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深呼吸
空気が揺れて、体に突き刺さる。「冬の風は反抗期の子供に似ている」いつだか友人が言っていた。
(…あれって、自分のことだったのかな?)
昨日は雨が降ったせいか、今日はひどく冷え込む。代わりに空が真っ青だ。青過ぎると言いたくもなるほどのもので、清々しいよりも寂しそうなものに見える。
下ろし立てのスカートの裾が風に従い、揺れている。
「(寒いな…)」
口パクで言った言葉は、音がないから響かずに消えた。少しの間、目の前にある建物に視線を向けた。窓が1ヵ所壊れてる。
1回深呼吸をして、その時に閉じた瞼をゆっくりと持ち上げる。
(よし、行こう!)
真っ黒な髪に白い肌、小さな頭に大きくて少し吊った目、そこに不釣り合いなマスク。学校指定であるセーラー服を纏っており、『九条 一葉』と書いてある書類と鞄を持っている。