47話:決死の帯電
「今度はなんだ!?」
老婆はマントから何かを取り出し、それを黒部の足元めがけて投げつけた。
「うわ!」
黒部は飛んできた何かを避けようと足を上げるが、それは黒部の足を狙っていなかった。何かは床に着地した。黒部が足元に目をやる。
そこには、皿に乗せられた美味しそうなタルトがあった。3人は、そのタルトをまじまじと見つめる。
(あ、怪しい!でも、美味しそうだ!)
荘介と早明浦は手を出そうとしなかったが、黒部はタルトを手に持ち、かぶりついていた。
「お前!何考えているんだ!どう見ても食ったらダメなやつだろ!」
「違う!体が勝手に引き寄せられたんだ!決して、お腹が空いていたのではないからな!?でも、これ美味しい!食ってみろよ!リンゴが入っているぞ!」
荘介がはっとする。
「そうか!『白雪姫』の老婆だ!そいつは毒リンゴだ!」
「なんだと!?無駄に美味しく調理しやが…って…」
黒部はその場で眠り込んでしまった。2人が頭を抱える。
「ふふふ。これが『サッカー界のカスパロフ』か。カスパロフが聞いて呆れるぜ。ならば俺は、『ディーディープ・ブルー』か?はははは!」
芹沢が笑っている。荘介が鞭を構えた。だが、本が矢継ぎ早に飛んできて、それへの対処で精いっぱいになる。
その様子を見て、もどかしく思った早明浦が叫ぶ。
「荘介!やはり一条鞭砲だ!それで攻撃するしかない!」
「ああ!」
荘介は言われた通り、鞭を全力で振るい、衝撃波を発生させる。だが、芹沢の前に本が集まり、芹沢の身を守った。
「はははは!そんな衝撃波で、俺の本壁を破壊できるわけねーだろ!」
芹沢は自慢げに笑っている。早明浦は、悔しそうにしていた。
(くそ!竹刀があれば!…いや、あるいは!)
早明浦は、手ぶらの状態で芹沢の方に向かっていく。その早明浦の前に、老婆が立ちはだかった。
「邪魔だ!ばばあ!」
早明浦は、老婆の腕を掴み、背負い投げで倒した。飛んでいる本相手に鞭を振り回している荘介が感心する。
「大したもんだな!早明浦!」
「当たり前だ!園田流の使い手は、刀がなくとも戦う!それが侍だ!」
早明浦はにやりとしながら答える。
「とはいえ、そっからどうすんだ!?」
「こうすんだよ!」
早明浦は自身の制服に手を当てる。そして、制服に帯電させた。
「お前、何を!?」
「荘介!俺に一条鞭砲を当てろ!」
「だが、そんなことすれば…」
「いいから撃て!!」
早明浦の気迫に、荘介は一瞬動けなくなった。しかし、すぐさま鞭を強く握りしめる。
(早明浦鈴之助…お前は、善永以上に空気が読めないし、善永以上に自分勝手な奴だ…控えめに言って、クソカス野郎だ…)
荘介は鞭に力を込める。荘介が発していたオーラが鞭に集まっていく。
(だが、善永と同等、あるいはそれ以上に!根性のある奴だ!)
荘介は全力で鞭を振るう。
(そういうところが、最ッ高に大好きだ!!早明浦鈴之助!!)
「いくぞぉ!早明浦ァ!」
荘介の鞭から衝撃波が放たれる。それは、早明浦の方へ一直線に向かっていく。
「仲間割れかぁ!?はははは!」
「馬鹿野郎!お前らのそれを超える、最高のコンビ技だよ!…ぐはっ!」
衝撃波は早明浦に命中し、そのまま芹沢の方に向かっていく。
(まさか!自分自身を犠牲にして、衝撃波に帯電させたのか!?んな馬鹿な!)
芹沢が気づいた頃には、帯電した衝撃波が目前にまで迫っていた。本で防御しようにも間に合いそうにないし、仮に間に合ったとしてもそれで防御はできないだろう。衝撃波は芹沢に命中した。
「ぎひゃうっ!」
芹沢は感電しながら、その場で倒れた。これで、太郎コンビを倒すことができた。荘介がガッツポーズをする。
とはいえ、早明浦も無事では済まなかった。ぼろぼろになって倒れている。
「早明浦!」
荘介は、早明浦のもとに駆け寄る。意識こそあるものの、息も絶え絶えだ。
「やったじゃねえか…荘介…」
「馬鹿。喋るんじゃねえ。」
2人のもとに、いつの間にか目を覚ました黒部も歩み寄ってきた。
「早く早明浦さんを保健室に連れていこう。怪我の理由は…変電設備に触ったでいいか。」
「目を覚ましたのか、黒部。」
2人が黒部の方を見る。黒部は微笑んだ。
「まあな。本家のように、王子様のキスが必要じゃなくてよかったぜ。」
「…こんなときに気落ち悪いこと想像させるんじゃねえ…」
3人は笑い合いながら、保健室に向かっていくのであった。
善永の挑戦状:小人たちからの歓迎パーティーのシーンで歌われた、ディズニー映画『白雪姫』の挿入歌は何?
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