51話:花びら舞う
荘介が見た先には、宮ケ瀬が立っていた。
「宮ケ瀬…いつの間に…」
「弓の人が教室に入るのを見たときですわ。」
近藤は、荘介と宮ケ瀬に挟まれる形になった。形勢でいうと不利に見えるが、気にせず弓を構えて、矢を放とうとしている。
「もう一人きたところで無駄ですよ。」
矢を放とうとしたとき、近藤の手元で花びらが舞った。
「っ!」
近藤は思わず弓を落とす。
「無駄ですってよ。あなたは弓を構えることはできませんわ。」
近藤は荘介と宮ケ瀬、それぞれの方を見る。荘介は鞭を構えているし、宮ケ瀬は鋭い目つきで近藤を見ている。
「ふふ。ならば、自分自身が弓矢になります。」
「なんだと!?…え?どういう意味?」
荘介が困惑していたとき、腹部に痛みを感じた。
「ぐはっ!」
「荘介さん!」
荘介の腹部に、近藤の拳がのめり込んでいたのである。荘介はその場で倒れこんだ。
(見えなかった!なんて速さですの!?)
宮ケ瀬は自身の周りに花びらを舞わせた。荘介を倒した近藤は、宮ケ瀬をじっと見ている。
「厄介ですね。その花びら。」
近藤は片方の足で立ち、片方の足を上げていた。
「まるで、バレエのアラベスクですわね。」
「わかります?私、バレエ部なんですよ。それなのに、兆能力は弓なんです…嫌気がさすと思いませんか!」
近藤は何かに発射されたかのように、宮ケ瀬に向かっていく。これぞ、アローエフェクトの固有技…
『人間弓矢』
宮ケ瀬は、防御のため自身の周囲に花びらを舞わせている。が、近藤はそれを華麗にかわして、宮ケ瀬の腹部に拳を打ち当てた。
「ぐっ!」
宮ケ瀬はそれをもろにくらう。が、簡単には倒れない。近藤の腕をがっしりと掴んだ。
「嘘!?」
「掴み…ましたわ!」
近藤ははっとする。後ろから花びらが迫ってきていたのだ。
(自分が傷つくのも厭わず、花びらを!)
花びらが近藤と宮ケ瀬の両者を襲う。しばらく花びらが舞った後、先に近藤が倒れた。同じく花びらによってぼろぼろになった宮ケ瀬は、なんとか立っている。
「後は…任せましたわよ…皆さん…」
宮ケ瀬は、そのまま前のめりに倒れた。
土方を倒して、生徒会本部に入った篠原と八ッ場は、唖然として動けないでいた。
「おいおい…どういうことだよ!」
「なぜ、君が…」
そこには、善永も有賀もいなかった。そこにいたのは…
一方、善永は屋上に立っていた。善永の目の先には、生徒会長の有賀と、縄でぐるぐる巻きにされたなぎさがいる。有賀が口を開く。
「よくここがわかったね。」
「まあな。目で探すことには自信があるんだ。それにしても、俺たちが本部に襲撃することはお見通しだったか?なぜここにいる?」
「さあね。ただ風が浴びたいんで、ここにいただけだよ。」
有賀は空を見上げながら笑っていた。
「なぎさを放してもらおうか。」
「ならば、条件をのめ。」
「こっちにも条件がある。」
「ほう?」
有賀は善永の方を見る。
「お前を一発ぶん殴らせろ。」
「え?」
有賀は呆気にとられていた。善永は続ける。
「俺が怒っているのはな、有賀。なぎさに危害を加えたことだぜ。」
有賀はしばらく考え込み、口を開く。
「だが、もとはと言えばお前のやり方に問題があったろう。部活狩りなどと、くだらぬことを…ああ、思い出す度に、俺の頭の中にショスタコーヴィチの『革命』が流れる…」
「それだけじゃねえ…お前、あの人を唆したよな?」
「えいちゃん!どういうこと!?」
なぎさが驚きのあまり、声を出した。有賀は大笑いする。善永は怒鳴った。
「有賀!お前が、本田さんを裏切らせるように仕組んだんだろ!?」
篠原と八ッ場がいる教室には、本田が立っていた。
善永の挑戦状:バレエにおいて、片方の足で立ち、もう片方の足を上げるポーズのことを何という?
前回の『善永の挑戦状』答え:フォロースルー




