゲームを進行していくうえで、結構重要なキャラということなのだが……。


「――って、そんな重要さとか、死んだら関係ねぇだろ!?」


 ――倒される=死ぬだよね!?

 確かにすごい邪魔してきたし、すっごい強いけれど……。

 すべてに対して偉そうな口調、態度によって主要キャラなのにもかかわらずゲーマーたちの中では不人気のてっぺんあたりに属している。

 何故よりによって生まれ変わった相手がこいつなのか……。

 そして、何故この顔見て今まで前世の記憶を思い出さなかったのか不思議でならない。

 ちなみにハンスはゲームの中でローベルトと一番縁のあるキャラだ。

 ハンス大好きのオタク友達が言うには銀髪とたれがちな目が特徴的で優しい雰囲気の比較的穏やかな青年、だそうだ。

 ハンスは一番の友人を幼いころにローベルトによって殺されたことで恨んでいる。

 そのため彼はローベルトをその友人の敵としてみていた。

 ……最終的にラスボス出現前にハンスとローベルトは一騎打ちとなり決着をつけることなく二人は命を落とすらしい。

 俺は一度敵キャラとして撃退させたことがあるだけだからあんまり記憶には残っていなかったのだが、オタク友達のネタバレ関連で一番多い情報は彼に関するものだ。

 その友達のネタバレによるとハンスは初めの方は主人公の敵として現れるが、途中で和解して主人公のパーティに入るとか……。

 しかも他の美形なサブキャラに劣らない美形のためにオタク友達も、他の友達も、そのまたさらに他の友達もハンスはお気に入りだと言っていたのを俺は思い出す。

 つまり、結構人気。


「なんでだよ……」


 何故よりによってこの不人気キャラに生まれてきてしまったのか。

 まあ、八歳ならばまだ嫌われるような態度もとっていないかもしれない。

 そう思って俺は今までの自分の行いを思い出してみた。



*****



「……」

 自分が覚えている限りの八年間の記憶は頑張って思い出してみたのだが、結果的に自分の行いに対して言葉も出なくなってしまった。

 最近俺は定期的に家に訪れるハンスと魔法や剣の試合をするが、俺とハンスとの間には上級貴族と下級貴族の身分の差が生じるため、ハンスは俺に手加減をせざるえない。

 しかし、俺はハンスより自分が勝っているのだと勘違いして毎回のようにハンスを罵る。

 ……ゲーム内では敵キャラとして登場する彼しか知らないが(それも一度しか戦ったことはないが)ハンスは強く、ローベルトと同じくらいに苦戦したのを覚えている。

 現在八歳、特に剣や魔法の稽古もろくにしない俺と、現在一二歳、剣と魔法の先生をつけて稽古しているハンスとでは実力の差は圧倒的だ。

 それなのに俺はそんなことにも気づかずにハンスを罵っていたのだ。

 結果、ハンスは今日の試合で我慢しきれなくなって大きめな風魔法を俺に向けて発動させて吹き飛ばしてしまった。

 そんな感じの低レベルな精神攻撃を俺はこの八年間続けてきたというわけだ。

 ……まあ俺、八歳だけどさ。八歳だとしてもさ!

 そんな感じでローベルトはプライドが素晴らしく高く、心の狭い、ザ・悪役な性格の男だ。

 しかしこの体で八年間生きてきたこともあって、一人称と口調だけでも定着していたのはありがたかっただろう。

 「年上の人間に敬語を使う」というのが常識だった一五年間よりも最近の八年間の「家族以外には敬語を使わなくてよい」という常識が染み込んでいたのもありがたい。

 何故なら、反射的にハンスや執事たちに敬語を使ってしまったり、『私』なんてうっかり言ってしまう危険がない。

 つまり、先ほどから心配していた『オカマ』と思われるという状態を回避することができる可能性が高くなったということだ。

 だがこのままいくと周りから反感を買って死へとまっしぐらだ。

 ……というかおそらくもう買っているのだろうが。

 なぜなら、両親の性格がローベルトとそっくりであるからだ。

 この場合、ローベルトが両親にそっくりと言った方が正しいのかもしれないが。

 そんな両親はゲーム開始早々お亡くなりになられます。

 断言できるのは、前世で俺は二人を倒していたから。

 とにかく、あの両親と一緒にいる限りいつ巻き込まれてもおかしくない。

 まずは俺の両親を何とかせねばならないだろう。

 ラスボスであるラーシュに率先して協力しはじめたのは確かローベルトの両親だったこともあるから、さらに危険度は増す。

 バッドエンドへまっしぐらなんてのは俺は御免である。

 そのためにしなくてはならない事。

 RPGの世界で生きていくために必ずしなくてはならない事。

 それは、死亡フラグを折ることはもちろんだが……それよりも自分から率先してバッドエンドを回避する方法は……


「レベルアップ、だよなぁ……」


 ゲーム開始時、主人公は一五歳だ。

 俺の記憶ではオタク友達がべらべら喋っていたハンスの情報の中に『一九歳』というのがあったはずだ。

 そして今、彼は一二歳である。

 つまりローベルトは主人公と同い年ということになる。

 ゲームが始まるのは七年後だ。

 それだけの間、魔法と剣の技術を上げればきっとそこそこ強くなるだろう。

 この世界で俺が大人になるためには……

 一、レベルを上げる

 二、死亡フラグを折っていく

 この二つを確実にこなしていかねばならない。

 そうと決まればまずはレベル上げだ。

 レベルを上げなくては、何もできない。

 この世界には少しでも町から出れば、うじゃうじゃとモンスターがいるのだ。

 俺は祐介の言葉を思い出す。


『地道に頑張りな。痛い目見る前にさ』


 今度はもうサボらないだろう。

 サボれば自分の命が危ないとわかっているのだから。

 レベルアップするにはなるべく強い相手を倒すのがいいのだが、かといって基本を知らなければ何もできないで倒されてしまうだけだ。

 まず、剣と魔法の基本を教えてくれそうな人物を俺は考えた。

 そして、俺の知っている中で基本がしっかりとしていて実力のある者は一人しか知らない。

 それこそが、ハンスだ。

 俺はレベルアップのためにハンスに剣と魔法を教えてもらうのを頼み込むため、早速廊下へと出てハンスの泊まっている部屋へと向かった。

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