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sect:3

「と、いうことがあったんだ。」

その日の放課後のことだった。

部室に集合したみんなに、僕は今朝あったことを説明した。

一度みんなの前でも宮田さんに電話をかけてみたけど、響いてくるのはやはり無機質な機械音声だけだった。

「どういうことだ…これ。」

「わからない、考えられるとしたら、あの後すぐに宮田さんが携帯電話を解約した。…もしくは、最初からこの電話番号は存在していなかった。」

皆が一斉に僕の方に向き直る。

「ちょっと、話が飛びすぎなんじゃないかしら?」

論理が飛躍しているのは僕もわかっている。

しかし、僕の頭の中にはある仮説が浮かんでいた。仮説の内容と言っても、実際には見たことも聞いたこともないような内容だし、それが実在することすらわからない。

しかし、今回の件を十分に説明しうる理由だった。

「みんな、聞いてくれ。僕のバカみたいな仮説を。」

みんながうなずくのを確認した僕はスマートフォンをとりだすと、みんなに見えるように構えた。

「今から僕の仮説を実証してみたいと思う。綾野のキャリアはドモコだったよね?」

「うん、そうだけど…。」

「僕のは、ソフトバンクだ。」

携帯電話というものはほかのキャリアの電話に通話する際に、変換機というものをかませているんだ。その変換機の接続音でポポポ、という音がコール音の鳴る前に一瞬聞こえる。

僕は早口で説明すると、アドレス帳から綾野の番号を指定して通話ボタンを押す。

スピーカー状態にした僕の電話からは例の接続音が聞こえて、数秒。綾野の携帯電話がはやりの曲を流して着信を知らせた。

Auのものを使っているみゆきさんの番号にもかけてみたがやはり、接続音はなった。

「この通り携帯電話に電話する際は接続音がなると言う事をわかってもらえたと思う。だけどね、宮田さんに電話したと時はこんな音鳴らなかったんだ。その上でノイズのようなものも、入っていたと思う。」

「なんかの不具合だったんじゃないのか?」

幸人が僕に質問をぶつける。

「それも考えた。でも最初にかけた時が通じたのにたいして、今のこの番号が存在しないとい言う状況、どうやって説明すればいいと思う?」

僕はさらに仮説の信憑性を実証すべく、さらに検証を進める。SNSに登録してある個人情報に

登録された彼女の郵便番号をネットで検索をかけてみた。結果は該当せず、彼女の住所は存在すらしていないものであった。

「…。みゆきさん。」

「はい。なんでしょう?」

無茶苦茶なことを聞いているのはわかっている。

「みゆきさんはハッキングはできるかい?」

「一通りはできますが…。どのような目的ですか?」

やっぱりと言っていいのかはわからないけど、やっぱり出来るとのことだった。これもみゆきさんミラクルのなせる技だ。

みゆきさんの凄さは毎度のことだけど底知れない。

僕は、意味もなく僕はみゆきさんに依頼の内容を耳打ちで伝えた。

「栄君のPC、お借りしてもよろしいですか?」

僕はパソコンを滑らせて彼女の手元に届ける。

「万が一のことを想定して用意しておりました。」

みゆきさんはポケットからUSBメモリーと取り出す。万が一とはどういう状況だろう。この状況をあらかじめ想定していたとしたら、みゆきさんはやっぱりすごすぎる。

僕のPCにそのメモリーを指すと、画面は一瞬ブルースクリーンになった直後暗転して真っ黒な画面が映し出された。

画面には白い文字で英語のようなものが映し出されていて、すごくそれっぽかった。

なんというか、一昔前のドラマのワンシーンのような感じだ。

「では。お調べいたします。」

そういうと、キーボードの上でみゆきさんの手は踊りだし、奇怪な文字を入力し始める。

かちゃかちゃと迷いなく打たれる小気味のいい音が部室に響いた。

まつこと数分。格好つけて『ッツターン!』なんて音を立てる訳でもなく、エンターキーをポンと叩く音が聞こえた。

「お調べいたしましたところ、栄君のおっしゃった通りの結果になりました。」

「あんた、なにお願いしたのよ。」

「はい…。宮田京子さん。佐々木雪乃さん両名は、高蘭女子学園に在籍しておりません。」

「そりゃ、どういうことだ?」

「みゆきさんにあの学校の名簿を調べてもらったんだよ。これでまた一歩仮説が確信に近づいた。」

「さっきから仮説仮説、っていったいなんなんだ?そろそろ教えてくれよ。」

ここまで来たらほぼ確定だろう。

「僕は、彼女たちは人間ではない。そう思っている。」

考えてみれば妙なことはいくつもあった。電話のノイズ、消失した電話番号、存在しない住所、例の学園には在籍していなかった。極め付けは、昨日彼女がいきなり体調を崩したことだ。朝から風を引いたといっていたが、みゆきさんが「怪異」を排除する力を発動した瞬間に彼女は体調を崩したようにみえたこと。路地を曲がった瞬間に彼女の姿がなくなっていたことを加えてもいい。

「じゃあ、宮田さん達は何者なの?」

「…わからない。」

ここまで状況証拠が集まれば、彼女たちが人間ではないという説はほぼ正解だろう。

だがそこからだ。何の目的をもって僕らと接触した?

いや、接触をしたのは僕たちからだ。だとしたら何の目的でSNSに「怪異」について 投稿した?


頭の中がこねくり回されるように感じる。

もっと情報が欲しかった。



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