1~3ターン目
やっぱ無理でした。
不定期です。期待しないで。
俺は理解ができなかった。周りを見てもみんな目の焦点が合っていない。みんなも状況が理解できていないのだ。
画面の時間が9分を切ったときに俺は我に返り、みんなに向けていった。
「みんな大丈夫か?みんな落ち着いて聞いてくれ。決してパニックになるなよ?」
俺は前置きを置いてみんなに話しかけた。
「まず俺たちは拉致られたらしい。今の状況を見てもわかる通り、俺たちは拘束されている。そしてさっきのルール説明の話を聞くと俺たちはチェスの駒に拘束されている。そしてその駒でチェスをしなければならないらしい。駒をとられると、その駒にいた奴は死ぬらしい。だが死ぬといっても脱落、とかそういう意味で実際に死んだりしないだろう。」
隣にいる姫川は、少しだけ顔が和らいだ気がした。俺はそのまま続けた。
「だいたいこんな16人の人がいなくなったら警察も動く。本当に死ぬことはないだろ。」
俺はみんなに心の余裕を持たせるように話した。そのせいか、誰も騒ぐことはなかった。すると姫川が小さな声でいった。
「そうよね・・・。死なないよね・・・。」
「だいたいもし本当に死んでも、駒がとられなければいいんだろ?難しいけどどうにかなるさ!」
将也が大きな声でみんなに聞こえるようにいった。将也も俺の意見を後押ししてくれたのだ。
「じゃあ時間も5分を切ったから。麻野!よろしく頼む。」
俺は麻野に向かって指示をした。麻野は我に返ったように俺の言葉に反応した。
「わかりました・・・。でも何を動かせばいいですか?そう軽々と動かせませんよ。」
俺はこの時焦って麻野にふった。しかしよくよく考えてみるとそうだ。人の命を抱えているかもしれないんだ。一年生に動かせられるわけがない。
「ごめんな麻野。わかった、俺が決めるから順番通りにおれの言うことをいってけ。麻野、Ⅵ-5 ポーンだ。」
「ちょっと待ってよ!俺が動かされるんですか!?」
寺沢があわてて叫んだ。しかし俺は寺沢が抗議することなどはわかっていて、その対処法も考えていた。
「お前の気持ちもわかるぞ。でもな、ここで動かなかったら時間切れなんだ。すべての意見を通していくとどうにもならない。寺沢、ここは大人になってくれ。」
寺沢は黙り込んだ。だがしばらくすると、すねたように寺沢がこういった。
「わかりましたよ先輩。おい麻野!早く駒を進めろ!」
「はいはい。Ⅵ-5 ポーン」
麻野が言い終わった瞬間に、寺沢のポーンが動き始めた。どうやって動いているのか知りたいところだ。ポーンの動きが止まったとき、タイマーが止まった。それから10秒もたたずに相手のポーンがⅢ-5の位置にきた。思考時間短いな・・・・・・。
「次、木原。Ⅵ-4 ビショップだ。」
「Ⅵ-4 ビショップ」
木原は俺の言葉をそのまま復唱した。ほんとにこいつは感情を表に出さないな。ビショップが位置についたら次もすぐに、敵のナイトがⅢ-6についた。相手はもしかしなくてもバカなのか?
「寺沢、Ⅴ-5 ポーンだ。」
「ちょちょちょちょちょ!ナイトの範囲じゃん!これは無理っすよ先輩!なに考えてるっすか!」
寺沢がまた抗議した。まったく・・・。よく盤をみろよ。
「大丈夫だ。後ろにビショップがいる。相手はナイトを犠牲にしてまでポーンを取りに来ない。」
「あ。そっすね。じゃあⅤ-5 ポーン。」
前言撤回。ここで一番バカなのは相手じゃなく寺沢だ。
ポーンが位置についたら、次は相手だ。ポーンを取りに来るはずは・・・あ?。ナイトがポーンに向かってくる?は?わけわからん?
・・・・・・まさか相手は!
刹那。寺沢のポーンが消えた。いや下の地面が開いて落ちたのだ。寺沢が何かを言っているがもう聞こえない。聞きたくない。そして静寂だけが残った。
遅くなっても反省はしてません