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プロローグ

プロローグ


 僕らオカルト研究部は、ある夕暮れの路地、真っ黒な影のようなものと対峙していた。

影は顔に当たる部分に大きなマスクをつけており、両手には大ぶりの鎌を構えていた。

その名前を『口裂け女』と言った。

口裂け女はルールの中に排除方法が盛り込まれた怪異だ。

確立された排除方法がある分、『怪異』としては相手にしやすい部類だ。

「排除方法は、ポマードと三回言う、もしくは右手に犬と書いて見せるだ!みんなわかってるね!」

「ポマード。ポマーっ!」

綾野が途中まで言いかけると、口裂け女は彼女に突撃し、口をふさいだ。

口を押えられた状態で、持ち上げられた彼女は苦しそうにもがいている。

僕は、カバンから特殊な弾丸が装填されたガスガンを引っ張り出すと、顕現した怪異に向けて発砲した。弾丸は、腕の部分を貫通し、その部分からは嫌な臭いがする煙が立ち上る。

「口裂け女」は、熱を振り払うかのように腕を大きく振り回した。

綾野が懐から取り出した銀のナイフで腕を刺すと、その手につかんだ綾野を投げ出した。

「消えちまえぇぇ!」

その隙をついて。木刀を構えた幸人が隙だらけの怪異の頭の上に、力いっぱい振り下ろした。

怪異の頭上からは、すさまじい勢いで煙が立ち上り、怪異はさらに苦悶の様を見せる。

「こんどこそっ!ポマード、ポマード、ポマード!」

綾野がそういい終わると同時に、どこからか取り出した筆ペンで、みゆきさんが右手に「犬」と書くとそれを提示した。

一瞬僕らと目が合ったかのように思えた。が、次の瞬間、一瞬さらに激しい煙が立ち上がったかと思うと、その怪異はそこに何もなかったかのように消滅した。

「綾野、怪我はないかい?」

「大丈夫よ、たいしたことないわ。」

綾野は服についた砂を払い落としながら言った。

「最近多くないか?怪異が顕現してくるケース。」

確かに、多すぎる気がする。先日もおそらく『怪異』に殺されたのであろう人間の死体が発見されたばかりだ。

「そうだね。今のだって、もう少し放っておいたら死者が出ていたかもしれない。」

「まぁ、口裂け女についてこれで当分は大丈夫だろうけどな。」

「怪異を完全に消し去ることでもできればいいのだけど…。なんかいい方法知らないの?栄は」

怪異をこの世から完全に消し去るのは不可能と言ってもいいだろう。

怪異というものは人の想像や、恐怖から生まれるものだ。

簡単に説明しよう。

誰かが怪談話を考えたとする。その話を他人にして、誰かが「怖い」と感じればその瞬間、

新たな「怪異」がこの世に生まれてしまうのだ。

「怪異」を消し去るためには、たとえば「口裂け女」を消し去るためには、これの存在そのものを全人類が忘れ去る以外に方法はない。

まぁ無理だろう。

僕ら人間はそれなりに怪異と渡り合う方法を持ち合わせてはいるが、どんなに徳の高い僧でも神父でも、怪異を一時的に封ずる以上のことはできないのだ。



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