48話:なぎさ拉致事案
太郎コンビとの死闘を制した荘介たちは、次の日の部室にて、善永たちにその内容を話していた。
「摩擦熱を発生させる兆能力か…そいつが先輩を?いや、あれだけのやけどは…」
善永は思慮をめぐらす。そのとき、焦った様子で篠原が部室に入ってきた。
「大変だぞ!お前ら!」
「篠原さん?何を焦って?」
「これ読め!」
それは、校内新聞だった。善永がそれに目を通す。すると、信じられない記事が目に入った。
『クイズ研究会の諸君、雪代なぎさを預かった。返してほしくば、ただちに無駄な抵抗をやめたまえ。さもなくば、鏡を。』
善永はその新聞を破り捨てる。怒りで震えていた。
「どうしますの…鏡で脅していますわ…」
宮ケ瀬が深刻な顔で言う。善永は静かに言った。
「決まってんだろ…助ける…」
同時に、善永は頭を抱える。
(なぜ鏡のことを…?なぎさがサリーになるのは、鏡で姿を見たときだって知っているのは、雄康のおっちゃんか…)
善永は、なぎさを心配している様子の部員たち一人一人に目をやる。そして、自分で自分を殴った。それを見て荘介が驚く。
「!?…何やってんだ!?」
「すまねえな…友達を信じられない自分への喝さ…」
「?」
部員たちが不思議がる中、黒部だけが真剣な顔をしていた。黒部が善永のもとに近づく。
「善永…お前も本当は気づいているんだろう?」
「なんのことだ?」
「とぼけるな…何をどう考えても…」
「やめろ。」
善永が遮るが、黒部は喋るのをやめない。そしてついに、最悪の仮説を述べた。
「俺たちの中に、裏切り者がいる。」
「やめろって言ってるだろ!」
善永の怒号に、部室にいた全員がびくっとする。善永は黙って部室を出ていった。
宮ケ瀬が黒部に詰め寄る。
「黒部!善永様に何をおっしゃったの!?」
「仮説だよ。かなり有力のな。」
それを聞いて、八ッ場が興味を持った。
「聞かせろよ。」
黒部は、部室に残っていた皆に、例の仮説を話した。
「そ、そんな…あんまりですわ…」
「だが、確かに有力だ。サリーのことを知っていても、その発動条件が鏡であることを知っているのは一部のはずだ。」
「俺は信じない!信じるのは友達だけだ!」
早明浦が持っていた竹刀を叩きつける。篠原がそれを宥める。
「落ち着け。まだ決まったわけじゃねえ。それよりも大事なのは、なぎさを助けることだろう?」
それについては、その場にいた全員が同意する。荘介が口を開いた。
「そういえば、止め損なっちまったが、善永はどこに行ったんだ?」
八ッ場が笑いながら言う。
「あいつなら、そうだな。生徒会本部に乗り込んだりしてんじゃねーか?」
「ははは。まさか。いくらなんでも、そんな無茶は…」
「…」
部員たちは焦った様子で部室を出る。篠原が叫んだ。
「生徒会本部は3階だ!手分けして向かうぞ!」
「はい!」
そして、2人ずつ3組のグループに分かれた。篠原と八ッ場は部室から校舎に入ってすぐの場所にある階段へ、黒部と宮ケ瀬は中庭を通りつつ、下駄箱近くの階段へ向かった。すけコンビは廊下の途中にある階段へ向かう。それぞれが階段を上り、3階を目指した。
「こっから右に曲がれば、生徒会本部だ!」
すけコンビが3階に辿り着いたとき、目の前を弓矢が飛んでいった。そして…
「ぐはっ!」
「この声は!」
黒部の声だった。2人は黒部の様子が気になるが、下手に出るわけにはいかない。今度は自分たちが狙われてしまうからだ。階段を少し下りて、壁に身を潜める。
荘介がスマートフォンを取り出し、宮ケ瀬に電話を始めた。
「おい!宮ケ瀬!そっちは大丈夫か!?」
「まずいですわ!黒部が足をやられましたわ!弓の名手がいますってよ!」
「わかった!お前らはどっかに隠れてろ!」
荘介は電話を切る。そして、壁に寄りかかる。
「早明浦!お前、弓が相手ならどうやって戦う?」
「そうだな…近づいて斬る!」
「聞いた俺が馬鹿だった。」
黒部が射られた廊下、そこには長髪の女子生徒が凛とした表情で立っていた。「生徒会」の腕章を身につけており、その手には弓を持っている。生徒会副会長の近藤だ。
「まさか生徒会本部に攻めてくるとは…大胆なことをしますね。」
近藤は青いオーラを発している。
「全く…兆能力は使いたくないのに…」
近藤はため息をついているのであった。
一方、篠原と八ッ場の前にも、生徒会の人間が立ちはだかっていた。金髪の男子生徒、書記の土方だ。
「生徒会三年、土方十三!またの名を、『鬼の書紀』!」
善永の挑戦状:彼の生家では『石田散薬』という薬が製造・販売されていた、「鬼の副長」と呼ばれた新選組副長は誰?
前回の『善永の挑戦状』答え:『いつか王子様が』




