44話:ロッカーからの脱出
いつものように、中庭の小池に釣り糸を垂らしていた八ッ場が手応えを感じた。
「よし!かかったな!一本釣りだ!」
八ッ場が釣り竿を勢いよく引っ張り上げる。
「…あれ?」
しかし、釣れたのは、善永の服だけであった。
「あの馬鹿!何失敗してんだ!」
「まあ…!」
善永は上裸の状態になっていた。釣り針が再び出現する。
「…これなら大丈夫だろう!」
今度は、ズボンのベルトループに釣り針を引っかけた。
八ッ場が再び手ごたえを感じている。
「今度こそ!ちゃんと釣ってやる!」
八ッ場は全力で釣り竿を引っ張り上げる。
「…あら?」
釣れたのは、ズボンのみであった。
「わざとやってるよな!?」
「まあ…!まあ…!」
善永は、ついにパンツ一丁の状態になってしまった。寒がっていると、釣り竿が出現する。
「宮ケ瀬!一旦、お前も釣られてみろ!」
「わ、わかりましたわ!」
宮ケ瀬は、制服の袖を釣り針に引っかける。
八ッ場は釣り竿を強く握りしめていた。
「三度目の正直だ!絶対に釣り上げてやる!」
勢いよく釣り竿を引っ張る。すると、宮ケ瀬を釣り上げることができた。
「さ、流石ですわー!」
「やったぞー!」
宮ケ瀬はなんとかロッカーから脱出することに成功した。八ッ場は小池に釣り糸を垂らす。
「この調子で、善永も釣る!」
「器用に下着だけ釣ってくださいまし!」
「何が楽しくて、男の下着を釣らないといけないんだ…」
ロッカー内の善永は危機に瀕していた。さすがに、女子生徒が怪しんで、ロッカーを開けようとしていたのである。今の善永はパンツ一丁…まずい!…と、そのとき、
「お前ら、何やってんだ?」
「小熊先生!」
小熊がやってきた。女子生徒たちはびくつき始める。
「そんなところでおしゃべりしていないで、早く下校しなさい。」
「は、はい!」
ロッカー内の善永は安堵する。
(助かった!感謝するぜ!小熊先生!)
釣り竿が出現し、善永はそれを手で引き寄せる。
(こうなったら、衣類じゃなくて、皮膚そのものに!)
善永は、釣り針を自身の手に刺した。血が出るものの、気にしない。そんなロッカーに、今度は小熊が近づいていた。
「たく、このロッカーの何が気になったんだよ…」
(八ッ場!早く釣ってくれ!)
小熊は、ロッカーに手をかけた。ついに、
がばっ!
とロッカーを開けた。しかし、そこには誰もいなかった。
「やっぱり…何もないじゃないか。」
小熊はため息をつきながら、ロッカーから離れるのであった。谷はぼそっと呟く。
「あらら、ダメだったかー。まあいいや。帰ってゲームしよっと。」
谷は、帰った。
中庭の小池、制服を着ている善永の姿があった。
「全く…一発で釣ってくれよ…」
「だったら、最初っから怪我を覚悟で手に引っかけてほしかったな。」
八ッ場は一息つきながら、小池に釣り糸を垂らす。その横で、宮ケ瀬が頬を赤らめている。
「でも、とてもいい時間を過ごせましたわ!」
「勘弁してくれよ…なぎさにばれたら何を言われるか…」
「僕にばれたら?何が?」
「なぎさ!?なんでここに!?」
善永はそそくさと去ろうとする。
「なんで逃げるの!何があったの!?」
もちろん、なぎさは追う。
「全く、仲がいいこった。」
八ッ場が苦笑しながら釣り糸をじっと見つめるのであった。
善永の挑戦状:生鮮食品などを保管できる、冷蔵機能を備えたロッカーのことを何という?
前回の『善永の挑戦状』答え:コインロッカーベイビー




